JEITA新会長に日立製作所の小島氏「テクノロジーは進化の転換点に直面」

小島啓二会長

2023年6月1日、電子情報技術産業協会(JEITA)は「第13回定時社員総会」を開催し、小島啓二氏(日立製作所 代表執行役 執行役社長 兼 CEO)を新会長に選任した。

小島会長は記者会見の場で、ここ数年の社会の変化には大きく3つあるとした。

①新型コロナを契機としたDXの加速。日本で難しいと言われていたリモートワークが広く導入され、社会行動に変容が生じた。アフターコロナでは人の交流が戻る一方、AIをはじめとしたデジタル技術の急速な進歩により、社会経済に変革をもたらすだろう。
②企業行動に対する価値の認識の変化。気候変動への取組みなど、経済価値以外も的確に把握し、開示していくことが企業価値に直結する。その取り組みの見える化にデジタル技術の活用は必要不可欠だ。
③ 経済安全保障の確保。企業1社では解決が難しい。地政学上のリスクが高まっている。

また、「テクノロジーは進化の転換点に直面している」とした上で、JEITAが目指す3つの指標を掲げた。

① テクノロジーの進化と社会の調和への貢献。社会全体のDXは過去に例がないスピードだ。生成AIを代表とするテクノロジーは企業だけでなく日々の暮らしにも浸透しており、社会全体の利益としてその恩恵を誰もが享受することが望まれる。生産性向上や働き方改革のようなものから、カーボンニュートラルのような地球規模の課題にいたるまでの解決の鍵となるだろう。一方で、テクノロジーが進化するスピードと、社会がそれを受け入れるスピードにはギャップがある。それを埋めるための環境整備を進め、社会法制度の歪みを正し、調和の取れた社会実装を進める。その取組みの1つとして、今年4月にJEITAのスマートホーム部会が公開した「IoTプライバシーガイドライン」がある。消費者が安心してスマート家電を使えるよう懸念を払拭し、市場の拡大につなげる。国や地域を越えた連携や調和も大事で、AIガバナンスやDFFTなどは国際連携で取り組むテーマだ。

② デジタル課題解決の推進と社会への貢献。JEITAはグリーン×デジタルコンソーシアムの事務局を務めている。サプライチェーン全体のCO2の見える化をはじめ、データの共有・連携で課題解決できる分野が数多く存在する。企業1社での解決は難しく、仕組みづくりや仲間づくりが大切だ。JEITAには会員各社から共通課題が持ち込まれるため、リソースやネットワークをフル活用し、デジタル活用による解決を推進していく。社会のDX推進のため、幅広い企業と連携し国内外に発信していきたい。

③ 次世代の担い手育成への貢献。デジタル活用は常に進化しており、新しいアイデアや技術を生み出し、自ら変化させる柔軟性が求められている。その鍵を握るのが次世代の担い手だ。DXやグリーントランスフォーメーションの基盤を支えるデジタル技術の提供企業はもちろん、利用する企業や政府機関においても不可欠だ。意欲ある人がデジタル素養を、学び直しを含めできるよう会員企業と協力し機会を提供していく。その象徴が毎年秋に開催される展示会「CEATEC」で、デジタルソリューションはもちろん、それを縁の下で支える電子部品や半導体企業、ベンチャー企業、海外企業が一堂に幅広い製品やサービスを出展する。未来を切り拓く若い世代の、デジタルへの興味を促進できるよう主催者として積極的に取り組む。

 

こじま・けいじ
一般社団法人電子情報技術産業協会 代表理事 会長
(株式会社 日立製作所 代表執行役 執行役社長 兼 CEO)

略歴

1982年 3月 京都大学大学院 (理学研究科 )修了
2005年 3月 大阪大学より博士(情報科学)学位授与
1982年 4月 株式会社 日立製作所 入社
2000年 4月 システム開発研究所第三部長
2003年 4月 システム開発研究所情報サービス研究センタ長
2004年 4月 ユビキタスプラットフォームグループ インターネットプラットフォーム事業部副事業部長 2006年 4月 中央研究所組込みシステム基盤研究所長
2007年 10月 中央研究所情報システム研究センタ長 2008年 4月 中央研究所長
2011年 4月 日立研究所長
2012年 4月 執行役常務 日立研究所長
2014年 4月 執行役常務 CTO兼研究開発グループ長
2016年 4月 執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニットCEO
2018年 4月 代表執行役 執行役副社長
2021年 4月 取締役 代表執行役 執行役社長 兼 COO
2022年 4月 取締役 代表執行役 執行役社長 兼 CEO
2023年 6月 一般社団法人電子情報技術産業協会 代表理事 会長 就任
(2023年6月1日現在)