◆第3回 デザイナー頑張れ!
入社して十年間は異動もなく、希望の配属部署ではなかったので〝いつ辞めてもいい〞という後ろ向きの姿勢でした。丁度勤続十年の表彰があり、一言コメントを求められたので〝こんな長いアルバイトは初めてです〞と言ったら隣におられた社長(創業社長)から真剣に怒られた記憶を懐かしく思う。
その後も展示会担当を継続し、いつの間にか〝いつ辞めさせられてもいい〞スキルを身につけようと前向きの姿勢に切り替えて四十年以上たってしまいました。
仕事場は今はない晴海見本市会場であり、お施主&工場&現場の行き来と時々会社にいる状況で絶えず短納期に追われている毎日だった。上司の〝すぐ戻れコール〞がよくあったが、現場があるのを都合のいいシェルターにしていたかもしれない。
出張などは喜んでいきました。携帯電話やポケベルさえない良き時代でした。仕事の面白さに気付いたのはこの頃です。
社内である展示ブースの打ち合わせをしていた際、後輩デザイナーがその場でいくつかスケッチを描き、ようやくまとめ上げた時でした。同席の制作担当者と工場の人たちが声を揃えて言ったのは〝こんなのどうやって造るんだ?〞と気色ばんだ発言だった。そしてかのデザイナーの返す言葉を今でも忘れない。〝それを考えるのがあんた達だろう!〞蓋し、ここに展示会=ディスプレイの真髄があるように思うのです。
ディスプレイには今までにないモノ、やったことがないコトという『不思議さ』と『驚き』が基本にあるからです。材料、技術、コスト、安全、環境、工期、法律などの保険(裏付け)が必要なのは当然ですが、一方で保険が先立って随分とツマラナイモノになってはいないか?保険を振りかざすマイナス意見は時に正論然としてやってくる。それらを知恵と情報と度胸でぜひ乗り越えたいものです。
ピラミッドの頂点を下にして逆ピラミッドが建てられないものか?ここが原点になり、今でも東京ビッグサイトの会議棟をくぐるたびに思うのです。
頑張れデザイナー、しっかり応援せよ営業マン。多くのディスプレイ業界を担う次世代のために。
執 筆 者 :株式会社 丹青ディスプレイ 取締役 渡部 正隆 氏
連載時期:『見本市展示会通信』2016年8月1日号~2017年1月1日号
※所属・役職などは連載執筆時のもの
<アーカイブス>