【セミナーレポート】サステナブルなイベントのつくり方

3月18日、「サステナブルなイベントのつくり方~ロンドンオリンピック・パラリンピックでの事例から学ぶ」をテーマに、CSR・CSR関連部門担当者を対象としたセミナーが開催された。主催は経済人コー円卓会議日本委員会、(株)セレスポ、SGSジャパン(株)。

同セミナーは、サステナブルなオリンピック・パラリンピックの実現に向けた大会実行委員会と企業とのかかわりについて、企業側の視点を軸に構成するもの。実際に招致・準備段階・実施、そして実施後にまでわたる、すべての段階にサステナビリティの概念を包括的に取り入れ、その取り組みを具体化させた初のオリンピック・パラリンピック大会、ロンドンの事例から紐解く内容となっており、30名の定員以上の参加者が集まった。

今回、2回シリーズの第一弾では、ISO20121策定で国際会議議長を務めたフィオナ・ぺラムさんが「サステナブルなイベント運営のためのスタンダードISO20121」と題して講演を行なった。

<フィオナ・ぺラム氏講演「サステナブルなイベント運営のためのスタンダードISO20121」>

フィオナ氏は、冒頭に「ISO20121は、企業内での文化を創造するもの」と言い、「従うべき規格・ルールといった他のISOとは異なるもので、会社内で持続可能性、サステナビリティというものについて理解するための規格である」と簡潔に定義を解説し、講演をスタートした。

ISO20121は、チェックリストや何をしなければいけないかというものが定められているわけではない。あるのは、プロセスであり、仕事(サステナブルなイベント)の仕方を示している。たとえば、イベント運営や会場運営、またケータリングサービスの提供する会社など、イベントに関わるサービスを提供する会社であればISO20121から学ぶことはある、と参加者らに伝えた。

■サステナビリティに含まれる3つのこと

サステナビリティに含まれるのは、「環境」「社会」「経済」の3つ。これらがバランスをもっていることが必要だと言う。たとえば、イベント運営の場合は、環境への影響は何か(木を伐採したり、資源を使ったり、廃棄物が出たりしていないか)、社会への影響はどうか(社員やボランティア人員、開催地の周辺住民、参加者などがアクセスしやすいか、皆が参加できるのか)、そして経済への影響はどうか(予算確保はできているのか、スポンサーシップの用意はどうか、収益を上げられるのか)といったことが要素として挙げられる。

■ISO20121はなぜつくられたのか

ISO20121制定の背景について、フィオナ氏は、ロンドンがオリンピック・パラリンピックの開催地に選ばれた際、世界に向けて、「ロンドンは最初から“サステナビリティ”について考えていた」ということを示したかったためと理由を説明した。しかし当時は示すための基準がなく、英国の団体に基準の作成を要請し、英国規格を2007年に制定。欧州や北米で活用されたという。その後、国際規格としての話し合いをもち、30か国から主にイベントの関係者が集まり2012年、ISO20121が制定、ロンドンオリンピック・パラリンピックで活用された。

■サステナビリティレポーティングのフレームワークを紹介

グローバル・レポーティング・イニシアティブを紹介

サステナビリティに関するレポート作成の仕方を定めた「グローバル・レポーティング・イニシアティブ」についても紹介。2010年に策定され、世界的にもっとも広く利用されているフレームワークで、フィオナ氏は2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックでスポンサーとしてコカコーラ社が行なったサステナビリティの活動レポートの事例を提示しながら、グローバル企業は特にテーマに合った活動をしたいという要望を理解することが大切だとした。

 

■ISO20121の基本的ステップ

ISO20121を活用する際にすべきこととして、次の手順を伝えた。

・対象のイベントはどれだけ(サステナビリティ)の適応範囲があるのか、取り組みの範囲を定める

・課題を特定する

・目的を明確にし、目標を定める

・ステークホルダーとのエンゲージメントを図る

・取組み状況を把握し、達成度を測定する

このなかで、フィオナ氏は「イベントによるインパクトの測定はむずかしいと考えられがちだが、将来的には重要なポイントとなる」と指摘し、環境に対するインパクト、コミュニティ(社会)に対するインパクト、経済的インパクトについて、どのような基準にするか、それぞれが携わっているイベントについて思いをめぐらせてみてほしい、また測定には絶対的に正しいものは存在しない、方法はさまざまだと話した。

■活用のメリット

ISO20121の中身について説明してきたフィオナ氏は、活用のメリットについて伝えるため、実際にロンドンオリンピック・パラリンピックに向けて用意した資料を提示し、2020年にオリンピック・パラリンピックを控えた東京でどのようなビジョンを達成できるのかを伝えた。

そのなかで、いくつかの具体的な例としては、CO2排出量を40%削減すること(英国政府の目標値と一致)、ケーススタディや知識を世界各国と共有すること、英国のイベントは100%あらゆる人たちが参加できるようになっていること、英国でのイベント調達がサプライチェーンをつかっていること、などを挙げた。

■ポジティブな影響の輪を広げる

(セミナー開催日の3月18日)2週間程に開設されたばかりの無料キャンペーンのwebサイトを紹介。サイト上で、世界各国でインスピレーションを受けたイベントを投稿し、共有することができるというもの。一例として、イスタンブールのハリック国際会議場で代表団がさまざまなリサイクルの方法を選択できたことなどが紹介された。

 

■教育とトレーニング実施について

2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの際も、イベント業界ではサステナビリティに関するさまざまな研修が行なわれた。NGO法人とも、食文化や廃棄物処理など特定テーマの研修が実施されたことで、英国全土でサステナビリティに関する学びを得ることができたという。

■イベントの向かう先

各国で繰り広げられるサステナビリティイベントの取組み

デンマーク、フィンランド、タイなど、各国でサステナビリティに関するイベント事例が報告され、プロモーションをはじめていることを伝えた。日本でもこうした情報発信がスポーツイベント、ビジネスイベント分野で開催国として売り込むことになると話す。

■チャンス

フィオナ氏は、現在各国で行なわれているサステナビリティに関する活動は、東京オリンピック・パラリンピックの際には、さらに多くのグローバル企業などが推進しているだろうとし、これから2020年に向けてだけではなく、その後の活動に続くものにしてほしいとした。

フィオナ氏の講演後、ロンドンオリンピック・パラリンピックでの事例をビデオメッセージで紹介。「インフラ建設」、「企業スポンサー」、「セキュリティ」などにおけるサステナビリティの取組みが放映された。

同セミナーのシリーズ2回目では、サプライチェーン、持続可能な食品という2つのテーマから大会実行委員会と関連する企業がどのような取り組みを行なったかについて、またサステナビリティの観点から求められるボランティアの姿についてなど、多角的なプログラムが用意されている。2回目は4月22日に、関西学院大学東京丸の内キャンパスのランバスホールで開催される。参加締切は4月18日まで。

参加申込・詳細については、http://jump.cx/sus_event3まで。