MPIリレー連載1 浅井 新介 氏/MICEの思想を日本で育てるには

 ×  合同企画

MPIリレー連載 その1

MICEの思想を日本で育てるには

MPIジャパンチャプター 名誉会長 浅井新介 氏

ウェディングと宴会主体が遅らせた
日本ホテルのMICE取組み

MICEとは、(M)Meeting、(I)Incentive、(C)Convention、(E)Exhibitionの4つのビジネス・セグメントの頭文字をとった造語です。

我が国も2010年をMICEYear元年として、最近日本でもサプライヤーを中心によく聞かれるようになってきました。MICEを使い出したのは、シンガポール政府観光局のようで、1990年の初頭のようです。シンガポールは60年代から国の発展には3つの要素が必要と長期的な戦略の延長としてMICEに集約されたのだと考えられます。3つの要素とは、大型コンベンション施設、
大型宿泊施設、大型ハブ空港の3つです。現在では主に東南アジアで共通する造語として浸透してきています。しかしながら米国ではMeeting、欧州ではコンベンション、コングレス、豪州ではイベントが、このMICEの領域を表現する言葉として使われています。

残念ながらコンベンションの開催件数の数値しかない我が国では、MICEの全体の市場規模が判明しません。最近米国のMeeting Businessの統計によると(MICEの領域を全てカバーする)、米国の2010年度に実施された前年の調査では、米国で開催されたMICEの総数は180万件、その内の85%は宿泊施設で開催され、全体では2億500万人の参加者があり、宿泊業界への貢献はおおよそ2億5千万ルーム・ナイトと言う統計が出ています。グローバルのホテルオペレーター、IHG、Hyatt、Starwood、Hilton、Marriott等がこの領域に力を入れるのはこのような背景です。

日本のホテルがグローバルのホテル・チェーンと比べ、得意な分野が二つあります。それは一般宴会(外来宴会とも呼ばれます)とブライダルの二つのビジネス・セグメントです。この二つの領域が経済が右肩上がりの20世紀には強く経営を支えてきたので、ホテルのリソースを横断的に機能させ収益を上げる仕組みを整備し、MICEを取りこんでいく発想が育たなかったと考えられます。

組織全体で機能的にMICEに対応せよ

マクロ的な視点で見ると、長引くデフレ、伸び悩む
GDP、未曾有の少子高齢社会など我が国を取り巻く経済、社会環境の見通しは決して良くありません。

ホテルを中心とした宿泊業にとってMICEとは何か? と問われれば「ホテルのリソースを最適活用し、収益を最大限に上げる思考」と言うことにつきるといえます。そのためには横断的な仕組みを整備し、組織全体で機能的にMICEに対応する考え方が必要となります。換言するとホテルを経営する本質と似ています。またホテルのリソースを分析し、MICEのどのセグメントを開発していくのか明確な指針も必要となります。ターゲットが明確にならない限り、ロードマップも戦略も描けないのです。