【レポート】日本映像機材レンタル協会(JVRA)業務担当責任者会議 InfoComm / ISE 視察ツアー 世界の映像のトレンドと最新技術を報告

様々な物に“乗る”映像
菊地 ここから少しニッチな製品になっていきます。こちらのデジタル演台の写真は木村さんからのご紹介ですよね?

⑧ Podion社の演台

木村 はい。 Podion というメーカーの演台で、前にパネルが付いています。演台って、これ以上は進化のしようがなく、形状は変わらないものだと思っていましたが、LEDパネルが付くことで登壇者の名前やブランドロゴを表示できたりして、新しい演出につながっていくのではないでしょうか。
内部にパソコンやカメラが埋め込まれているタイプのデジタル演台もあり、学校などに導入すれば便利だと思います。

菊地 こうした製品は日本にもあったらいいのに、まだないですよね。

木村 日本では見たことはないですね。

菊地 日本のメーカーから株主総会用デジタル演台に市場参入してもらえるように期待しましょう。
そろそろISE についても紹介したいと思います。ISE が行われる施設は広大な会場なのですが、2階部分のセンターにずどんと、会場を串刺しにするように歩道が通っていて、行きたいホールで降りられる、まさに高速道路のような構造です。そのため人だかりをかき分けて会場を進む必要がなく、全体をスムーズに見られる大変行き来しやすい、よく考えられた会場です。
それではISE 視察チームの後藤さんにご紹介をお願いします。

⑨「Transparent OLED」

後藤 まずSamsung の透明な有機パネル「Transparent OLED」を使った展示が好印象でした。街中でみるような透明なショーウィンドーに文字やロゴを表示させています。液晶のためLED よりは少し鮮やかさが落ちますが、文字の表示にはまったく問題ないですね。

菊地 海外の展示会場ではよく見かけますが、日本の店舗ではまだあまり実用化されていないような気がしますね。残念なことに。

⑩ EPSON ブース

後藤  EPSON のブースでは、直径7.5mの傘にプロジェクションマッピングをしていました。2万lm のプロジェクターを6台使って投影しています。またAluvison ブースのミラーを使った錯視の演出にも驚きました。

石丸 一面からの視点からしか立体には見えませんが、映像演出の一つの提案です。立体視のために作られた中の映像がうまく、よく考えられています。

⑪ LG Electronicsブース

菊地 最後に、 LG Electronics社は毎回展示会のたびに人だかりができるような、大がかりな演出を行うブース構成ですよね。今回は動くLED パネルに映像が映し出されるデモンストレーションを行っていて人だかりができていました。

石丸 物理的に動くLED に映像を映す手法は、すでにタイムズスクエアでコカ・コーラ社がサインで使っています。ブースのデモはLED パネルが飛び出したり引っ込んだりの動きが滑らかになっていて、かなり制御が改善されていました。動きが少し滑らかになるだけで映像の浮遊感がまったく違うし、コンテンツの質が上がる。既存の演出ではあるものの、改めて面白さを感じました。

 

新しいラスベガスの象徴「Sphere」について
菊地 さて、今回InfoComm ツアーに行ったみなさんからのアンケートで、皆さん異口同音にインパクトを受けた、すごかったと書いてあったものがありました。

石丸 昨年9月にオープンした球形の大型アリーナ「Sphere(スフィア)」です。今回のInfoComm ツアーはこれを見に行ったといっても過言ではないです。高さ112m・幅157mで、内外の壁がLED ディスプレイになっています。外のパネルは1ドットがちょうど紙コップの底ぐらいの大きさで、おそらく200mm ピッチくらい。
中は360°全天周型で16Kの映像が映し出される劇場になっていいます。入場料は席種によって異なり、僕は2万円くらいの席で入りました。
今のところスフィアは球体建造物として、またLED パネルとしても世界最大。当然これに映像がアドオンされていますから、世界最大の映像表現でもあるわけです。

菊地 但木さん、中に入った感想はどうでしたか?

但木 一番上の座席に座ったのですが、かなり傾斜が急で怖かったですね。その傾斜から目の前のLED を眺めるような感じで、さらに映像も高精細で迫力がありましたよ。

菊地 その昔、僕たちの世代はエンターテインメントの世界は志す者は、エンターテインメントの街・ラスベガスに行けと教わってきたものです。
あの頃フリーモントストリートの天井のLED をVTR で見せてもらって、いつかはこの目で見に行きたいと思ったものです。これからはスフィアが、一度はこの目で見たいというラスベガスの象徴になるかもしれません。エンターテインメントの街として、その王者の座を、まだまだラスベガスは明け渡すつもりはないようですね。