MPIリレー連載
第8回 河村 甚さん
(株)チームビルディングジャパン 代表取締役/ファシリテーター
【略歴】
1998年国際教育プログラムUp with Peopleに参加後、スタッフとして日米で勤務し、ミーティングファシリテーションや、異文化コミュニケーション、チームビルディングプログラムの運営経験を重ねる。㈱イベントサービスではインセンティブイベントの制作を手がけた。2006年チームビルディングジャパンを設立。役員向け・研修用・キックオフなどさまざまなチームビルディングを手がけ、組織の発展を支援している。
2つの視点のチームビルディング
組織づくりのための取組みであるチームビルディングは、ここ数年急激にその認知度が高まり、広く用いられるようになりました。今回はMICEにおけるチームビルディングに焦点を絞り、実際に使える理解に落とし込んでいきましょう。
MICEにおけるチームビルディングは“コンテンツとしてのチームビルディング”、“サービス提供側に必要なチームビルディング”という2つの視点に分けて考えられます。
MICEのコンテンツとして
イベント全体のなかでチームビルディングがどのような位置づけにあるかによって、プログラムの内容や最適な会場も変わってきます。
①メインコンテンツとなる場合の実施例
体験型のアクティビティとさまざまな対話の手法を組み合わせ、2日間の合宿で組織のチームビルディングを行ないます。定期的な組織のメンテナンスや、明確な組織の問題を解決のための効果が期待できます。最終的なアウトプットが重要視され、会場もそのために最適な場所が選ばれます。広い屋外スペースがあり、室内会場も使える施設が好まれ、都会よりも自然の中の会場が向いています。
②キックオフやオフサイトミーティングの一部として実施する例
1~2日間のプログラムから半日または1日弱を使ってチームビルディングを行ないます。定期的な組織のメンテナンスの目的で行われ、アクティビティ重視で体験の共有を優先するか、対話重視で方針等の共有を優先するかのどちらかに寄るケースが多いです。
都市部のホテル、コンベンションセンターのバンケット、会議室などで行なわれています。
③インセンティブイベントの一部として
インセンティブのイベントというと表彰式、パーティ、そしてチームビルディングの3種類があります。個人個人が自立していながら同時に会社への帰属意識を高めたり、仲間意識を高めたりといった目的で行なわれます。インセンティブなので楽しんでもらうためのFun Eventという意味合いが強いようです。海外からのインバウンドでは多く活用されていますが、日本の会社は短い日程のなかで自由時間をできるだけ長く取り入れたいという要望も多く、海外企業と比べてチームビルディングを採用することは少ないかもしれません。
MICE事業者のチームビルディング
MICEではこのような目的でチームビルディングが使われています。主催者の実施するコンテンツとしてもニーズも年々高まっているのですが、それと同じようにサービスを提供する側のチームビルディングもとても重要なのです。
MICEイベントは主催者、会場、イベント会社、旅行会社など異業種のプロが集まり、一つのプロジェクトの成功へ向けて力を合わせ、最高のアウトプットを出してゆきます。多様な人たちが集まり、チームになれずにそれぞれの思惑や利害だけで仕事をしていると当然ながら理想の結果は得られません。しかし、全体が一つのチームとして機能する事で全員が理想とする結果を目指していけるのです。
これは、MICEの案件に取り組むチームで突然なにかチームビルディングのプログラムを行なえばいい、ということではありません。常日頃からチームで成果を上げる意識を持ち、実践の中で、チームで成果を上げる力を磨いていく必要があります。
MICEビジネスはチームビジネスです。チームビルディングの観点からMICEビジネス成功のために特に次の4つの共有が重要です。
・ゴールの共有
・情報の共有
・認識の共有
・思いの共有
まず、何のために実施するのか? 終わった時にどうなってほしいのか? などのゴールの共有なしにははじまりません。そして、チームとして機能するためには関係者内での情報の共有が必須です。同じ事実を見ても認識が違うこともあります。現状をどう認識しているのか? これも常に共有しながら進む必要があります。
そして最後に最も大切なのが思いの共有です。思いを込めて、チーム全員が全力で取り組んだ仕事は当然素晴らしい成果を上げますし、チームメンバーの成長にもつながります。
これらの共有を意識するだけでもチームとして機能しやすくなります。
どんなMICE案件も、まずは自分たちのチームビルディングから始まります。皆様が様々なプロの力を合わせるMICEの仕事でより良い成果をあげられる様に、ぜひチームの力を活用してみて下さい。
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