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[座談会]映像業界の次世代経営陣に聞く 変化する業界にいかに向き合うか/日本映像機材レンタル協会(JVRA)×ピーオーピー 合同企画

人材不足やコンプライアンスの問題、若手世代の価値観の変化をはじめ、映像とイベントのビジネスが抱える課題は多い。特に経営者はこれらの課題と正面から向き合っていかなければならない。そこで日本映像機材レンタル協会(JVRA)と協力し、協会の次世代経営者4人をお招きした。業界の今後をどう読んでいるか、座談会で語り合ってもらった。

[登壇者]
・エージーエーコーポレーション 代表取締役 飯野 弘基 氏
ホテルや会議スペースをはじめMICE やオフィスの仕事が多い。若いスタッフが多く、平均年齢は33歳で、社員の7割が20代と30代。

・ストロベリーメディアアーツ 取締役 永渕 裕康 氏
下関の本社に加え東京ほか各地で拠点を展開する。主にイベント、コンサート、放送分野を手掛ける。

・マグナックス 代表取締役副社長 森谷 真義 氏
スクリーンの製造販売からスタートし、映像の制作も手掛けるように。ステージのマッピング映像を請け負うことが多い。

・ユーリンク 代表取締役社長 鵜澤 亮 氏
創業時は「マルチビジョン拡大機」を取り扱っており、その後レンタルにシフト。現在は株主総会を主に手掛けている。


各社の仕事に「色」がなくなっていく?

─今日は会社経営に携わる皆さんに集まっていただきました。皆さんは協会の活動を通して、すでにお知り合いなんですか

飯野 私は2年前に代表に就任して、昨年JVRAに入会したので、皆さんと比べるとまだまだ交流はこれからの段階です。でもマグナックスさんとはオフィスが近所なこともあって、やり取りがまったくなかったわけではないんですよ。

─なるほど。それでは早速、映像業界の昔と今についてお伺いしたいのですが、皆さんの入社当時と比べて、業界が変わった実感する部分はどんなところですか?

森谷 昔の現場と大きく変わったのは、やっぱり怒号が飛ばなくなったことですね。ステージ上から「バカヤロー!」と会場中に響いていたのがなくなって、スタッフが落ち着いて作業している。現場の雰囲気は良くなったと思います。

永渕 昨今のコンプライアンスの問題はじめ、常識が大きく変わってきているのは、僕らの業界もいわゆるメジャーになりつつある証拠じゃないですか? 社会に注目されるようになって、求められる基準も高まっているというか。

鵜澤 僕は皆さんより後から業界に入りましたが、機材と技術、ネットワークの進化で、常に仕事のやり方は変わっていきますよね。常に勉強していないと、いつの間にか置いていかれるな、という危機感はいつもあります。特に最近は生成AIの勢いがすごい。僕たちが携わる株主総会のような慎重な対応が求められる場でも、顧客から「生成AIで何かできるでしょ」と期待されます。新しい技術も取り入れていかなきゃいけないですし、技術が入れ替わるスピードも加速していると思います。

森谷 技術の進化で懸念するのは、「職人がいなくなってしまう」こと。昔、われわれが機材を触っていたときは、必ず専門の技術者がいた。時間をかけて機材の操作を覚えて、ようやく調整ができていたのが、今やプロジェクターを置くだけで映像がぴたりと合ってしまう。つまりわれわれの仕事が、特別なスキルを必要としない仕事になる世界が近づいているのかなと。経験が浅くても機材を持って行けば仕事ができる。
そうなると今度は、どういう風に自社の“色”を出して、お客さんに売り込んでいくかを考えなければ、事業の継続が難しくなっていく。各社の個性、技術の差を出していかないと、どこでも同じようなサービスが提供できてしまう。すでに昔よりも会社ごとの色が薄れてきている気がします。

永渕 確かに昔に比べて「職人」は本当に減ってますね。だからこれからは技術以外の、優秀な人材の育成、業務のスピード、現場の仕上がり、あるいは「人間力」といったような、技術以外で差がついていくのかも。われわれが取り扱っている商品はモノとはいえ、モノを運んで終わりの商売ではなく、やっているのはサービス業。お金を受け取って楽しませて、イベント参加者にいかに満足して帰ってもらうか。さらに言えば発注者が希望するものが納められるかが、この仕事で一番基本となる考え方ですからね。

(2ページ目に続く)

