MPIジャパンは5月27日、六本木アカデミーヒルズで「MPIジャパン5月度セミナー」を開催した。
今回は(株)ホットスケープ代表取締役の前野伸幸氏が「ホットスケープの挑戦~企業の求めるMICEを実現するイベント・マネージメント力」と題して、イベント運営や施設のコンサルティングの経験から、イベントの成功や施設の反映へのアドバイスやイベント業界発展への提言を行なった。
講演に先立ち山本牧子会長が「トリップアドバイザー」の世界の主要都市ランキングで東京が高い評価を得ていることや、開催を控えていたオフサイトミーティングを再開しているという自身の経験を交えて、日本MICE復調の兆しが見えていると語った。また、浅井名誉会長は、会員外の参加が多かったことから、あらためてMPIの活動内容を紹介した。
前野氏は自社の、(1)イベントをつくる仕事と(2)施設運営とコンサルティングの2つの事業について、大手主催企業との取組みで得たノウハウやアドバイスを語った。
(1)イベントをつくる仕事
主催企業から広告代理店、イベント企画会社を経て制作会社に依頼されるという既存のイベント業務受注の流れから脱却し、直接主催企業から受注する形をとっている。イベントをつくることが仕事ではなく、企業の問題解決を自らの業務と捉えて、その手段としてイベントを活用することもある、という考え方を明かした。そのような関係を構築するための主催企業との価値共有には、自社の独自性、優位性、提供できる価値を明示できることが必要とした。
担当1名がイベントを成功させるためのジョブデザインを行ない、すべてのプログラムについて責任を担うワンストップ体制。自社で140人にのぼる登録スタッフを抱える運営力というホットスケープ社の2点の強みとし、その背景について説明した。
(2)施設運営とコンサルティング(顧客と施設をつなぐ力)
主催者に代わり会場を選定したり、主催者が探してきた会場もホットスケープ社がチェックしてから契約するなど、顧客との信頼関係を築かれている。そのために、同社では具体的な評価基準を策定し、主催者が望むイベント内容と会場機能とのミスマッチをなくす努力を欠かしていない。
前野氏はプランナーの視点から施設管理者に下記を提案した。
1. 詳細で実態と違いのない図面の提供
平面図、断面図、天井図、電源図などをHPでアップすることで、プランナーの手間を省くこと。また映像機器の設置計画や会場設計に影響するシャンデリアや突起物、また搬入機器の置き場所やバックヤードまで含めた図面がプランナーに大きく役立つ。
2.搬入条件の明確化
イベントに多くの機材を持ち込む際には多くの業者が別々に機材を持ち込むことが多い。連絡の齟齬を防ぐためにも詳細のマニュアルの設定が望まれる。
3.回答のスピード
空き状況の確認(仮おさえルールの明確化)、レイアウト図の提供、メニューの提案、見積り(料金設定の明確化)など、基準となるものを作成することで、施設営業者の早いレスポンスが必要。プランナーが主催企業に提案するタイミングに合わないことも多い、と現状を指摘した。
また、ダブルブッキング、顧客の要望を断るだけで代替案をださない、警備員・担当の態度が悪い、搬入出に時間がかかる、荷捌場が狭い・有料、エレベーターが小さい、図面と実寸が違いすぎる 、管理費を計上しているのにスタッフが立ち会わない、機材の使い方をだれも解らない 、営業と打ち合わせたことが現場に伝わっていないなど、利用者から施設側へのクレームの具体例をあげた。しかし、主催者側への配慮からこのようなクレームを施設側に伝えることは少ないと実情を語った。またクレームの内容を分析し、7割が人的問題にあり、施設管理者の努力で改善できると話した。
最後に、どのイベントにも最適といことはなく、タイプごとに適した会場がある。自社施設の強みと弱みをプランナーにわかりやすく伝えることで、会場のミスマッチを減らせる。それが業界全体の最適化につながると、施設関係者にエールをおくった。