3月15日・16日の2日間、万博記念公園(大阪府吹田市)で「大阪万博55周年記念フェスティバル ツナグフィルム1970」が開催された。主催は大阪府で、演出・脚本は中尾周統氏、企画・制作はシムディレクトが手掛けた。本イベントは1970年の大阪万博の会場にタイムスリップするという設定のイマーシブシアター(没入型演劇)で、AR技術を活用しながら実際の万博記念公園内をツアー形式で巡るというもの。
1970年の大阪万博へ「歩いて」タイムスリップ
30人ほどの参加者が公園内の太陽の広場前に集合し、ツアーがスタートした。本イベントの特性上、大人数での実施は難しいが、それゆえ演者と観客の距離も近い。各回とも定員に達し、期待の高さがうかがえた。演者たちはすでに場に溶け込み、ツアーの流れの中で自然に物語が始まっていく。物語の主人公は2025年の現代から1970年に迷い込んだという設定で進行し、観客は1970年の雰囲気を感じながら、徐々に物語に引き込まれていった。
本イベントの特徴は、実際に歩くこと。公園内の各ポイントを巡りながら、かつてこの場所に存在したパビリオンをARを通じて見ることができる。スマートフォンをかざすと当時の建築物が画面上に表示され、現実の風景と重ねて見ることができた。視覚的に演者たちの舞台と連動し、物語の世界を補強する役割を果たしていた。
悪天候。でも、なぜか楽しい
いきなり舞台に放り込まれるのではなく、案内されながら少しずつ世界観が広がっていくため、誰でも違和感なく物語に入り込める。移動しながら展開するストーリーは、ただの歴史解説ではなく、当時の万博の情報をエンタメとして楽しみながら学べるかたちになっていた。
また当日はあいにくの天気で、小雨と風が吹く中でのツアーとなった。参加者は運営スタッフから配られたカッパを着て、公園内の約1㎞のコースを歩くようすは、なかなか大変そうにも見えたが、表情は明るかった。演者たちは天候に応じたアドリブを交えながら進行し、悪天候による影響さえも舞台装置のひとつとして物語を展開していた。
イベント運営に活かせるアイデア
屋外イベントには天候リスクが常につきまとう。悪天候は本来ならマイナス要素だが、ツアー形式やイマーシブシアターという構造があったことで、その影響を軽減できていたと感じた。天候の影響も含めて「その日、その瞬間にしか味わえない体験」になったこともライブイベントならではの魅力だろう。
さらに今回のイベントと連動し、2025年9月16日・17日に、大阪・関西万博の会場である夢洲で「大阪博企画展(仮称)」が実施される。具体的な内容は後日発表されるが、デジタル技術を駆使し、1970年万博の雰囲気を再現する展示が予定されているようだ。