EventBiz vol.38 Booth Design Selection 2025

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編集内容

特集 Booth Design Selection 2025

昨年の展示会を彩った、40の空間を集めた。優れたデザインや機能性を持ち、話題とアイデアに富んだ各社選りすぐりの事例を、デザイナーの声とともに紹介する。。

特集 Booth Design Selection 2025

Booth Design Selection 2025

グローバルブランドコンセプト「To the last detail.」を体験する展示
オカムラ/日本デザインセンター

特別企画 「イベント業務管理士」資格制度を活用する

経営者インタビュー イベントがもたらす価値とは 西尾レントオール

その他コンテンツ
INFORMATION 「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)開会式
展示会の総合分析 2024年10月~ 12月
展示会の総合分析 2024年の年間統計
開催スケジュール(展示会) 2025年3月~ 5月
論考 寺澤 義親
MICETOPICS① 竹芝と八丈島をつないで 東京MICE の魅力PR 東京都/東京観光財団
海外MICE のデジタルイノベーション動向を探る 「第6 回横浜グローバルMICE フォーラム」レポート
「IGLTA 世界総会2024 大阪大会」から学ぶダイバーシティ対応
MICETOPICS② スポーツビジネスジャパンコンファレンス2025 が開催
JVRA座談会 映像業界の次世代経営陣に聞く 変化する業界にいかに向き合うか

判型:A4判
ページ数:92
ページ
定価:2,200円(税込・
1冊)+送料 /  8,800円(税込・年間)
全国有力書店で販売。また、小社からの発送も行っております。
※上部の購入ボタンよりご予約を受け付けております。
お問合せは(株)ピーオーピー 出版企画室(TEL: 03-5687-6841、FAX: 03-5687-6845)

 

cluster、町田市観光コンベンション協会とタッグを組み「バーチャル町田シバヒロ」をオープン

イベント累計動員数3,500万人を超える、国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターは、町田市観光コンベンション協会と協力し、同協会が管理運営を行う施設、町田シバヒロ(東京都町田市中町、以下シバヒロ)の開園10周年を記念して「バーチャル町田シバヒロ」がオープンすることを発表した。クラスター社と観光協会がタッグを組むのは全国初。

シバヒロは約5700㎡の芝生がある多目的広場。週末を中心にグルメイベントやスポーツ教室、フリーマーケットなどの多彩なイベントを開催している。地域や学校のレクリエーション、企業、団体の各種催しの会場としても利用されているが、近年は近隣に大型マンションなどの建設が進んだ関係で音の大きなイベントの開催が難しくなってきている。

そこで、「メタバース空間で地域の方に親しまれてきたシバヒロのイベントを、リアル同様に実施したい」という思いから「バーチャル町田シバヒロ」がオープンした。

3月20日(木・祝)に開園10周年企画の第3弾として、オープニングイベント「町田シバヒロ10th Anniversary in cluster」を開催する。当日はお披露目として、様々なゲストが登場するステージイベントを用意。ご当地ヒーローやポッドキャストでおなじみのパーソナリティなど、バラエティ豊かなキャラクターが登場する。「シバヒロ」を知っている人も初めて来る人も、「シバヒロ」がどんな場所なのか、どんな楽しみ方ができるのかを体感していただける内容となっている。

また、リアルの町田シバヒロでは、「町田シバヒロマルシェ#5」を同時開催。町田市内外から多くの事業者が出店し、毎回多くの人が来場する。当日は「バーチャル町田シバヒロ」を体験できるスペースも用意する。

今週の展示会スケジュール(3/3~3/9)

▽千葉
03/05(水)~03/07(金)
幕張メッセ
Grinding Technology Japan 2025

▽東京
03/04(火)~03/07(金)
東京ビッグサイト
日経メッセ 街づくり・店づくり総合展
建築・建材展 2025
JAPAN SHOP 2025
リテールテックJAPAN 2024
SECURITY SHOW 2024
国際照明総合展 ライティング・フェア2025
・ビルメン CONNECT
・Good 家電 Expo

03/05(水)~03/07(金)
東京ビッグサイト
フランチャイズ・ショー2025

03/05(水)~03/06(木)
EBiS303
桐生テキスタイルプロモーションショー

▽神奈川

03/07(金)~03/09(日)
パシフィコ横浜
第59回 ジャパンゴルフフェア2025

▽大阪
03/05(水)~03/07(金)
インテックス大阪
メディカル ジャパン 大阪
クリニックEXPO[大阪]
次世代薬局EXPO[大阪]
感染対策EXPO[大阪]
病院EXPO[大阪]
介護・福祉EXPO[大阪]
医療DX・IT EXPO[大阪]

