[出展者に聞く]才能を引き出し、次世代へつなぐ出展 – 映像センター

 

映像・音響機器のレンタルや販売を手掛ける映像センターは、2月14日から16日まで、東京ビッグサイトで開催された「ProLight & ProVisual 2024」に出展し、多くの来場者からの注目を集めた。今回、出展の計画から実施まで携わった加藤大祐氏と織茂喜朗氏にブース演出の舞台裏や出展のねらいについて聞いた。

(左)イベント映像事業部 首都圏営業部 ステージ制作部 制作課 課長 加藤 大祐 氏
(右)イベント映像事業部 首都圏営業部 第二営業部 ライブ・コンサート1課 係長 織茂 喜朗 氏

――出展背景と目的をお聞かせください

加藤 「ProLight & ProVisual」は2年ごとに開催されており、初回から今回の第3回まで、毎回担当してきました。それ以前は、私と織茂で別の展示会の自社出展に携わっていました。当時、私たちはまだ若手でしたが「自分たちのブースなのだから自分たちの好きなようにやろうよ」という思いがスタート地点でした。「ProLight & ProVisual」では、来場者の特殊なニーズに合わせ、当社ならではの振り切った展示を心がけています。

織茂 通常、コンサート演出に関わることが多い私は、今回の出展で演出面を考える役割を担当しました。しかし、単に演出パッケージをつくって来場者に「購入しませんか?」と提案するスタイルは、当社らしくないと感じています。私たちにとって展示会は、新しいアイデアを発信する場であるべきで、展示を見た人が「これを自分のビジネスでどう応用できるか?」と考えるきっかけを提供することを重視しています。演出の面白さを探求し、映像、音響、照明の各要素を活かした展示を意識しながら、クライアントと共に研究を深めるアプローチを取っています。

加藤 さらにもう一つの目的は、社内の新しい才能を発掘すること。若手社員が自社のブースに関わりたくなるよう、参加しやすい環境をつくることが重要だと考えました。そのためには、私たち自身が楽しむことも含まれます。

織茂 ブースをただ美しく見せるだけでなく、あるべき姿を強制することなく、映像、音響、照明といった各セクションが最も展示したいと思うものを前面に出すことにしました。

――今回、特にこだわった点は何でしょう

加藤 ショーの時間を設定しなかったことが、今回の一番のチャレンジでした。当初、ステージ演出に関しては、本当に多くの時間を悩み抜きました。プログラムの内容、長さ、そして映像、音響、照明の組み合わせについて考え込んでいるうちに煮詰まってしまって。そんなときに織茂からアドバイスをもらいました。「ショーをやらなくていいんじゃない」と。

織茂 数分間のショーで私たちが伝えたい全てを表現するのは難しいと感じました。映像、音響、照明に加え、来場者にインタラクティブな体験も提供したいと考えたところ、来場者が求めるタイミングで体験してもらうことが難しく、また私たちも理想のタイミングで見せられない。そこで、今回は自由なタイミングで自由な演出が見られるような仕組みをつくろうと考えました。
具体的には、各セクションが見せたい約1分間のコンテンツを3つ程度制作し、ブースの中央にはそれらを選択できるサンプラーを設置しました。ボタンを押す人は誰でもいいし、タイミングも自由。ショーでない分、私たちが見せたいものが直感的に伝わりやすいと考えたのです。

加藤 結果的に、アテンドもしやすかったです。カウントしてみると今回、1日あたり400回程度ボタンが押されていて、多くの来場者に体験してもらうことができました。オペレーター不在でも、ボタンひとつで再生されるような自動のシステムも組んだこともあり、はじめから終わりまで、コンテンツが再生され続けるブースになりました。

織茂 毎回出展しているからこそ、来場者の傾向や反応も掴むことができます。これまでの経験で、ショープログラムの時間が決まっていると、来場者も時計を見て「じゃあまぁいいか」と離れてしまうことが多かった。それよりも、当社のブースに立ち寄った際、すぐにコンテンツが始まった方が足を止めてもらえるし、それが集客につながっています。
会場で長時間話を聞こうとする来場者はそれほど多くありません。多くの人は展示をさらっと見てすぐに去っていきます。今回は、そうした短時間での訪問でもアプローチしやすい手法を選びました。

――今後の展望は

加藤 私たちは「ProLight & ProVisual」を含む自社の出展ブースに約10年携わってきました。そろそろ次世代にバトンを渡す時期だと強く感じています。若いときから大きな経験を積むことができるし、自社ブースだからこそ挑戦できますからね。

織茂 インタラクティブな空間を創出し、映像、音響、照明をシームレスに連携させ、面白い演出を行うために必要なものがあります。当社は主にハードウェアのレンタルを手掛けていますが、この度の展示では「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」や「TouchDesigner(タッチデザイナー)」といったソフトウェア面でのツールが欠かせません。
これらを使いこなすには勉強や努力が不可欠ですが、本質的にはセンスが求められます。若い世代の社員は新しい知識もどんどん取り入れ、私たちが10年前にはできなかったことも軽々とこなす。 彼らのような柔軟な思考を持つ若い世代が、次回展で訪れる人々の心を掴む、革新的なコンテンツを生み出せると確信しています。私たちの次のミッションは、そんな彼らを全力でサポートすることですね。