MPIリレー連載 その5
MPI Japan Chapter 広報委員会 副委員長
小誌 編集部 田中 力
共通項の発見がMICEを発展させる
目に見えない効果を提示するのが業界の使命
展示会の専門紙を30年にわたり発行してきた弊社ピーオーピーは、イベント業界内の要望にこたえて2008年にMICE専門誌を創刊しました。
新雑誌の立ち上げに際して、ホテルの方々にヒアリングしたところ、「会議、展示会、インセンティブなどMICEの各分野のイベントは、これまでにも数多く開催されている。今後はそれぞれのイベントが有機的につながることに注目している」といった答えが多数をしめていました。また、国際会議では重要な収益源として併設展示会を開催していますし、展示会においても国際会議やカンファレンスが集客のツールとして活用されており、MICEの4つのセグメントが重なりあっていることは間違いないようです。
しかし、MICEという言葉が、業界関係者以外、とくに当のMICEイベントを主催する企業・団体にはあまり浸透していないのはなぜなのでしょうか。
理由はいろいろと考えられるのですが、MICEという言葉が現時点ではサプライヤー側の視点として使われていることが大きいと感じてます。市場規模や経済波及効果は行政や都市の視点ですし、業務範囲の拡大や施設の有効活用などは会場施設やイベント制作会社の視点です。
しかし、MICE推進のためには、コストを負担してイベントを実施する主催者へメリットを提示することが近道です。MICE4分野の主催者は、属性が大きく異なりますが、人と人との出会いという目に見えない、数値化しづらい効果が開催目的であることは共通しています。それをどのように測定し向上させるかということがMICEサプライヤーの使命であり、一般社会へ浸透させるために必要でしょう。
サプライヤーが考える展示会
ユーザーが考える展示会
「展示会とMICE」誌では展示会開催状況の統計をとっており、2012年の展示会開催件数は610件となっています。そのうちホテルで開催されたのはわずか2件だけです。もちろんもっと多くの展示会がホテルで開催されていますし、企業の単独展や製品発表会、国際会議に併設された展示会の多くが含まれていません。これは国際展示場や主催企業など展示会業界の視点に立ち、調査対象を大規模でオープンなものに絞っているためです。
しかし、参加者目線で考えると、規模や開催形態にかかわらず、展示会には新製品やサービスを自分の目で見て触って確かめるという目的は共通しています。効果的な展示・商談・出展募集・集客、スムーズな導線計画・搬入出など、共通のノウハウがあるはずです。ホテルのみなさんが自主企画の展示会を開催しても面白いかもしれません。手数は掛かりますが、大規模展示場の多くが自主企画のイベントを通して蓄積したノウハウを貸館事業でもいかしています。
“展示会”という同じ言葉を使っていながら、開催場所や規模によってさながら別の話のようになってしまいがちな展示会ですが、MICEという言葉で一つに括ることで、大規模展のノウハウとホテルの高いホスピタリティや単独展の運営ノウハウなどを共有して、より利用者目線のサービスを開発できると思います。
Profile
田中 力(たなか・りき)
貿易会社や物流会社勤務を経て、展示会とイベントの専門出版社ピーオーピーに入社。国際商取引や国内外の展示会参加の経験を活かし、出展者・来場者目線での企画を多数担当。2010年「Congress Nippon」、11年「展示会とMICE」創刊に携わる。国内外のMICEイベント取材を担当し最新情報を発信している。
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