映像装置の研究開発を行うブライトヴォックスは昨年12月より、展示会やイベントを対象に、肉眼で全方位から映像体験ができるホログラフィックサイネージ「brightvox 3D」のレンタルを行っている。今回、その特徴や活用シーンについて話を聞いた。
3Dをバーチャルから現実へ
「SF映画の世界を再現したい」
―貴社の事業内容について教えてください
当社は2022年設立した会社です。元々はリコーの社内外統合ビジネスコンテストTRIBUS社内起業家チームで、2022年4月にカーブアウト(分離・独立)しました。
事業としては、円柱状のホログラフィックディスプレイ「brightvox 3D」の研究開発と、それを使ったイベントサービスの提供を行っています。基礎研究から製造までを一気通貫で行っているのが特徴です。
イベントサービス面でも運搬から設置・設営、補修までトータルでやっており、最近では経済産業省の「出向起業等創出支援事業」や、東京都の「未来のものづくりベンチャー発掘コンテスト」などに採択され、遊園地やアートイベント、サッカーイベントなどでも活用が進み、少しずつ注目度が高まっていると感じています。
―brightvox 3Dのコンセプトについて教えてください
分かりやすく言うと、SF映画でよく見かけるホログラム演出を現実でも可能にしようというコンセプトです。街中のいたるところに3Dのキャラクターや広告が浮かんでいるシーンなどは皆さん見たことがあるのではないでしょうか。
コロナ禍をきっかけに、最近ではバーチャル空間で開催されるイベントがすごく盛り上がっていて、仮想現実である「メタバース」が注目を集めたこともあり、アバターやバーチャルヒューマンなど魅力的な3Dコンテンツが数多く登場しています。それらの3Dコンテンツをbrightvox 3Dによってリアルの世界に持ってくることができれば、リアルな場のイベントは今以上に盛り上がると思っています。
3Dコンテンツをそのまま投影し
大人数が同時にコンテンツを体験
―3Dホログラムを投影できる装置は最近目にする機会が増えましたが、brightvox 3Dの強みはどこでしょう
3Dコンテンツをそのまま投影することができる点が強みだと考えています。従来の3Dホログラムの座標軸はX軸とY軸のピクセルで、3次元のものであっても一度2次元に変換する必要がありました。ところがbrightvox 3Dの座標軸はX軸とY軸に加えZ軸のあるボクセルになっていて、奥行きのある映像を表現することが可能です。
よくある裸眼立体システムの弱点として、正面から見るとしっかり3Dに見えるのに、少し横にずれると途端に3Dに見えなくなるという点があげられます。それに対し、brightvox 3Dが描く3D映像は上から見ても下から見ても、回り込んで見てもちゃんと3Dに見えるのが画期的です。
映像の向こう側も透過して見えるため、例えばアニメキャラクターのようなIPコンテンツを会場に登場させることにより、現実と一体化したような映像演出で盛り上がりを生み出すことが可能となります。
―活用シーンについて、具体的にお聞かせください
現在は展示会や遊園地に置かせていただき、効果計測を行っています。最も期待される効果はプロモーション効果で、それほど大きくない両手で持ち運べる程度のサイズでも、設置することで多くの方が足を止めて見入ってくれました。
似たような3D体験としてはヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着するXRがあり、視界いっぱいに広がる大迫力の映像による臨場感はほかの追随を許さないほどですが、数万人が訪れるような展示会やイベントではごく限られた人数しか体験できないのがネックです。brightvox 3Dならデバイスの装着が不要で、近くを通った人全員が体験できるという即時性を有しているのも強みです。
大規模言語モデルによって
3Dキャラとの対話を実現
―今後の展望についてお聞かせください
最近の面白い事例として、3Dアバター店員による接客というものがあり、大規模言語モデルを作り、音声認識を行うことで対話ができるというデモを制作しました。プリセットではなく、こちらの言葉に対し回答を生成しているので、3Dキャラクターと本当にコミュニケーションをしている実感を現実空間と同じ3D演出で体験することができます。
そのほかにもバーチャルタレントやeスポーツ、スポーツなど幅広い分野に対し、brightvox 3Dによる新しい体験を提案できると考えています。映像のサイズは現在高さ20㎝程度ですが、最近の調査でもっと大きいものや小さいものの需要があることも分かってきましたので、ニーズを見定めて最適なソリューションを提供していきたいと思います。