2013年の展示会、3大特徴からみる出展トレンド予想

2013年、国内で開催を予定している展示会は、608件にのぼることがわかった(出典:「2013見本市展示会総合ハンドブック」※)。この件数を、過去実際に開催した数と比較すると、前年比16.9%増・一昨年比21.6%増と右肩上がりになっている。

 

件数については、主催者へのアンケート調査で回答のあったもの、公式webサイトを開設しているものなどをカウントした。前提として、1.商談性の高い展示会、2.企業単独のプライベートショーは除くという条件のもと、把握した数字である。なお、同会期・会場で開催している展示会(以下同時開催展と表記)は、総称ではなく個別の名称ごとに、1件とカウントしている。特別展示コーナーなどはカウントしていない。

 

これを踏まえ、2013年の開催状況を詳しくみていくと、件数上昇の要因となる特徴は、以下の3つに集約される。

 

1. 細分化

2.  首都圏外での地域開催

3.  共催による新規展の立ち上げ

 

 

2013年開催増の要因1

細分化

 

新規展示会のなかでも、総合展の構成展示会として、または同時開催展として新たに加わったものは、次の通り。

-「クルマのITソリューション展」(1/16~18・東京ビッグサイト、「オートモーティブワールド」内)

-「東京デザイン照明展」(1/16~18・東京ビッグサイト、「ライティングジャパン」内)

-「ガールズジュエリー東京」(1/23~26・東京ビッグサイト、「国際宝飾展」等と同時開催)

-「Neo Ceramics 先端セラミックス&機能性ガラス」、「先進印刷技術展」、「試作・受託加工展」

(1/30~2/1・東京ビッグサイト、「nanotech」と同時開催)

-「マーケティング・テクノロジーフェア」(2/27~28・サンシャインシティ コンベンションセンター、「通販フェア」と同時開催)

-「国際風力発電展」(2/27~3/1・東京ビッグサイト、「スマートエネルギーWeek」内)

-「食品&飲料PB・OEMビジネスフェア」(4/3~5・東京ビッグサイト、「ファベックス」と同時開催)

-「メディカル&イメージングEXPO」、「宇宙・天文光学EXPO」(4/24~26・パシフィコ横浜、「OPIE’13」内)

-「通販ソリューション展」(5/8~10・東京ビッグサイト、「Japan IT Week春」内)

-「洋菓子素材EXPO」(5/15~17・東京ビッグサイト、「ifia JAPAN」内)

-「不動産投資EXPO」(5/24~26・東京ビッグサイト、「朝日住まいづくりフェア」と同時開催)

-「スマートコミュニティ展」、「植物工場・スマートアグリ展」、「次世代自動車展」(5/29~31・東京ビッグサイト、「スマートコミュニティJapan」内)

-「工場の近代化展」(9/25~27・東京ビッグサイト、「センサエキスポジャパン」と同時開催)

-「スマートハウス・エコハウス展」(10/23~25・東京ビッグサイト、「Japan Home & Building Show 2013」内)

 

 

 

クルマの電子化、電動化、軽量化の技術が集まる専門家向けの「オートモーティブワールド」に新設した「クルマのITソリューション展」には、車載情報通信機器・モジュール、ITS関連機器、ヒューマンマシンインターフェース、テレマティクスサービス等が集まる。クルマがインターネットに常時接続する「コネクティッド・ビークル」の普及に伴い、クラウドやSNS、M2MといったITソリューション・サービスのニーズの高まりを受け、展開。

 

「ガールズジュエリー東京」は、20~30代向けジュエリー、ハイアクセサリーの商談のための展示会で、年代別の嗜好を取り入れた。

 

応用分野に広がりをみせるセラミックでは、環境・エネルギー、電子エレクトロニクス、構造材料、生体材料分野などにフォーカスを当てた「Neo Ceramics」が、また、紙への印刷から3D・偽造防止印刷、加飾成形など高付加価値な表現、より環境にやさしい印刷を実現する技術、工業分野への印刷技術応用へと進化する「先進印刷技術展」が、そして、機能性フィルムや部材を生み出すために必要な加工技術を専門に提供する企業が集まる「試作・受託加工展」と、3つの新しい展示会が同会期にお目見えする。