[講演会レポート]展示会の集客力を高める工夫を解説 – 第15回 夢メッセみやぎ講演会

みやぎ産業交流センターは2月18日、夢メッセみやぎ(宮城県仙台市)で「第15回 夢メッセみやぎ講演会」を開催した。本講演会ではシャベリーズ代表取締役・丸山久美子氏が、展示会での集客を成功させるための手法を紹介した。講演には出展者から業界関係者まで幅広く集まり、参加者は実践的なアドバイスに熱心に耳を傾けた。

来場者視点で考えるブース設計

丸山氏はまず「展示会での集客は来場者の視点に立つことが重要」と述べた。多くの出展者は、自社の商品やサービスを中心に考えてブースを設計しがちだが、来場者がどのようにブースを認識し、どこに視線を向けるのかを考慮することで効果的な集客が可能になるという。「出展者はブース内側に立つことが多いため、視点が固定されがちです。しかし来場者は通路からブースを眺めるため、見え方が異なります。設営時には通路に出てブースを外側から見直すことが重要です」(丸山氏)。

続いて「来場者に声をかける際の第一声の重要性」についても強調した。よくある「こんにちは」「いらっしゃいませ」といった一般的な挨拶は、来場者が無視しやすいNGワードだと指摘。その代わりに、来場者が見ているものを端的(3~5秒程度)に説明すること。さらに、イエス・ノーで答えられる簡単な質問や選択肢を提示する質問を組み合わせることで来場者の関心を引き、より効果的な会話につなげることができると解説した。

名刺交換で「見込み客」を見極める

展示会の成果を左右する要素のひとつとして、丸山氏は名刺交換の質を挙げた。ただ名刺を集めるだけでなく、見込み客かどうかを見極めることが重要で、「名刺交換はできるだけ早い段階で行うべきです。理想は会話の3往復以内。早めに交換することで相手の会社名や役職、部署などが分かるため、商談の可能性を見極める大きな手助けになります」と述べた。

講演では、実際に展示会で成果を上げたテクニックが多数紹介され、参加者が積極的にメモを取るようすが見られた。また、講演後のアンケートでは「ブース装飾に関する内容がすぐに実践できると感じた」「悩んでいたことが解決できそうな気がした」「対応できそうなことが学べた」といった声が寄せられ、具体的かつ丁寧な内容が参加者から高く評価された。

幅広い業界に貢献した清水卓治氏を偲ぶ[シミズオクト]

昨年12月13日に90歳で逝去したシミズオクト代表取締役会長・清水卓治氏を偲ぶ「清水卓治より感謝のお別れ会 ~Show Must Go On~」が2月26日、東京ドームシティ・プリズムホールで開催された。スポーツ業界や音楽・舞台業界、イベント運営関係者など、多方面から約1200名の参列者が集まり、故人を偲んだ。

清水氏は1934年、北海道札幌市に生まれ、舞台設営やイベント運営の分野で数十年にわたり活躍し、業界の発展に寄与した。故人がよく口にした言葉「Show Must Go On」は「全ての仕事を最後までやり遂げなければならない」という社員への応援の言葉であり、シミズオクトにとって大切な言葉として受け継がれている。

清水氏はスポーツ業界にも深く関わり、日本サッカー協会・相談役の川淵三郎氏は「Jリーグ創設時、6万人規模の国立競技場の警備をどうするかという大きな課題がありました。シミズオクトの協力により、安心して開幕戦を迎えることができました」と振り返る。日本相撲協会の八角信芳理事長も「会場運営のサポートだけでなく、ゴルフをご一緒させていただいたことがあり、その若々しい姿勢に刺激を受けました」と語った。

舞台演出の分野でも実績を残し、多くのアーティストや関係者と協力してきた。音楽プロデューサーの松任谷正隆氏は「シミズ舞台工芸(現シミズオクト)との付き合いは30年以上になります。数えきれないほどのステージを作っていただきました。苦難を乗り越えながら共に成長し、シミズオクトなしには考えられない歴史を歩んできました」とコメント。演歌歌手の北島三郎氏は「同じ北海道出身でもあり、舞台やコンサートなど、幾度となく支えていただいたことを思い出します」と話した。また、ステージデザインを手掛ける英・Stufish社からは「私たちとのコラボレーションは思い出深いものだった。素晴らしい会社を作り上げた清水会長の功績に敬意を払い、今後も関係を続けていけることを願っています」とのメッセージが届いた。

