日本市場の現状と課題
-日本での普及が爆発的に進まない理由はなぜでしょうか
瀬戸 一番大きな理由は、ファブリック印刷の金額の違いだと思います。欧米は非常に安く、日本の半額以下です。ファブリックをますます使ってみようという気になります。日本はファブリック印刷+シリコン縫製ができる会社が少ないので、まだ導入していない印刷会社にはぜひ参入してもらいたい。そうすれば価格競争で値段が下がり、手軽に利用できることで普及が進み、市場全体の利益は上がると思います。また日本と異なり、海外の展示会は天井吊りができます。天井吊りをする際、木工やアクリルを吊ると重くて危険なため、軽いファブリックフレームを使います。そういった流れもあり、海外ではファブリックが一般的に浸透しているので壁面にもファブリックを利用するケースが多いです。日本の展示会場でも構造上は天井吊りをすることは可能です。施工期間に余裕があるモーターショーなどは利用することもあります。ただ、海外と違うのは、日本は展示会主催者が会場を間借りして開催するので、なるべく費用を抑えるため施工期間を短くしているという事情がベースにあります。
犬飼 そうですね。それに加え、撤去期間の短さも問題ですよね。今年自社で展示会に出展したときに、ストックルーム以外全部自社のものを使った木工ゼロのブースを作りましたが、僕らは撤収作業を最後までしていました。丁寧にパッキングするため時間がかかるんです。でも周りの木工ブースは一瞬で壊して終わりですよ。撤去時間にも余裕がない場合は、木工が断然早いです。
瀬戸 そのあたりも感覚の差で、特にヨーロッパではなるべく廃棄するものは減らします。エコフレンドリーの意識からか、コスト削減しようというのが根っこにあります。日本はどうしても、出展を1回きりの費用として考えてしまい廃棄を結構出す。そういった考え方の違いはありますね。
知っておくべきこと
- LED ファブリックフレームを導入する上で留意する点はありますか
瀬戸 似たシステムはたくさんありますが、クオリティや安全性には違いがあって、フレームの強度はもちろんのこと、電源ユニットの安全規格なども重要です。PSE やTUV 認証といったもの。CE 規格もひとつの目安になりますが、認証が取れているかどうかは確認したほうが良いです。クオリティの低い製品は安く、安いものは耐久性も低いし、危ない。品質の悪いものが出回って、LEDファブリックフレームが使いにくい・壊れやすいと思われると残念ですし、何よりお金がもったいないので、良いものを使っていただきたい。例えばLED のメリットは「長寿命」で、約5万時間使えます。これは付けっぱなしでも約5年間使える計算になります。初期投資は多少高くても、長年使い続けることでコスト面のメリットが出てくるわけです。
犬飼 最近のニュースとしては、オランダのある会社がLED サイドライトの特許を昔取っていたみたいで、その特許料を徴収していく動きがありますね。当時は彼らもまさかサイドライトにこれほどの需要が出るとは思ってなかった。ところがここにきて、とんでもないマーケットになっていることに気付いて、やっとヨーロッパの企業からはじまり、全世界すべてのサイドライトを使っている会社にアタックしはじめるということみたいです。その特許料は、誰が負担するのかという問題はありますけどね。
ファブリックの面にモニターや棚を取り付けることができる。「オクタルミナ」のみを用いたブース制作も可能に(オクタノルムジャパン)