ビッグサイトサービスは、「イベント清掃、廃棄物の収集・運搬」「レンタル事業」「サービスコーナー・ビジネスセンターの運営」など、東京ビッグサイトの利用者に様々なサービスを提供している。
また、清掃業務については東京ビッグサイトだけでなく、東京・千葉・神奈川で広く事業を展開しており、近年は積極的に新規の案件も手掛けている。
今回は代表取締役社長の木村信夫氏に、同社の事業と今後の展望について話を聞いた。
(本記事は見本市展示会通信(1月15日号)に掲載された内容です)
―これまでの経歴、経緯について
この業界へ足を踏み入れたのは1985年です。縁あって(株)東京ビッグサイトの前身会社の一つである(株)東京国際貿易センターに入社しました。
東京国際貿易センターは晴海見本市会場の運営管理を行う会社で、入社当初は施設管理を担当し、その後、子会社に出向して売店、飲食店の運営や会議室サポート業務など付帯業務全般を担当しました。出向終了後は東京国際貿易センターに戻り、晴海見本市会場の展示ホール営業と総務に携わりました。
主に担当した後、2022年4月に現在の(株)ビッグサイトサービスにお世話になり今に至っております。
―幅広い業務に携われてこられたのですね
どの業務についても楽しい部分、大変な部分がありましたが、こうやって振り返ってみると、やはり営業業務の時はスケジュール調整など難題の解決にあたり、業界の方々に助けていただいたという記憶は今も大きく残っております。
営業を通していろいろな人と接することができたということが自分にとって良い思い出であり、宝だと思っています。
―ビッグサイトサービスの事業について伺えますか
当社事業は大きく分けて二つの事業があります。
一つ目は「イベント清掃、施設清掃事業」で東京ビッグサイトや都内で開催されているイベントの清掃、東京ビッグサイトや隣接している有明パークホテルの施設清掃です。
二つ目は「展示会場での付帯事業」です。清掃事業では、環境負荷の削減と省力化を考慮した最新の清掃機器の導入や質の良い清掃を行うため、ビルクリーニング技能士の資格取得など、積極的に取り組んでいるところです。
清掃機器では豊洲市場で使われているターレ(バッテリー駆動式運搬車)の導入を決定し、清掃ロボットについても既に実証実験を終わらせ、今年中には有明GYM―EXで運用を開始する予定です。
また、当社は一般廃棄物・産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しており、安心して清掃業務を発注していただけると思います。因みに私も年に一回研修・試験を受けさせていただいております。
そして二つ目が「付帯事業」です。付帯事業では、サービスコーナーやビジネスセンターの運営から作業用フォークリフト・高所作業車・映像機器・携帯電話等のレンタル、臨時通信回線サービス、共通食事券の発行、ケータリングなど様々な事業を展開しております。
特に最近のイベントでは映像配信やゲーム関連イベントが増えていることに伴い、臨時通信回線サービスの需要が高まっているように感じます。
―2025年における課題は何でしょうか
これは当社だけの課題ではないと思いますが、「いかに業務効率化と人材育成を図るか!」ということを常に心がけています。
〝人手不足〞や〝物価高によるコストの高騰〞というのは業界全体の大きな課題だと思いますし、特に当社事業の殆どは人がいないと成り立たないものばかりです。これらの課題に対処するためにも業務の効率化と人材育成は急務であると考えています。
―ビッグサイト以外での業務も手掛けられているのですね
先ほど申し上げたとおり、当社は東京・千葉・神奈川の廃棄物収集運搬業の許可を取得しているので、幕張メッセでのイベント清掃や廃棄物収集運搬、パシフィコ横浜のブースから排出される産業廃棄物の処理や都内で開催される各種イベントの清掃や廃棄物収集運搬なども対応させていただいております。
―貴社の強みは
当社は晴海見本市会場のイベント清掃、施設清掃事業を行うため、1966年に設立した(株)東貿クリエイティブ(旧晴海光産)と展示会付帯事業を行うために1995年に設立した(株)東貿サービス(現ビッグサイトサービス)が2004年に合併した会社で、イベント清掃や展示会場での物販、飲食店営業、会議室サポートなど長年積み上げてきた実績とノウハウは当社の大きな強みの一つと思っています。
また、当社は東京ビッグサイト内に事業所がありますので、急な要請に対しても柔軟に対応できると考えておりますし、(株)東京ビッグサイトから転籍した社員もおりますので、会場側の経験も活かしたいろいろなサポート体制が取れるものと思っています。