 

「マーケティング・テクノロジーフェア」は、イギリスなど世界5か国では「TFM&A」としてすでに展開しているもので、デジタル、データベース、CRM、オンライン、ダイレクトの5つのカテゴリーにおける最新のマーケティングソリューションとマーケティング手法を紹介する。

 

 

「食品&飲料PB・OEMビジネスフェア」は、委託先と受託先を結ぶ食品と飲料に特化した展示会。

 

「メディカル&イメージングEXPO」は、光技術の「レーザーEXPO」の同時開催展。医療や福祉技術の分野においてはエレクトロニクス技術やロボット工学、IT技術等との融合による『メディカル・フォトニクス分野』が確立し、多種多様な先進的技術・装置・デバイスが開発されている。「宇宙・天文光学EXPO」は、「はやぶさ」の快挙をはじめ日本人宇宙飛行士たちの活躍、「すばる」から届く高精細な画像など、宇宙・天文光学への関心の高まりを受け新設されたもので、曲率センサー・シャック・ハルトマンセンサ・アクチュエータ・赤外線画像検出器・CCD検出器などの先端技術が出品される予定。

 

「通販ソリューション展」は、11ある「Japan IT Week春」の専門展のうちの一つ。

 

「洋菓子素材EXPO」は、乳製品・油脂・チョコレート・フルーツなど、洋菓子素材や製造技術関連が集まる専門展示会。昨年はベーカリー素材EXPOを初開催しており、今年から洋菓子も専門展として加わった。

 

「スマートコミュニティ展」、「植物工場・スマートアグリ展」、「次世代自動車展」は、次世代エネルギーがもたらす新しい街づくりの総合展示会「スマートコミュニティ展」の構成展示会。

 

「工場の近代化展」は、工場の誘致から地震災害対策技術、エネルギー、水、環境、生産管理まで、工場建設に係る最新情報を一堂に集めた展示会。

 

 

 

2013年開催増の要因2

首都圏外での地域展開

-「東北/防災・減災ソリューションフェア」(2/27~28・夢メッセみやぎ)

-「イベントJAPAN九州」(5/14~15・福岡国際会議場)

-「素材市場(大阪会場)」(5/29~30・インテックス大阪)

-「素材市場(名古屋会場)」(7/3~5・ポートメッセなごや)

-「関西高機能フィルム展」、「関西高機能プラスチック展」(10/2~4・インテックス大阪)

 

「イベントJAPAN九州」は、2008年の東京、2012年の北海道に続き、開催される地域展示会。

 

「素材市場」は、金属・プラスチック・セラミックス・複合材料分野の素材を扱う展示会。名古屋と大阪で初開催される。

 

「関西高機能性フィルム展」と「関西高機能性プラスチック展」は、4月に東京で開催されている展示会の大阪版。

 

2013年開催増の要因3

共催による新規展の立ち上げ

 

①のニーズごとに細分化された展示会とも②の首都圏外での地域開催展示会とも異なるタイプの、共催による新規展示会が立ち上がっているのも、近年の傾向と言える。2013年は、以下の2展が挙げられる。

 

 

-「ジャパンアミューズメントエキスポ」(2/15~16・幕張メッセ)

-「HAPPY MAMA FESTA」(3/15~17・ナゴヤドーム)

 

「ジャパンアミューズメントエキスポ」は、これまで「AOUアミューズメントEXPO」を主催する全日本アミューズメント施設営業者協会連合会と、「アミューズメントマシンショー」を主催する日本アミューズメントマシン協会がタッグを組み初開催する展示会。

 

