観光の高度化が日本の新しい産業創生戦略に ~IMEレポート 基調講演 寺島実郎氏~

国際ミーティングエキスポの開会式後に行なわれた基調講演には、日本総合研究所理事長・多摩大学学長・三井物産戦略研究所会長の寺島実郎氏が登壇。「観光立国への戦略的視座」をテーマに、技術偏重から脱却した日本の次世代産業モデルとしての観光やMICEについて語った。

寺島氏は日本が直面する課題の中で日本の人口減・高齢化について掘り下げて解説。日本の総人口は1966年に1億人を突破したものの、2008年の1.28億人をピークに2048年には再び1億人を下回る。人口が元の数字に減るだけでなく、5%に過ぎなかった65歳以上の人口が、2020年には4割に至り、有権者の過半数が高齢者となる人口構造の変化によって、シルバーデモクラシーと呼ばれる「老人の老人による老人のための政治」が行なわれ、若者の閉塞感を生むことになると警鐘を鳴らした。

この人口構造の急速な成熟化を衰亡にしない知恵として、工業生産力を背景にした通称国家から、高度なサービス業への「新たな産業感に立つ産業創生戦略」が必要とし、その有効な手段として観光産業の発展を掲げた。

昨年、目標であった1000万人を突破した訪日外国人を、2020年には3000万人へと増やす政府目標について、たとえ目標人数を達成したとしても2泊3日3万円といった低価格のツアーが多ければ、観光立国成立はむずかしいという考えを明らかにし、観光の高度化の必要性を訴えた。

観光の高度化の方策として、統合型リゾート(IR)や医療ツーリズム、コンベンション、産業観光の強化が必要とした。コンベンションについては、会議施設の充実のみならず、双方向性の高い会議運営などソフトウエア面の向上も進めていくべき、とした。IRについてはカジノだけでなく、地域の特性にふさわしい物語のあるリゾートと、高度なホスピタリティを支える人材育成を提案した。