UXイノベーションカンパニーのボクシーズは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマ事業「シグネチャーパビリオン」の中で、アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエイターの河森正治氏が担当する「いのちめぐる冒険」にパートナーとして協賛する。その背景について、同社の鳥居暁社長に話を聞いた。
つくば万博での感動が原点
中小企業でも臆せず挑戦を
――ボクシーズの事業内容についてお聞かせください
鳥居 テクノロジーを駆使して「心に響くユーザー体験」を生み出し、社会課題を解決することをミッションに、サービス/プラットフォームの運営、システム開発、開発コンサルティングなどの事業を行っています。いかに優れた技術があっても、それが社会実装されないことには意味がありません。ボクシーズでは社会に受け入れてもらうべく、ユーザー体験(UX)に重きを置いたサービスやプラットフォームを展開しています。
設立は2006年で、受託開発をしながら、独自でプロダクトを開発して事業化の価値があるプロダクトは、専門の事業会社を設立していることが特徴です。2018年には自店舗のプリペイドを発行できるモバイルオーダー「Putmenu」を取り扱うプットメニュー株式会社を、2019年にはIoT電球よる見守り・防犯サービス「HelloLight」を取り扱うハローライト株式会社と、12言語対応の無料観光プラットフォーム「SpotTour」を取り扱うスポットツアー株式会社を、それぞれグループ会社として設立しました。いずれも社会課題の解決を目的としています。
――ボクシーズの強みはどういったところでしょう
鳥居 一般的なシステム開発会社と違い、社内にコンサルティング、企画、クリエイティブ、エンジニアリングといった専門部門を有しており、経営コンサルティングのような領域もこなせる点が評価されてきました。新規事業の立ち上げも積極的に行っていて、イメージ的には今後芽吹く可能性のある事業を育てていく「スタートアップスタジオ」のような感じです。
――大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」にはどのような考えがあり、協賛したのでしょうか
鳥居 大阪・関西万博に関わっている知人から、博覧会協会が広く協賛者を募っているという話を聞いたのがきっかけです。協賛者には誰もが名前を知っているような大企業が名を連ねており、当社のような中小企業に何ができるんだろうか……という迷いもあったのですが、挑戦してみたい気持ちが勝りました。
実は私は1985年に茨城で開催された国際科学技術博覧会(つくば科学万博)に家族で訪れたことがあります。当時はまだ10歳と幼くはありましたが、子供心に世界中からいろんなものや技術が集い、未来を見せてくれる光景に感動を覚えたものです。今にして思えば、それが私の事業の原点だったのかもしれません。
そんな私ですから、知人の話を聞いて「万博に関わってみたい」「今度は担い手として参加してみたい」という気持ちをおさえられなくなりました。中小企業でありつつも事業内容を評価していただく形で、協賛が決まった時は本当に嬉しかったです。
「自分たちが社会を良くする」
日本の魅力を世界へ届ける
――大阪・関西万博にどのようなことを期待しますか
鳥居 子供だった私がつくば科学万博で刺激を受け、大阪・関西万博に関わるようになったように、夢洲に訪れる子供たちに驚きと感動を与え、未来の担い手を育てる場になってくれることを期待しています。万博にはアミューズメントパークの楽しさとはまた違った、好奇心を刺激してくれる学びがあふれていますので、協賛者としてそれを支えていきたいと思います。
――今回の協賛は河森正治プロデューサーのパビリオン「いのちめぐる冒険」に対するものですが、そこに対する思いはいかがでしょう
鳥居 河森さんは人気アニメ『マクロス』シリーズなどの監督として有名ですが、地球と人間の共生という社会課題について深い考えをお持ちで、テクノロジーでそのことを伝えることに挑戦されています。ボクシーズのテクノロジーを駆使して社会課題を解決したいという理念とも共通しています。
すでに特設サイトと動画でパビリオンの世界観を広く発信していて、XRなどの最新の映像技術を使ったリアルな体験を打ち出しており、パビリオンの完成を想像するだけでもワクワクしてきます。
――大阪・関西万博に向けた取組みと展望をお聞かせください
鳥居 協賛の発表を受け、取引先などから期待の声をいただく機会が増えました。万博を共に創り上げるパートナーとして2025年に向けて、社員と共に事業に取り組んでいきたいと思います。
ボクシーズが中小企業でありながら協賛にいたったのは、ひとえに自分たちの力で社会を良くしたい、世の中に貢献したいという強い思いがあったからです。日本には421万の企業があり、そのうち99.7%が中小企業だと言われています。言い換えるなら、中小企業こそが日本を支えているのです。
大阪・関西万博という日本の素晴らしさを世界に発信していくまたとない舞台で、日本の中小企業の活躍を世界に示していきたいと思います。また、まだ大阪・関西万博に関わっていない中小企業に興味を持っていただけるような模範となるべく、引き続き邁進していきたいと思います。