田中旅日記 バンコク・チェンマイ編1 ちょっとまじめにタイMICE事情

3か月連続2ケタ減と
低調続く訪タイ旅行

2013年末の反政府デモは、今年1月のバンコク封鎖を経て5月に軍事クーデターにおよんだ。憲法停止やバンコク市内の夜間外出禁止令が出されたほか、日本でも外務省が渡航者に注意喚起するなど、政情不安からタイへの渡航者が減少している。

タイ王国政府観光スポーツ省によると7月のタイへの渡航者数は191万4582人となっており、昨年同月と比べて10・9%減少しクーデター発生後3か月連続の2ケタ減となっている。今年1月からの累計でも1362万6929人と10・47%減少している。

現地の日本人駐在員によると、欧米の観光客は多くみられるものの、日本人の観光客や出張者の姿は減っているという。

タイの観光業はGDPの7%を占める基幹産業となっており、現政権を担う国家平和秩序評議委員会(NCPO)は、てこ入れのため8月9日から3か月間中国と台湾からの渡航者のビザ申請料金免除措置を開始した。またNCPOのプラユット議長は観光産業の再起への積極的なプロモーションを含んだ政策を発表している。タイ国政府コンベンション・アンド・エキシビション・ビューロー(TCEB)は、この方針を受けて、海外メディアツアーを再開。タイ観光・MICEの健在ぶりや、安全性をアピールをはじめた。

今回はバンコクとチェンマイのホテルやユニークべニューを訪問し、施設視察やMICEのキーパーソンとの取材を行なった。TCEBは続く9月にも記者を招き、バンコクとコンケーンを案内する。


関係機関が連携し
世界有数のMICE適地に

視察ツアーの冒頭にTCEB外務省とタイ航空の記者会見が実施され、タイの観光業の現状について説明があった。

外務省報道官のセク・ワナメティ氏は「国内各都市の治安はすでに回復し、市民の生活や経済活動に支障がない状況になっている。これから各産業の強みを活かしてさらなる発展を目指す。政府は東南アジアのハブとしての機能や重要なインフラ整備、そして海外からの投資を促進し、6億人の人口をもつアセアンのゲートウェイを目指す。観光においても、異文化のハブであること、高いホスピタリティを備えた世界クラスの観光地という優位性を活かして、アジアのリーダーを目指す」と語った。

タイ航空の営業担当役員チャールズ・パモンモントリ氏は「長い間MICE産業の重要性に注目し、支援してきた。パートナーとしてMICE関係者に航空券を無償提供するなど、キャンペーンやプロモーションを支えてきた。MICE市場の発展がタイ航空の成長に繋がると考えている」と話した。

TCEB展示会部門役員のスパワン・ティーララット氏は、タイのMICE分野の実績と戦略を説明。2012年10月から昨年9月の1年間のMICE訪問者数は101万3502人で前年同期比13.21%増、消費額は29億4000万USドルと説明。分野ごとの割合はミーティングが24%、インセンティブが25%、コンベンションが31%、展示会が22%という。

TCEBとNCPOは観光産業の復興に向け、MICEの積極的プロモーションを推進することに合意、これまでどおりのキャンペーンを展開する。タイ全土をバンコクなど中央部は「MICEメトロポリス」、ソンクラーなど東部は「ビジネスにそよ風を」、チェンマイなど北部は「HIPヘリテージ」、コンケーンなど東北部は「牧歌的なイーサン地区」、プーケットなど南部は「豊かなアンダマン海」と、5つの地域に分け、それぞれの特長を表したキャッチフレーズのもとブランディングを行なっている。

スパワン氏は「地域独自の魅力と豊富な経験で培われた多様なプログラムを組み合わせて、あらゆるビジネスイベントに最適な提案ができることがタイの強み」と意気込みを語った。

TCEBは各国のビューローや観光関連団体、大学などとコラボレーションも活動の柱としている。誘致情報やノウハウの共有のほか、人材育成プログラムの提供、講師の派遣、交換留学なども進め、「競合する団体とも協力できる点は連携を進める」(スパワン氏)日本でも九州産業大学との覚書を締結したほか、今後さらなる提携大学・団体を模索している。