◆第4回 “お客様は神様です…か?”
既存クライアントの存在はプロモーション系営業にとってとても貴重だ。永くお取引が続いているうちにお施主担当者が昇格するのは素直に嬉しいもので、併せて実績が残る自分も昇格する。お互いに切磋琢磨し双方管理職として仕事も進めやすくなる。プロモーション営業の真髄であり、美田を開墾したようなものだ。
ある時、部下2人がA社の担当者の結婚式に呼ばれたらしいので、旧知の上司にその理由を聞いてみた。その上司曰く「彼が新入社員の時、他の重要案件の打ち合わせ後、不相応な超小型物件についてもあの2人は同じスタンスで対応してくれていた。その場面を私は見逃さない。だから部下を一人前に育ててくれた2人には是非とも出席してもらいたい」。それを聞いて私はこの会社にずっとついて行こうと誓った。今も変わらない。
既存クライアントには暫く取引のない休眠クライアントというのがある。たまたま大型案件の情報をつかんだので上司に随行してB社の幹部を訪問した際に言われた言葉を忘れていない。曰く「この件でオタクは必ず来ると思っていた。しかしそれでは困るんだ」。???
その時は意味がよくわからなかったがやがて根本的なミスを犯した自分を恥じた。つまり用(仕事)があるときには誰でも訪問する。目的が明快なので。しかし用がないから訪問する、もしくはお施主側に必要がないけどあえて訪問するのが営業の基本ではなかったか?私は営業不要論をある意味で理想としているが、時々は努力してこの基本を忘れないようにしたい。
新規顧客の取り込みには時にエネルギーを要するものである。紹介されてC社のキーマンに電話アポを入れ、当日30分前に付き到着を伝えたが1時間後に奥の方からお目当てのキーマンが登場して曰く「キミはアポ取りが下手。今、とても忙しいので時間を決められるとこちらは困るんだ。会わない訳ではないので、しょっちゅう顔を出してほしい。他はそうしている」。なるほど官公庁では何度も足を運んで名刺を置いていくのが営業の習いなのでこのC社もその類だったようだ。反省。帰りの新幹線の車中でこのC社のファミリーになるのは遠いかも。
私は一滴も飲めないがこの時ほどビールを飲めない自分が情けなかった。
お客さまに学ぶことが多く、心掛けて〝師〞と仰いでいるが、でもあなたは本当に神様ですか?
執 筆 者 :株式会社 丹青ディスプレイ 取締役 渡部 正隆 氏
連載時期:『見本市展示会通信』2016年8月1日号~2017年1月1日号
※所属・役職などは連載執筆時のもの
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