「HAPPY MAMA FESTA」は、実行委員会による主催で、構成団体は中日新聞社、テレビ愛知、ナゴヤドームの3者。“ママの笑顔を増やすプロジェクト”を推進する日本財団と共催し、ママプロジェクト「ママと!」を進めるよしもとクリエイティブ・エージェンシーと企画協力して初開催するママイベントとなっている。

 

出展トレンド予測

 

例年、展示会は1年間に20件前後の割合で新たに誕生しているが、2013年は28件とこれまで以上に多くの新規展が開催される。

 

各新規展示会の名称を斜め読みすると、進化する技術に呼応して、または新たに注目を集める分野にフォーカスしているものなど、業界・時代の旬なキーワードを知ることもできる。

 

また、前文で開催増の特徴として挙げた「細分化」の傾向には、出展者・来場者のニーズの専門性の高さが伺える。数年前までは、○○総合展やコンピュータ展など大きな括りでの単独開催であったものが、××専門展やアプリ開発支援技術展のように明確化され、区分されるようになった。

 

こうした動きは、一つには、参加企業の出展姿勢に変化がでてきているからではないだろうか。業界で会社のブランドをPRするプロモーション型の出展の場合には、その展示会の規模自体の大きさが指標となるが、ビジネス商談型の出展の場合には、商機につながる出会いや実際の商談の数などの質を指標とする。もともと展示会は、事前にターゲットが絞られているメディアとして活用されてきたが、セグメントがより細分化された最近の展示会では、マーケティングツールとしての要求がさらに高まってきているとも言える。

 

今年で3回目を迎える「焼肉ビジネスフェア」は、外食産業のなかでも焼肉業界に特化した専門展示会。出展対象は、食肉、サイドメニュー、アルコール/ソフトドリンク、たれ/調味料、水産物/農産物、デザート/スイーツや、焼肉ロースター/コンロ、店舗設備/ユニフォーム、開業支援/Webサービスなど、食材やメニュー開発関連、繁盛店に繋がるハード・ソフトの提案など、いずれも焼肉店の経営や開業を検討中のオーナーにとって必要な情報がコンパクトにまとまっていた。

 

その出展者に話を聞くと、同展以外も展示会には「ファベックス」や「ホテレス(国際ホテル・レストラン・ショー)」など、いわゆる外食総合展にも参加の予定だという。焼肉業界で長い実績をもつ酒造メーカーの出展者は、「業界が長いからブース来訪者に既存顧客さんも多いのが専門展示会。だからこそ、これまで卸してきたブランドとは違う新規商品や、既存ブランドの新しい飲み方などを提案すると驚きの声を聞くことができます。総合展の場合には、専門展とは違う角度の新規顧客と出会えるのが魅力です」とそれぞれの違いについて、こう話す。また、店舗のPOS関連システムを手がける別の出展者(第1回目から連続出展)は、「焼肉ビジネスフェアの場合は、来場者であるオーナーのもつ店舗が3軒以下のところが多いため新規さまであればスモールスタートでの導入を、既存のお客さまであればシステムの増築を勧めるなどしています。一方、ホテレスの場合には、チェーン店など比較的規模の大きい店舗をもつ来場者が多いので、システム一括をプレゼンテーションするんです」と、提案の方法を変え、展開している。

 

マーケティング戦略では、次の4つの順にむずかしくなると言われるが、自社製品の販売数や自社ブランドの浸透度を把握し、どのターゲットに向けて打って出るのか、展示会の来場者の属性を踏まえ、上手に活用する出展者がふえてきている。

 

1.  既存顧客に既存製品を売る(市場深耕戦略)

2.  既存顧客に新規商品を売る(顧客内シェア拡大)

3.  新規顧客に既存商品を売る(市場拡大)

4.  新規顧客に新規商品を売る(新市場開発・多角化)

 

最近、企業のマーケティングツールとして台頭してきているソーシャルメディアとの相性の良さも指摘されるリアルなコミュニケーション“展示会”。細分化され、選択肢もふえてきたいまこそ、もう一度見直し、積極的に模擬市場で実験してみてはいかがだろうか。

 

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