「ツーリズムEXPOジャパン」展をより一層充実させるには① 寄稿・桜井 悌司(元ジェトロ監事・展示事業部長)

 ◆展示会の規模の推移
この展示会のキャッチフレーズは、「世界最大級 旅の祭典」となっているが、世界の観光展示会に比較して規模が小さいと思われる。世界の有名な観光展示会をインターネットで調べると、ITBベルリン、MITT Moscow、IMEX America、IFTM Top Resa(パリ、ITB Asia(シンガポール)、ITTM World(バルセロナ)、BIT(ミラノ)等があげられる。1990年代の半ばに筆者は3年4か月、イタリアのミラノに滞在し、毎年BITを楽しみながら見学したことがある。現在東京ビッグサイトで開催されているツーリズムEXPOジャパンは東館1~7ホールを占めているが、総面積は、6万3000平米である。BITの正確な展示面積の詳細な情報は持ち合わせていないが、おそらく3~4倍の規模であったと記憶する。したがって、世界最大級と言えば、誇張になるので、他のキャッチフレーズを改めるべきであろう。
日本の政府関係者、日本政府観光局の責任者、日本旅行業協会(JATA)や日本観光振興協会の責任者、その他観光関係者は、過去に世界の代表的観光展示会を何度も訪問されたことがあると思われるが、一度、チームを組んで世界の主要な観光見本市を訪問し、「ツーリズムEXPOジャパン」が学べることがあるかという観点から徹底的に取材し、今後の発展に役立てることが望まれる。
過去10回の推移を見ていると、コロナを考慮に入れても伸び悩んでいるという印象である。2018年がピークと言えよう。都道府県47、136カ国・地域(2014年は151カ国・地域)、1441社(2257小間)、来場者数20万7352人であった。それ以降は、コロナの影響や開催地を大阪や沖縄に移転させたこともあり、比較が困難になっている。22年と24年は東京で開催されたが、依然としてコロナの影響を受けていることが理解できる。  展示会は総じて規模が大きくなればなるほど主催者の収益が増加するし、出展者や来場者にとって魅力的になりうる可能性を秘めている。  2つの戦争は、今後とも続くと思われるが、コロナについて一段落しているので、今後の展示会の活性化・充実を望みたい。主催者も24年を「旅」の完全復活元年としている。

◆展示会の地方展開
展示会の地方への展開は、総じて国の地域振興にも、日本の展示会産業の発展にも望ましいことである。しかし、主催者は、同時にクライアントである出展者や来場者、とりわけ海外出展者や来場者の立場・利害を考慮する必要がある。2014年から2018年まで一貫して東京で開催されてきたが、2019年、大阪、2020年、沖縄、2023年、大阪で開催され、2025年には、名古屋で開催される予定という。東京以外での開催については、一度アウトバウンドの対象になる外国パビリオンの意見も聞いてみるべきであろう。
開催地の決定のルールが今一わからないが、今後は、東京開催は2年に一度の開催で、次回は、2026年になるのであろうか? 大阪での開催は、19年の後は2023年と4年後となっている。海外からの出展者の立場で考えると、現状のようにルールのわからない主催者のやり方だと、日本市場へのアプローチ戦略を立てようがなく、困惑するということになろう。
方法としては、下記の3通りが考えられるが主催者には明確な指針を決定していただきたいものだ。
①毎年東京で開催するが、加えて地方でも開催する。これが理想的。
②東京は2年に1回開催し、その間に地方での展開を図る。ただし、観光展の性格からみて、大都市に限定する必要がある。その場合もルールを決め、クライアントの立場も考慮することが大切である。
③従来通りで特にルールを決めずに各地で開催する。最悪の選択かもしれない。

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