「ツーリズムEXPOジャパン」展をより一層充実させるには① 寄稿・桜井 悌司(元ジェトロ監事・展示事業部長)

■1 はじめに
「ツーリズムEXPOジャパン2024」は2024年9月26日から29日まで東京ビッグサイト東館の1~6ホール(ホール7は、日本政府観光局主催のVISIT JAPAN トラベル&MICEマート)を使用し開催された。主催者は、日本観光振興協会、日本旅行業協会、日本政府観光局の3つの組織である。
国内旅行、海外旅行および訪日旅行商談会を一堂に集め、国内外に観光立国日本をアピールする日本最大の観光振興イベント。すなわち、インバウンドとアウトバウンドの2つの観光を推進するものである。会期は4日間で、最初の2日間はビジネスデーで、残りの2日間は一般来場者に開放されている。今年は、10回目の開催で、開催報告によると、来場者数、18万2934人、47都道府県、80カ国・地域、1384社、1624小間の参加があった。
この展示会は、日本の観光産業の発展にとって、極めて重要なイベントと言えよう。このレポートでは、本展示会の今後さらなる充実のためにどうすれば良いかを考えるものであるが、記事の内容は、筆者の個人的意見であることをあらかじめお断りしたい。


■2 ツーリズムEXPOジャパンとは
「ツーリズムEXPOジャパン」は、日本旅行業協会(JATA)主催の「JATA旅博」(1977年開始)と日本観光振興協会が主催していた「旅フェア」(1995年開始)の2つの展示会を2014年に統合し、新たに「ツーリズムEXPOジャパン」と改称したもので、その後、2017年から国際観光振興機構(JNTO、日本政府観光局)も主催者団体となった。インバウンドとアウトバウンド両方を睨んだ双方向の観光戦略を目指すという狙いがあったと思われる。  両展示会の合併前のデータをみてみよう。「JATA旅博」は、アジア最大級の旅の祭典と銘打っており、海外諸国の参加をメインとしている。「JATA旅博2013」は2013年9月14日~15日、東京ビッグサイト東1・2・3・6ホール(3万4360平米)で開催された。154の国と地域から730企業・団体が出展し、1353小間を数え、2日間で13万1058人の来場者があった。一般入場は、2001年の米国の同時多発テロによる旅行需要の落ち込みの喚起策として01年から始まった。  一方、「旅フェア」(1995年開始)は、国内最大級の観光総合見本市で、毎年国内を中心とした150を越える地域・企業・団体が参加し、会場で各地域の最新観光情報を提供し、来場者に国内観光の魅力を発信する場となっていた。「旅フェア2013」は、サンシャインシテイの展示場で開催され、120地域の/企業/団体・259小間の出展があり、来場者数は9万3099人とされている。展示会場の規模からみると比較的小規模な展示会であったと理解できる。  この2つの展示会が、将来の旅行需要に対処し、合併し、さらに国際観光振興機構(JNTO、日本政府観光局)が、共催団体となった2017年以前より、とりわけインバウンド部門の強化を図るため、商談会の開催やUNWTO(国連世界観光機構)事務局長などの幹部招聘など積極的に関与することになった。


■3 「ツーリズムEXPOジャパン」の10年

ツーリズムEXPOジャパンが2014年に開始されて以来、コロナによる2021年の中止を除き、10回開催された。表1の「ツーリズムEXPOジャパンの過去10回の実績」では、開催場所、来場者数、都道府県の参加数、海外参加国・地域、参加企業・団体数を記入している。表2の「ツーリズムEXPOジャパンの過去10回のテーマと主要イベント」では、各界のテーマと報告書に書かれた主要イベントを紹介している。

表1 ツーリズムEXPOジャパンの過去10回の実績

場所 来場者数 都道府県 海外参加国地域数 参加企業・団体数
2014 東京 157,589 47 151 1,129(NA)
2015 東京 173,602 47 141 1,161(1,557小間)
2016 東京 185,844 47 140 1,181(2,100小間)
2017 東京 191,577 47 130 1,310(2,130小間)
2018 東京 207,352 47 136 1,441(2,257小間)
2019 大阪 151,099 47 100 1,475(1,985小間)
2020 沖縄 24,174 28 30 285(NA)
2022 東京 124,074 47 78 1,018(1,215小間)
2023 大阪 148,062 45 70 1,275(1,442小間)
2024 東京 182,900 47 80 1,384(1,624小間)
2025 名古屋



■4 「ツーリズムEXPOジャパン」の10年から考える
表1、表2をみて感じたこと、考えたことを下記に紹介する。  最初に断っておきたいのは、この10年の間には、観光産業の発展にとって大きな阻害要因となる世界レベルで様々な出来事があったことである。2000年初めにおこった新型コロナウイルスの蔓延であり、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻であり、2023年10月のパレスチナ・イスラエル戦争である。これらの出来事も踏まえた上で、いくつかの点において問題点、疑問点、課題等について考えてみよう。

(次ページへ続く)