その後、献花が行われ、参加者は故人への最後の別れを惜しんだ。また東京ドームホテルでは「感謝の集い」が催され、故人との思い出を語り合うひとときとなった。

本会の設営や演出、運営はすべてシミズオクトが手掛け、会場には故人の愛用していた品々や生前の写真、華やかなフラワーディスプレイが並んだ。清水氏を偲ぶ場は、自ら育てた企業によって設えられ、故人の歩みが形となった空間が広がっていた。

【対談】展示会ビジネスの魅力と未来② 堀正人 × 管埜寛之

マーケティングの代表格である「展示会」は、どのような役割を担い、なぜ必要なのか。この根本的な問いに対して、長年にわたり展示会ビジネスを手掛けてきた堀氏と管埜氏が対談を通じて思いを語る。展示会ビジネスの魅力とは何か、未来の展示会とはどのような姿なのだろうかを問う。(聞き手=池上龍朗)

※本記事は展示会専門紙『見本市展示会通信』に掲載した内容を編集したものです。

 

展示会産業の経済効果について

ーー今日は話を絞ってまず展示会の経済効果についての見解をお伺いできればと思います。それと、そもそも展示会って儲かるのか、という基本的な疑問も気になります。

管埜 展示会が儲かるか、それとも展示会を利用して儲けるのか。その辺を整理して話すといいかもしれません。オーガナイザーとしては、展示会はビジネス的にすごく有利な商売だと思います。特にキャッシュフローの面で有利ですし、成功すれば毎年安定した収益が見込めます。

一方、出展者にとっても、例えば全国に営業所を設置するより、展示会に出展した方が効率よくビジネスチャンスをつかめます。投資効果を考えると、展示会は非常に意義のあるマーケティング手段と言えます。さらに来場者にとっても、展示会は一箇所で多くの製品やサービスを比較したり、詳しい話を直接聞けたりする効率的な場ですよね。ネットだけでは得られない情報や体験ができます。

だから、オーガナイザー、出展者、来場者、すべての立場で見ても、展示会は大きな価値があるビジネスだと思います。

管埜寛之氏

堀 それが総合的な魅力なんですよね

管埜 展示会って、主催者にとっても来場者や出展者にとっても効率が良くて、とても価値のあるメディアですよね。

堀 特に主催者にとっては、継続的に利益を確保できるビジネスモデルになっていますよね。キャッシュフローの面でも、経営の安定感がある。

管埜 はい。一方で、出展者にとっては全国に営業所を設けるよりも、展示会に出る方がコストパフォーマンスが高い。効率的に新しいビジネスチャンスを見つけられるし、ROI(投資収益率)を考えても非常に良い手段です。

 来場者にとっても、一か所でさまざまな製品やサービスを比較できるのが便利ですよね。それに、「偶然の出会い」や「新しい発見」がビジネスに繋がることもある。

管埜 その「偶然の出会い」がまた展示会の魅力ですよね。それぞれにとってWin-Winの場になっている。

堀 それに、展示会の力を考える上で、やっぱり経済効果の数字が大事ですよね。個人でも自分自身の身長や体重を知っているように、展示会産業がどれだけの影響力を持っているかその実態の数字を把握する必要があります。

管埜 確かにそうですね。展示会がどれだけの経済効果を持っているのか、ちゃんと数字で示せれば、業界全体の理解も深まります。例えば、海外では展示会の経済効果を具体的な数字でしっかり示しているところが多いです。

堀 日本では残念ながらまだそこまで成熟していないですよね。展示会産業の「国勢調査」みたいなものが必要なんじゃないかと思います。

管埜 同感です。国や行政が主体となって、「経済効果」を調査して「この展示会はこの地方にどれだけの経済効果をもたらすか」などを具体的に把握するべきです。

堀 実際、海外の例を見ると、展示会がGDPを押し上げるだけでなく大量の雇用も生み出しています。ここにも注目したいです。

管埜 例えば2018年のデータだと、世界での展示会の経済規模は直接支出だけで約20兆円。展示会に関わる直接GDPは約810億ドル(日本円で約12兆円)で、130万人以上の雇用を生み出しているとされています。これを国別GDPランクで比較すると、世界で56位に相当する規模のビジネスなんです。

日本の展示会産業の規模について、堀さんとも相談しながら、「これを日本にあてはめるとどんな数字になるのか?」という話をしています。ざっくり計算すると、例えば展示会の来場者数は年間約1000万人くらいかなと。直接的な支出、つまり展示会関連の費用や出展者・来場者の旅費を含めると、約7000億円くらいになるんじゃないかと思います。