―近年、イベント清掃において何か変化は感じますか
清掃に関しては3つの変化を感じています。
先ず一つ目は年々減少するゴミの量です。昔の展示会ではブースの造作は、木で製作するのが一般的で会期が終了すれば全て産業廃棄物として処分され、膨大な量の廃棄物が排出されていましたが、現在は再利用可能なシステムパネルが普及したことにより廃棄物の削減に大きく影響したと思います。
また、昨今のデジタル化に伴い、ペーパーレス化されていることも要因の一つだと思います。
二つ目は安全性の向上です。日本展示会協会安全対策委員会(当社もメンバー)と展示施設が協力して安全性確保を協力に推進していただいた結果、当社作業員のヘルメットや安全靴の着用と安全確認作業が徹底され、安全性が向上いたしました。
三つ目は機械化の推進です。人材確保が困難なところ、限られた時間の中で会場内を清掃して返却しなければなりませんので、効率的に作業を行うためにはより一層の機械化が必要と感じています。
―コロナ禍を経て環境の変化は感じますか
展示会では2023年に5類感染症に移行したことにより、展示会への出展を控えていた企業が展示会に戻ってきているようで、会場内の賑わいも相当上がってきているように思いますし、当社の各種事業につきましても徐々に慌ただしくなってきたような気がします。やはり、最新の技術を直接見て、触って、商談するというスタイルの必要性を改めて実感しています。
そして社内では、体調に不安を感じたら出社しない、させないということを心がけています。特に二次感染の防止という部分には以前より気を付けるようになりました。
―経営の上で大切にしていることや意識されていることはありますか
当社は清掃と付帯事業を柱としている会社ですので「安全」「安心」「快適」。この三つを特に意識して業務に当たっています。
安全性の確保やお客様が安心して業務を委託できるよう確認作業の徹底や社内研修を積極的に推進することや東京ビッグサイトに来場する皆様が快適に施設を利用できる環境づくりというものを意識しております。
そのためにも常にアンテナを張り巡らせ、業界関係者の方との情報交換が大事と考えています。
―長くお仕事されてきて、特に印象に残っている出来事をお伺いできますか
晴海見本市会場で経験した出来事で二つばかり紹介したいと思います。
一つは「東京モーターショー」です。
1959年の第6回から晴海見本市会場で開催されたのですが、来場者の多さに圧倒されました。終業後、有楽町までバスを利用するのですが晴海通りが渋滞し、有楽町に到着する時間が全く読めない日は、銀座まで〜分かけてよく歩きました。私だけでなく来場者の方も結構歩く方がいて、その道中にある月島や勝どき辺りで食事したという声も聞き、地元飲食店への経済波及効果もあったんだなあと感じました。
二つ目は、晴海見本市会場とインテックス大阪で同時開催された「コミュニケーションカーニバル夢工場」も衝撃でした。
夏休みシーズンに空前の規模で開催されたイベントで東館(ドーム館)の内側にスクリーンを張り、ドームスクリーンには祭の夜OROCHIが上映され、観客は床に横になった状態で映画を楽しみ、スーパーゲームZではCCDカメラを搭載したラジコンカーを運転するアトラクションや東京会場と大阪会場で綱引きを行うなど、当時の先端技術を用いたイベントに驚かされました。
約1か月半の長期開催でしたが毎日会場内は来場者で溢れかえり、120分、180分待ちの行列が各所で発生していました。当時、会場内を歩いていると主催関係者と間違われ、ご意見を賜ることも多かったので、なるべく会場外を歩くようにしたことを思い出します。
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―今後の展望などをお聞かせください
ビッグサイトサービスの元となった2社(東貿サービスと東貿クリエイティブ)には過去出向した経験があり、東貿サービスでは飲食店の営業も行っており、お店が忙しい時には蝶ネクタイを締めて接客対応なども行っていました。
また、東貿クリエイティブではイベント清掃の営業を担当していたので毎日のように主催者様を訪問させていただき、いろいろなご意見、ご希望を賜りながら業務を行ったという思い出があります。
まさに現在のビッグサイトサービスは展示会関係者皆様に育てていただいたという気持ちです。
今後、展示会産業の中でお役に立てるよう親会社である(株)東京ビッグサイトと連携し、ご利用者の皆様に喜ばれるような新たなサービスなどを提案させていただきたいと思いますので、引き続き関係者皆様のご支援、ご指導を賜れれば幸いです。