コロナ禍を経て、展示会ビジネスは大きな変革期にある。
そこで、日本の展示会を牽引するRX Japanの田中岳志社長に将来展望を語ってもらった。
ー これからも先頭を走る決意 ー
新オフィス”RX Central Station”移転への思い
今年4月、東京駅前に新たに竣工した東京ミッドタウン八重洲にオフィスを移転しました。新オフィスのコンセプトは、”RX Central Station”。日本最大のRX Central Stationである東京駅を目の前に、RX社員はもちろん私たちにかかわるすべての人がここに集い、未来に向かって出発していくという思いが込められています。
また、オフィス移転は、未来に向けた布石であり、”展示会業界の発展のためにも当社が先頭を切って走り続ける”、という私たちの決意でもあります。展示会業界は他の大きな業界と比較すると未だに社会に浸透していないため、良い人材が集まりづらいのが現状です。この現状を打破したい。2019年の社長就任後、コロナ禍ではありましたが、必要だと思うことを一つずつ取り組みチャレンジしてきました。この新オフィスの移転は私の考えを具現化した第一歩であり、これからの始まりなのです。
成長を求めて~変わる企業文化
従来の企業文化を変えることが目的ではありません。もっと良い会社にしたい、もっと業績を上げたい、そう願い実行し続ければ、企業文化は自然と変化していくものだと考えています。これまでも当社は常に業界トップを走ってきたし、私もその一翼として多くの展示会を手掛け、実績を重ねてきました。けれども私が社長に就任した時、これまでの業績を1+1=2、2+1=3…というような足し算の成長ではつまらないと思いました。
先が読めてしまうようなことを繰り返すよりも、新しいことに挑戦し、これまで以上の成長率に引き上げたい。そのためにも数ある業務は現場の社員に任せることにしました。私が現場に口を出せば、社員は指示待ちになります。最初は不安になりますが、思い切って任せていく。そうしてアドバイスに留めて、任せるようにしました。そうすることで、今では展示会の創り手である現場の社員が、責任をもって実行しています。展示会以外でも、実は今回のオフィス移転も、すべてを現場社員中心のプロジェクトチームに任せ、私自身も新オフィスオープンを楽しみにしていたほどです。
私の役割は、最終的に企業の成長を促し、次代にバトンタッチすることだと考えています。当社の事業活動で言えば、例えば承認ルートを簡素化し、意見が言いやすい雰囲気をつくる。あるいは評価制度や展示会を成功に導くモチベーションを促すなど、社員が働きやすい仕組みを作ることに全力を注いでいます。
ー 将来への投資を続ける意味 ー
来場者の変化を捉えて
私たちの生活を快適にするプラットフォームは広がり、ビジネス環境のみならず日常生活も便利になってきました。今後は人の行き来や情報伝達のスピードが2次関数的に増していくでしょう。
このような状況下、展示会を立ち上げ続ける当社は、半歩先を行かなければならない。求められるからプラットフォームを作るのではなく、われわれが事前に用意し、「皆さん、こっちですよ」というように呼び込む仕組みを提案し、受け皿になることが大切です。これをやらずに、ずっと同じテーマの展示会を続けていても同窓会のようになってしまい、やがて来場者はその展示会に行く意味を失ってしまいます。
受付回り~自動化で時間短縮に成功
10年前、私が責任者を務めていた展示会では、来場者一人当たりの平均受付時間が1分30秒もかかっていました。名刺2枚を持参した来場者が受付カウンターに来訪し、スタッフが招待券に名刺をホチキスでカチッ、もう一枚の名刺を来場者バッジホルダーに入れ、アンケート項目に記入がないとその場で記入してもらうという作業が生じ、入場待ちの行列ができていました。
行列は、来場者の時間を奪い、出展社の商談機会の損失につながります。仮に2時間しか会場に滞在できない来場者がいたとしたら、受付で先に20人が並んでいれば、30分も並ばなければいけない。すると25%のマッチング・ロスを引き起こす計算です。
この解消のために受付回りの自動化・デジタル化の開発を進め、ようやく実現しました。自動化は、受付時間の短縮のみならず、来場者のイライラによるトラブル対応も減り、現場の作業効率が上がったことは言うまでもありません。ただし、これはあくまで、時間の短縮化であって、全く満足はしていません。従って、一部展示会で導入開始していますが、現場で受付せずとも……
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