堀 それに間接的な費用を加えて計算すると、国内展示会産業の経済規模は日本全体のGDP(約557兆円)の0.2%、つまり1兆円くらいになります。

管埜 雇用も直接的には延べ約10万人くらいですかね。ただ、この数字が正確かどうかはわからないので、もっときちんと調査が必要だと思います。東京ビッグサイト単独の経済効果調査では年間6.5兆円(2007年)という数字もあるようで、それをベースに考えると10兆円弱という考え方もありえますね。

堀 その通り。現状では、展示会の経済効果や規模について、具体的なデータがまだ十分ではないので、国や行政にも協力いただきながら業界全体でしっかり取り組む必要があると思います。展示会がどれくらいの経済インパクトを持つのか、もっと正確に把握できると良いですね。

管埜 例えば、アメリカでは「Center for Exhibition Industry Research(CEIR)」という研究機関が、全米の展示会産業データを定期的にまとめています。現在ではコロナ前の2019年を基準にして、四半期ごとの回復状況を出しているんです。日本でもこういう第三者機関を作って、業界全体のデータを収集・分析する体制を整えるべきだと思います。

堀 確かに、日本にもそういう組織が必要ですね。そういったものがあれば、業界全体の成長や課題をより明確にできそうです。

管埜 展示会産業に関して、日本でももっとデータを収集・分析する仕組みが必要ですよね。例えば、野村総研や日本総研のようなリサーチ会社と連携して、展示会の経済的なインパクトを具体的に測る仕組みを作るべきだと思います。

堀 確かにそうですね。展示会産業はGDPや雇用にも影響を与える誇らしい産業のひとつなんですから、もっとしっかりとした基盤、業界環境の整備が必要ですよね。

堀正人氏

管埜 官公庁でも数字の把握はしていますけど、例えば来場者のデータが十分に含まれていないとか、数字が小さく見える問題もあります。それをきちんと補完して、直接的・間接的な経済効果や雇用も含めた総合的な数字を出してほしいですね。

堀 本当にその通りです。UFI(国際見本市連盟)のような国際基準を取り入れるべきだと思います。

管埜 例えば、観光庁が以前に発表した数字では、展示会産業の規模が1120億円(2009年)程度とされています。一方で、(一社)日本イベント産業振興協会のデータだと3077億円(2009年)くらいです。こうしたバラつきをなくすためにも、データを再構築する流れが必要ですよね。

堀 日本でも展示会産業の実態をきちんと把握し、世界に近づけていくべきだと思います。

管埜 今後はより具体的で最新のデータをベースに、展示会産業の重要性をしっかりと示せるようにしていきたいですね。例えば雇用の話なんかも、10年前には全然話題になってなかったと思います。でも、例えば東京ビッグサイトの中型規模の展示会では。実際に何人が働いているのか、そういった事実も反映していきたい。それを考えるとすごい数の人が関わっているんですよね。

堀 そうですよね。でもそのデータって、ちゃんと集計されてないことも多いですからね。

管埜 そうなんです。それこそ間接的な経済効果やシステム会社、また清掃会社なども含めて、どれくらいの人が関わっているのかをきちんと見ていき、それらの数字もきちんと把握する必要がありますよね。そういう影響をしっかり示すことで、展示会がどれだけ大きなインパクトを持つかを伝えられるはずです。

最近、UFIの発表でも、アジアの展示会場面積がヨーロッパを超えたという話がありましたよね。なのに日本はどうしてこう停滞してるんだ、という声も出てきますよね。

――経済効果をしっかりと示して、「これだけの価値があるんだから、もっと投資するべきだ」というメッセージを発信していくべきです。ぜひこれをきっかけに、もっと大きな動きに繋げていきたいですね。

 

理想の展示会

ーーそれでは、次のお話にいきましょう。「理想の展示会」のお話でしたね。

管埜 まずは私から。アメリカ系のイベント会社で働いていたときの話なんですけど、そこのCEOがすごく先見性のある人で、会社のビジョンをしっかり持ってたんです。そこには3つのビジョンがありました。

1 Education First
2 Interactive Show Floor
3 Year-round Community

というものです。

堀 「教育を第一に / Education First」というのは具体的には?

管埜 例えば展示会場の中でオープンセミナーをやったり、別の部屋で基調講演をしたり、いろんな形の教育を提供するんです。そうすることで、質の高いお客さんが集まりやすくなる。その分野に興味や関心のある人が集まるので、結果的に展示会の価値も上がるんです。

堀 なるほど、そういう視点で考えると、展示会の本質を問いただし、そのものの形が変わりますね。

管埜 2つめが展示会場における「インタラクティブな要素」です。例えば、製品デモやシミュレーション、来場者が実際に体験できるコーナーを作るとか、出展者同士のコラボが見られるショーケースを設けるとか。そういう仕掛けがあると、来場者と出展者のつながりがより深くなりますよね。

堀 それは確かに面白いですね!

