MPIリレー連載6 前野 伸幸 氏/イベントプランナーが宴会場に求めること

週刊ホテルレストラン × 展示会とMICE 合同企画

MPIリレー連載 

第6回 ㈱ホットスケープ 代表取締役
MPIジャパンチャプター イベント担当理事  前野 伸幸 さん

イベントプランナーが宴会場に求めること

ブライダルからMICE対応の宴会場へ

20年以上にわたり、企業イベントを中心に現場の最前線で、さまざまな施設を利用させていただいております。かつては飲食の有無にかかわらず、ホテルで開催することにこだわる主催者も多かったのですが、昨今はカンファレンス施設や大型の会議施設との比較されるようになってきました。ブライダルを中心に対応力を強めてきたホテルの宴会場が、MICE領域にビジネスの幅を広げるには、この変化に対応する必要があります。まずは施設資料の完備です。正確な平面図はもちろんのこと、天井図や照明などの電源図。さらには映像投影の際に重要なのが、シャンデリアなどの詳細を含む断面図。型番や数量も記載した機材・備品も重要です。こうした資料はプランナーからの要望に対してすぐに、データで提供できるようにシステム化、WEB上でダウンロードできるのが望ましいです。資料を完備することで、会場の下見や問い合わせの際の手間を省き、お互いの効率化にもつながります。

会場の品格はバックヤードに表れる

 ブライダルではバックヤードをお客様にご案内するケースは、少ないと思いますが、MICEにおいては、講師やゲストのご案内にバックヤードを使ってご案内をしたり、搬入・搬出時にもバックヤードを通ることになります。
私の長年の経験では、バックヤードが綺麗に整理整頓されている宴会場は、対応力も高く、高度な演出に対しても問題がないという傾向があります。大きな荷物を搬入する際に、宴会場の荷物が入り乱れておかれているだけで、無駄な時間が発生します。また埃を被っているようなシルバーや食器を見かけると、それだけで料理の質が下がる気がします。

パートナーシップ先が宴会場の顔になる

私たちプランナーは、宴会場の営業担当者と開催までの準備段階で打ち合わせを進めていきますが、当日は別の方が宴会係として現場にいることが多いようです。営業担当の方が開催当日にも立ち会っていただくと、利用者はとても安心できます。やむを得ず不在となる場合には、当日の宴会担当者の方も打合せから参加していただきたいと考えています。それというのも、現場では事前にお願いしたことがうまく伝わっていないために、トラブルが起こることが多く、これらを未然に防ぐ手立てとなります。MICEイベントでは、音響・照明・映像などのテクニカル関連や看板・ステージなどの施工関連を外注することが多くなります。専門知識や経験の多さといった、プロとしての能力はもちろんのことですが、接客能力や急な変更への柔軟な対応力などが求められます。施設がきれいで機材がそろっていても、それを活かす人材がなければ良い宴会場とは言えません。質の高いパートナーシップとの提携がMICE対応力を高めて、宴会場のパフォーマンス向上につながります。

 

箱貸しビジネスからソフト提供へ

単に会場を提供するだけの「スペース貸し」のビジネスモデルでは、MICE利用者の満足度を上げることはできません。施設側は利用者の目的や成果・目標を理解して、寄り添うように付加価値を提供することが求められるようになってきています。ブライダル以上に多様化する企業イベントに対応するための多くの施策や体制づくりが不可欠です。

 

Profile
前野 伸幸(まえの・のぶゆき)
企業イベントを中心に、企画立案から制作・運営実務までをワンストップで受託、自社スタッフによる高い運営能力に定評がある。イベントでの経験やノウハウを活かし、MICE施設の運営・管理も行なっている。現在建築中の森ビルが手掛ける虎ノ門ヒルズ内カンファレンスセンターの設備・機材・運営のアドバイザーも担当している。

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