【インタビュー】ハイクオリティな 3DCG 技術で体験価値を上げる【SoVeC】

イベントが次々と復活し、肌感だけでも十分に人の戻りが感じられた2023年上半期。新型コロナの5類への移行に伴い、さらにリアルイベントの勢いが増していくことが予想できる。

この動きに伴って、オンライン・ハイブリッドイベントへのニーズや使い方も変化している。

SoVeCはARやVRなどのXR技術、ハイクオリティな3DCG技術を駆使し、デジタルコミュニケーション領域に関するソリューションを提供している。

上川衛代表取締役に同社が持つ技術と、イベント業界でのニーズの変化について聞いた。

(本記事は2023年5月31日発行 雑誌「EventBiz」特集】イベントのDX化とハイブリッド/オンラインイベントより抜粋した記事です)

コロナの収束とイベントの変化

 
─オンライン・ハイブリッドイベントのニーズの変化について感じていることはありますか?

コロナ禍ではリアルイベントの代替としてオンラインを実施したいというニーズが中心でしたが、現在は状況も収束に向かい、イベントはリアル会場での実施に回帰しており、オンライン展示会そのものに対する需要は落ち着いてきています。

しかし、コロナ禍の中でオンラインの価値はイベント業界に強く刷り込まれました。

長期間でイベントを開催できることや、遠隔地からアクセスできる点などは、オンラインイベントにしかない価値であり、イベントの主催者もオンラインイベントとリアルイベントを、使い道が異なるツールとして捉えているのではないでしょうか。

例えば、東京のターゲットに対してはリアル開催を行い、地域のターゲットにはオンライン開催を行うなど、両方のメリットを取れる形を採用するイベントも少なくありません。

運営のDX推進やXRコンテンツを活用したいというニーズも引き続き増加しています。このような状況下ですが、オンラインイベントに一番求められているもののはやはり“リアルに近いコミュニケーション”です。

いかにこれらを作り出すためのサポートをシステムで行えるかが重要だと考えています。

 

XR技術で新しい価値と体験を創り出す

 
─SoVeCのXRサービスの特徴、強みはどんな点でしょうか

われわれは街の風景とデジタルコンテンツが空間上で連携・作用し合う新しい体験を提供する次世代ARアプリ「XRCHANNEL」と、バーチャル空間でのイベントDXプラットフォーム「そのまま展示会シリーズ」という、2つのXR技術を使ったサービスを展開しています。

「XRCHANNEL」はスマートフォンのカメラを通し、ARコンテンツを特定のロケーションに高精細に映し出すアプリケーションです。

都市や空間の立体的に収集された地図情報を利用し、その空間ならではの高精細な3DCGを融合させ、新しい体験を創り出します。

これはデータベース化された3Dの地図情報や構造物の情報と、スマートフォンに搭載されたカメラ(将来的にはスマートグラスに搭載されるカメラ)を通して見ている画像を照合し、カメラの向き含む高精度な位置情報を特定する「VPS(VisualPositioningService)」という技術を使用しています。

GPSと比べて、より正確にユーザーが向いている向きや位置を特定できるため、数センチ単位で現実の風景と3Dのデジタルコンテンツの出現位置を一致させるような、細かいARによる演出が可能です。

そのため、さまざまな場所でそのロケーションの特徴を生かしたPRが行えます。

例えば、三越銀座店とその周辺の銀座4丁目交差点の空間で開催したクリスマスのイベントでは、三越銀座店の壁面から3DCGで緻密に制作されたな美しいシャンデリアが飛び出してきたり、壁面の内部に強大なクリスマスツリーが現れたりする、圧倒的な迫力で臨場感のあるコンテンツを制作しました。

3Dの空間情報に合わせて現実の場所にあるかのようにコンテンツを作り配置するため、別の角度から見ればコンテンツの別の表情が楽しめる点も特徴です。

われわれはCGで制作するコンテンツのクオリティも大切にしており、鉄道開業150年を記念して開催されたJR東日本のイベントでは、実際の鉄道車両を撮影しフォトグラメトリーという手法を使って高精細な3DCGの車両を制作、ARコンテンツとして線路上に本物の車両と見間違うほどのリアルな車両を展示しました。

ARならではの演出として、3DCGの車両を空中に浮かべ、下から車両を見上げることもでき、鉄道ファンの皆さまに喜んでいただきました。

「そのまま展示会シリーズ」は、WEBブラウザ上で展示会や企業のプライベートショーが行えるプラットフォームです。

操作の煩わしいアバターを使わずに、簡単で直観的な操作で会場を回遊でき、BtoBの交流に特化しています。よりリアルな展示会の風景をCGで作るというよりは、コミュニケーションがしやすい場の構築を目指しています。

出展者が自由にいつも展示コンテンツを入れ替えられるほか、来場者がどのブースに訪問し、何を見たかリアルタイムに確認できます。

加えてワンボタンでテキストチャットやビデオ会議のリンクの共有が可能で、商談がしやすい環境を整えています。

このように高精細なCG制作、フォトグラメトリー(3D復元技術)、3Dの空間設計などの技術を駆使し、ARとVRの両方を取り扱い、サービスとアプリケーションを提供しているのがSoVeCの大きな強みです。

双方を突き詰め新しいコミュニケーションを創出する

 
─今後のイベントのDX化についての考え、展望についてお話しください

「そのまま展示会」のサービスを開発した当初は、オンラインでのバーチャル空間こそが価値だと考えていたため、回遊性や視認性が良く、どんなブラウザでも閲覧しやすいサービスを作ることに専念していました。

しかし「そのまま展示会」などでオンライン展示会を利用するユーザーが本当に求めているのは、出展者に自社の課題を相談したり名刺を交換したりといったコミュニケーションを図りビジネスにつなげることであり、システムはそのゴールまで導けるものでなくてはなりません。

もちろんCGや洗練された空間の構築も必要ですが、まずは出展者や主催者、来場者すべてのステータスの方が使いやすく、コミュニケーションが生まれやすい場を創り出していく必要があります。

SoVeCがVRとARの両方の分野でサービスを展開している強みを活かし、今後はオンラインイベントとリアルのロケーションでの両方のDX化を後押ししていきたいと考えています。

オンライン展示会のサービスの開発はまさにイベントのDX化と呼ぶことができ、同様に空間を利用したARコンテンツは、空間に今までにない価値を付与するものであり、新たなイベント体験を提供するDXのアプローチといえます。

今後はこの二つのサービスを相互活用する機会も増やしていきます。
 

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