管埜 さらに、3つ目が「Year-round Community」っていう考え方も取り入れていました。展示会って普通は3日間とか5日間のイベントですけど、その前後でSNSやグループ活動を通じてつながりを続けるんです。これによって、展示会の価値が広がっていき、年間を通じたコミュニケーションにつながると。

堀 それ、まさに新しい展示会の形ですね。教育、インタラクティブ、そしてイヤーラウンドコミュニティ。この3つを軸にすれば、AIやDXを使ってさらに高度化できるアイデアですね。

管埜 そうなんですよ。単なる展示会ではなく、セミナーやコンテンツ、多様な要素を組み合わせて、新しい価値を提供することが重要だという。その会社では主にIT分野の展示会を手掛けているので、技術革新が多く、こういったアイディアがより効果的だったのでしょうね。

堀 本当に、展示会を成功させるための大事なヒントですね。

管埜 90年代の中頃の話なんですけど、特にIT系のイベントが多かった時期なんですよ。例えばJavaの開発者向け会議(JavaOne)とか、COMDEXとか、まあそういうのがありましたね。それが
オーガナイザーとして、自分の仕事の意味とか社会への貢献を感じられる瞬間だったんです。それが今でもすごく印象に残っていて、やっぱり重要なことなんですよね。

堀 それって、成功的な展示会の基礎的なチェックリストみたいな感じですね。主催者でも参加者でも、それがしっかりしてないとダメってことですね。

ーーところで、理想の展示会に欠かせないポイントって何だと思いますか?

管埜 僕にとって、展示会っていうのはあくまで「場」を提供するものなんです。主役は出展者で、彼らが自由に自分たちの可能性を追求できる場を作る。それが一番大事だと思います。

堀 それって、出展者の満足度をどう高めるかがポイントですね。

管埜 それが展示会として成功するための基本だと思っています。出展者と来場者がしっかり繋がる場を提供する。それがオーガナイザーの役割です。

――なるほど。じゃあ、主催者、出展者、来場者、それぞれの視点から見た理想の展示会ってどういうものだと思います?

管埜 やっぱり、今の世の中にまだ存在していないものを作ることですかね。例えば新しい産業とかテーマを見つけて、それを形にしていく。AIとかもそうですよね。ただ「AI」ってひと言で言っても、医学用なのかビジネス用なのか、教育用なのかで全然違いますよね。そういう新しいカテゴリーを取り入れる展示会が理想的ですね。まだ日本ではそこまで進んでいませんけど、中国ではもうそういう動きが始まっています。だから、そういうアンテナを張ることも主催者にとって重要なんですよ。

堀 本当にそうですね。新産業を見据えた展示会は、これからどんどん求められると思います。

――例えば「ラーメン産業展」もそうです。その展示会をきっかけにラーメン協会ができて表彰までされてたじゃないですか。あれも、展示会が業界全体に与える影響のいい例ですよね。展示会が新しいメッセージを発信する場になったり、国や地域の施策を支える場になることも重要だと思います。例えば、九州で毎年半導体産業をテーマにした展示会を開くとか。人材育成も含めて、そういった場が求められているんじゃないでしょうか?

堀 出展者にとっても、参加するだけで購買が保証されるような展示会が理想ですよね。主催者がバイヤーと出展者を事前にマッチングして、効率的に商談が進むような仕組みがあれば、展示会の価値が一層高まりますね。

管埜 確かに。ソーシャルメディアやAIを活用して、来場者と出展者が事前に商談のアポイントを取れる仕組みを作ると、展示会に行く前からスケジュールが組まれるので、より効率的になりますね。

堀 それは、理想的ですよね。テクノロジーを活用すれば実現可能ではと思います。例えば、展示会に参加することで商品やサービスが業界や国から認定される仕組みなんかも面白いですよね。

――確かに。特にB to Bの展示会では事前に情報を共有したり、つながりを作ったりする仕組みがあると良いですよね。展示会の形って、今後どう変わっていくんでしょうか。従来のように人がたくさん集まるだけじゃなくて、もっと効率的な方法も出てきそうですよね。

管埜 そうですね。例えば、入場したらすぐに商談が自動的に進むとか、ITを活用すればもっとスムーズな形が実現できるかもしれません。でも、その一方で偶然の出会いや発見も展示会の醍醐味ですよね。

