会議環境、“快適性”の次は“創造性”【CBN-JPフォーラム開催レポート】

日本コンファレンスセンター協会(CBN-JP)は、1月30日に「第59回コンファレンスビジネス事業化研究フォーラム」を開催した。

フォーラムでは毎回、コンファレンスに関する旬な話題やトレンドを、さまざまな切り口から展開。講演とパネルディスカッションで構成し、自己紹介タイムとKIOSKタイムを導入するなど、参加者同士の交流自体を奨励し活発な情報交流を主軸にした内容で、1999年以来、継続している。

59回目のフォーラムテーマは、「“創造性開発環境が貸し会議施設の究極の顧客サービス”」。コミュニケーションやアイデアの創出環境を目指す内容に、ホテル宴会場担当者、会議・研修施設運営者といったサプライアーから、ディベロッパー、オフィス家具、人材コンサルタントほかコンファレンスの周辺関連企業など約30名が集まった。

フォーラムの開始には、春口和彦会長が開会挨拶にかわって、ホテル最新トレンドとしてマリオットホテルのミーティング予約システムや香港のホテルが提案するテーマ型コーヒーブレイクスタイルを紹介。その後、自己紹介では、参加者それぞれが抱える課題や参加動機などを共有した。

 

 

 

 

 

基調講演では、『創造的思考の技術-企業向け教育の見地から-』と題して、(株)HRインスティテュートで取締役チーフコンサルタントを務める三坂健さんが登壇。同社は、20年以上にわたり企業の人材開発、研修プログラムを提供している。
三坂さんは、冒頭に、いつも企業に実践しているプログラムの一部をフォーラム参加者にも実践した。
「二人ひと組になって、一方が相手にオススメの料理・お店について1分間のプレゼンをしてください」と伝えられると、参加者らは思いつくままにお題に挑戦した。その後、三坂氏から「いまプレゼンしたひとのなかで、1分間、話し倒したひとは?」と問われると、1組を除く全員が手を挙げた。
これは創造性の欠如を体感する実験で、三坂氏は「自分の情報を一方的に相手に伝えるという手法が多かったが、ほかにも、相手の食べたいものを聞き出し提案する手法、また携帯やタブレットなどの身近なツールを用いて第三者情報を提供する手法がある。これ以外にもあるであろう無限の手法から知らないうちに一つを選択している。それが創造性の欠如」と、無意識に選択している自動思考に気づくことから講演はスタートした。
創造的思考を養うプログラム提供が求められるようになった背景には、パラダイムを悟り、イノベーションを起こす環境づくりの必要性があったことを説明。その第一歩としては、ゼロベースになることが必要。また、創造的思考に導くには手順があり、最適な場の提供も重要だとした。さいごに、三坂さんは「新しい商品(市場)が生まれることがイノベーション。そのためには、一人の天才の新しい発想という画期的な手段のほかに、大勢で知恵を出し合うカタチの集合天才が改善を繰り返す、という地道な改善の蓄積という手段もある」とし、これまでの議論ベースの会議ではなく、対話ベースの創造的会議がイノベーションには必要ではないかと提案した。

 

その後、ユーシーシーフーヅ(株)の野中政善さんが「KIOSKのモジュール化開発の中間報告」として、発表。

また、パネルディスカッションでは、会議施設やホテル計画の専門建築家であるエム・オー・プランニング代表の岡野正人さん、ファニチャーメーカーからコクヨファニチャー(株)プロジェクト企画室の竹本佳嗣さん、(株)イトーキ営業企画部企画室の中山和明さんが参加し、『創造性開発環境の考え方と事例に関して』をテーマに、3氏がそれぞれの立場で考えを述べ、討論を繰り広げた。
岡野さんは、会議施設の建築を手がけてきた経験から、建築法から考えるコンファレンスセンター乱立の理由、日本人の会議下手、会議と会議室とVenueの違いについてのほか、海外の会議施設の事例を紹介し、成熟した会議文化がより良い会議環境をつくるとまとめた。
また、コクヨファニチャーの竹本さんは、渋谷ヒカリエ内で同社が運営するメンバー制オフィス「Creative Lounge MOV(クリエイティブラウンジ モヴ)」について、開業から徐々に稼働率をあげてきた経緯、活用のされ方などを紹介。
イトーキの中山さんは、コンファレンスを成功させるための【しつらえ】について、第一に肉体・精神調和施設や雰囲気、多様性、飲食、総合力の最適空間としてのしつらえ、第二に視覚、聴覚、嗅覚など第六感創出環境のしつらえ、第三にテーブルやチェア、環境家具など最適ツールのしつらえから高品質なコンファレンスを考える内容を展開した。

モデレーターを務めたCBN-JP専務理事の田中慎吾さんは「都内で乱立している“貸し会議室”は、ロケーションやコストの観点で顧客から選ばれているようだが、必ずしも快適環境やサービス、費用対効果で選択されていないのが現状。会議環境においては、“快適性”の次は“創造性”なのではないだろうか」と今フォーラムの開催趣旨を振り返るとともに、提供する側には、顧客のどんな目的を解決できる場なのか、もっと情報発信が必要だと結んだ。

会場はテーマに合わせ、2012年11月に東京都中央区京橋にオープンした、イトーキ東京イノベーションセンター「SYNQA」での開催となった。「SYNQA」は、オフィス家具のイトーキが従来型の製品展示型ショールームとは一線を画し、すべてのステークホルダーが自由に集い、場を共有し、新たなビジネスを創出していく共創型事業開発拠点と位置づけ展開している施設。フォーラム開催前には施設見学会も行ない、サテライトオフィスカフェなどがある1階の外部交流スペース、セミナールームのある2階の共創型事業スペース、イトーキ京橋オフィスのある3階のオープンオフィスをめぐった。

 

 

 

 

オフィス内のカフェコーナーではテーブルに直接書き込みながら会議もできる
「魚の絵を描いて下さい」と言われ、1名以外全員左向きの絵になった。これは図鑑の影響。ソースが同じだとアウトプットが同じになる。
エム・オー・プランニング 岡野正人さん

 

コクヨファニチャー 竹本佳嗣さん
イトーキ 中山和明さん
ユーシーシーフーヅ 野中政善さん