堀 まさに「偶発的な発見があるドンキホーテ的な効果」ですね。探してみたら「あれ、こんな面白いものがあるんだ!」みたいな偶然のワクワク感。それも展示会の重要な要素だと思います。

管埜 昔は商談室やマッチングシステムなんかが流行りましたけど、最近はあまり見かけなくなりましたね。でも、そういうクローズドな場も展示会の中にあって良いんじゃないかと思います。

堀 広い会場で自由に動き回れる部分と、静かな商談スペースが共存するような展示会が理想かもしれません。

管埜 そう考えると、いろんなニーズに応えるための空間作りが大事になってきますよね。

堀 商談中って、競合相手に商談をしているところを見られたくないっていう来場者・バイヤーの方は、結構いますよね。例えば、あるメーカーと話しているところを他社に知られるのを避けたいとか。

管埜 なるほど。だから商談はクローズドなスペースで行われるべき、っていう考え方もありますよね。例えば、部屋を用意するとか、そういう仕組みを作ることが必要かもしれません。

堀 現実的にはそういう形が多いですよね。でも一方で、オープンな空間も必要じゃないかって意見もありますし。

管埜 そうですね。クローズとオープン、この両方が共存する展示会が理想なんでしょうね。

堀 そのバランスをどう取るかが、これからの課題になりそうですね。

管埜 例えば、日本ではインターネット関連の展示会「INTEROP」を1994年に初めて開催したんですよ。もともとはアメリカ発のイベントなんですが、今でもイベントとして残っているのは日本だけなんです。他の国では淘汰されてしまいました。

堀 それはすごいですね!どうやって続けてこられたんですか?

管埜 やっぱり継続する力ですよね。それと、当時は会場に物理的なネットワークをどう設置するかっていう技術的な課題もあって、初めての挑戦だったんです。光ケーブルを天井に這わせるような作業をしたんですけど、日本のチームがアメリカのスタッフが驚くほど早く効率的にそれをやり遂げたんですよ。アメリカの本社がその日本のチームを向こうに呼びたいくらいだったんですね。日本人の仕事の丁寧さとか効率の良さには感心されましたね。会場費が高いからこそ短い時間で効率よくやる必要があったのも一因ですけど。

――「ShowNet」(Interop内のコンテンツ) っていう仕組み、本当にユニークな仕組みですよね。これ、最初の年からすごかったんですか?

管埜 はい、想像以上に大変な運営でした。当時はWi-Fiなんてなくて全部有線でしたからね。一つひとつ出展者のブースにケーブルを引かなきゃいけなくて、すごく大変だったんですよ。

しかも、そのケーブルってめちゃくちゃ太くて、一人では運べないくらいなんです。それを電気屋さんが頑張って作業してくれたんですけど、日本のやり方が効率的すぎて、アメリカから来たチームが驚いていました。「どうしてこんな短時間でできるんだ?」って。日本人として誇りに思いました。一つの形式と新しい技術の間をうまくつなぐ役割があるんだなと感じました。

堀 まさにそうです。過去の成功例や新しいモデルを活用して、業界全体が前に進むきっかけになればいいですよね。価値のある展示会って、競合がいる中でどう優位性を出せるかが重要ですよね。良い展示会には、出るべき出展者が集まるし、業界の縮図みたいな役割があります。

管埜 確かにそうですね。良い展示会には、その業界をリードする出展者がしっかり集まっていますよね。それが展示会の基盤というか、大事な部分だと思います。例えばCOMDEXでは、最初から出展している企業が優先されて、最良の場所を選べる仕組みが徹底されていました。それってシンプルだけど、出展者にとっては大きなモチベーションになっていたと思います。

堀 そういうルールがあると、公平性も感じられるし、長期的な視点での継続にもつながりますよね。あと、同じ商材を扱う企業でも、予算の立て方や優先順位の付け方が全然違っていて、それが展示会の内容や成果に影響するのが面白いですよね。

管埜 確かに。主催者の哲学や過去の経験を若手に伝えるのは、すごく意味がありますよね。それこそ展示会の価値を次の世代に引き継ぐために必要なことかもしれません。

――興味深いお話をありがとうございました。

(③に続く)

人気シリーズ最新作をリアルで体験できるXRイベント「『モンスターハンターワイルズ』AR 都庁襲来」3月3日から開催

小田急電鉄は2月27日(木)、東京・新宿区西新宿の都民広場で3月3日(月)から16日(日)まで開催するXRイベント「『モンスターハンターワイルズ』AR 都庁襲来」のメディア体験会を実施した。

カプコンの人気ゲームタイトルで、2025年2月28日(金)に発売されるモンスターハンターシリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ』を、XR技術を用いることによって現実空間でも楽しむことのできるコンテンツ。ソニーネットワークコミュニケーションズの子会社であるSoVeCが開発する「XR CHANNEL」を使い体験することができる。

アプリを起動後、スマホを都庁に向けると突如現れた黄金のモンスター「≪煌雷竜≫レ・ダウ」が猛スピードでこちらに向かって飛んでくる。その素早い動きに翻弄され、姿を見失ったかと思った瞬間、さらなる脅威「≪鎖刃竜≫アルシュベルド」が目の前に顕現する。やがて縄張り争いを始めた2匹の戦いに我々は巻き込まれて……というストーリー仕立てになっている。

このイベントは小田急電鉄が代表を務める東京都の「西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム」における、「地域の魅力向上に向けたXRの都市実装検討分科会」の一環。同社で新宿プロジェクト推進部調査役を務める中江徹氏は「当社はこれまで、XR技術によって事業をアップデートしてきた。XR技術を通して、その場所の特徴や魅力を感じてもらいたいというのが大事な趣旨だ」と語る。

提供=小田急電鉄

コラボタイトルにモンスターハンターを採択したのも、そのためだ。巨大なモンスターが空から大地へと縦横無尽に駆け回ることにより、普段は見上げる機会の少ない都庁を見上げ、都民広場の広さを改めて感じることができる設計になっている。SoVeCで企画・戦略 ジェネラルマネージャーを務める梶尾桂三氏は「都庁は東京でも類まれな場所だ。その特徴をいかんなく発揮することができた」と話す。

中江徹氏
梶尾桂三氏

イベントはAR対応のスマートフォンさえあれば誰でも参加が可能。中江氏は「話題作とのコラボ。モンスターハンターシリーズのファンはもちろん、老若男女問わず、一人でも多くの人に体験して欲しい」と言う。

 

仙台でMICE最新動向を発信する「SEN Com 2025」開催へ

青葉山コンソーシアムは2月27日、仙台国際センターでMICEの促進を目的としたイベント「SEN Com 2025(SENDAI Communication Fair 2025)」を開催する。本イベントはMICE業界関係者だけでなく、一般市民も対象。施設見学ツアーや商談会、試食会、セミナーなどの企画を予定している。

仙台国際センターは2025年4月20日から約2年半にわたり、大規模改修工事のため会議棟を休館する。これにともない、通常は公開されていない会議棟内の一部を含めた施設内部を案内する「秘密の舞台裏ツアー」を実施。MICE施設運営の裏側を紹介し、市民や業界関係者に理解を深めてもらうことがねらい。

またMICE主催者向けには「MICEサポート企業 展示・商談会」を実施。仙台市内のMICEサポート企業やホテル、MICE施設、東北6県のコンベンションビューロー、観光関連事業社らが出展し、業界関係者同士のネットワーク形成やビジネス機会の拡大を支援する。

移住希望地ランキングの1位は群馬県/2位は静岡県/3位は栃木県【ふるさと回帰支援センター】

認定NPO法人ふるさと回帰支援センターは、ふるさと回帰支援センターの窓口相談者・セミナー参加者等を対象に、地方移住に関するアンケートを毎年実施している。

このたび2024年(1月〜12月)の調査結果を発表した。

<調査概要>

調査対象
新規のセンター窓口相談者、新規の移住セミナー・相談会等参加者(いずれもオンライン含む)

調査手法 上記対象者へのアンケート(相談カード)

調査時期 2024年1月4日~12月28日

回答者数 19,021(相談:n=11,782 セミナー:n=13,349 相談とセミナーは重複あり)

2024年の移住相談件数(面談・電話・メール・見学・セミナー参加)は、61,720件だった。2023年(59,276件)に対し4.1%増となり、4年続けて過去最高となった。

また、移住相談会・セミナー等の開催数は637回で、セミナーの開催方法は、オンラインが251回(39%)、対面が247回(39%)、ミックス(オンライン+対面)が139回(22%)だった。

(「出展:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」)
https://www.furusatokaiki.net/topics/press_release/p52192/

ふるさと回帰支援センターは、有楽町の東京交通会館内にある移住相談センター。

センターでは、地方移住に関するパンフレットや資料を常設し、各地域の相談員が移住を希望する人に、具体的な地方暮らしの情報を提供するとともに、各種相談に対応している。