「スポーツ振興賞」授賞式にみる、スポーツと地域活性化のヒント

3月3日、千代田区・麹町の弘済会館で「スポーツ振興賞」の授賞式が行なわれた。

「スポーツ振興賞」はスポーツツーリズムやスポーツによるまちづくりに貢献した団体・グループ・企業を表彰する制度。平成20年度にスポーツ健康産業団体連合会と日本スポーツツーリズム推進機構が「地域・スポーツ振興賞」として創設し、平成24年度から名称を「スポーツ振興賞」として改称している。

各賞の受賞者と作品、は以下の通り。

また、授賞式後には受賞者による発表とディスカッションが行なわれ(写真)、スポーツの力・魅力とスポーツを活用した地域を活性化する手法が披露された。

【スポーツ振興大賞】
作品名:九州オルレ(の取り組み)
受賞者:一般社団法人九州観光推進機構(福岡県福岡市中央区)

選考委員のコメント:
韓国で生まれたシステムをうまく導入し、インバウンド観光にまちなかを「歩く」というプログラムを導入した画期的な取組み。当初4コースでスタートしたが、現在は15コース。韓国からのインバウンド拡大にも成果を発揮しており、一地域だけでなく九州全体に普及した取り組みに発展させている点も素晴らしい。着実な実績の積み上げが高く評価され、九州の新しい魅力づくりとして注目。韓国との連携も素晴らしい。
 

 

 
【スポーツツーリズム賞】
◆国土交通省観光庁長官賞
作品名:若狭路スポーツトリップ
受賞者:一般社団法人若狭路活性化研究所(福井県三方上中郡若狭町)

選考委員のコメント:
若狭湾の自然資源を背景に、サイクリング、スイミング、トレイルランなどのスポーツ振興を通じて、地域内外から参加者を呼び地域を活性化した取組。公的資金に頼らない一方で、一般社団の体制により一定の持続性をもった事業としており、今後のスポーツ・ツーリズムの一つの範になるのではないか。地域住民の協力・支援が得られていることも評価できる。

 

 

 
◆日本スポーツツーリズム推進機構 会長賞
作品名:留学生スキーインストラクター『おもてなしスノーレンジャー』育成プロジェト
受賞者:留学生スキーインストラクター『おもてなしスノーレンジャー』育成プロジェクトチーム(北海道札幌市中央区)

選考委員のコメント:
北海道のインバウンドスキーの普及を狙った戦略的取り組み。留学生のスキーインストラクターを育てようという発想と、取り組みの過程で直面した課題をひとつひとつ解決していった行動力、実行力に敬意を表したい。中国人インストラクターの誕生など、着々と成果を出している点が高く評価できる。文字通り、産学官の連携の効果も出ており、今後、インバウンドの拡大に寄与することが大いに期待される。

 

【スポーツとまちづくり賞】
◆経済産業省商務情報政策局長賞
作品名:国際スポーツ雪かき選手権
受賞者:一般社団法人日本スポーツ雪かき連盟(北海道小樽市)

選考委員のコメント:
独創的なアイデアと社会貢献性を備えたユニークなイベント。地域住民にとっての厄介者(雪)を他地域の人々にとっての楽しみにし、社会課題の解決も図っている。定番となった小樽雪明りの路のイベントには中国・韓国の学生がボランティアで参加している。この競技は、雪かきという地域課題を国際観光交流の手段にするというユニークな手法であり、単なるイベントから観光ビジネスに進化させ、継続性も確保でき、将来性の期待できる事業である。

 

 
◆日本商工会議所 奨励賞
作品名:湯のまち飯坂・茂庭っ湖マラソン大会(スポーツツーリズムを主体とした飯坂温泉活性化プロジェクト)
受賞者:飯坂マラソン実行委員会(福島県福島市飯坂町)

選考委員のコメント:
温泉地と奥に拡がる地域再生をかけたマラソン大会。地元手作りで地産品の風評被害対策をかねて参加賞を提供している。観光客が少なかった故に守られてきた自然美と未知の魅力を十分に活かし、域外からの参加者等の誘導を実現し、高い定着率を得た大会に育て上げたことは、着眼点の良さと推進力のなせる業。地元の高校生たちのサポートが好印象で地域をあげた取り組みが素晴らしい。今後も毎回の工夫や改善そして自然美の維持が求められる。

 

【特別賞】
◆スポーツ健康産業団体連合会 会長賞
作品名:「スポーツ鬼ごっこ」と「伝承鬼ごっこ」による産業・地域活性化への貢献
~日本文化「鬼ごっこ」がスポーツに!人と地域のつながりづくり~
受賞者:一般社団法人鬼ごっこ協会(東京都世田谷区)

選考委員のコメント:
伝統的な鬼ごっこ遊びにスポーツ的な要素(戦術・戦略)を加えた新ジャンルのスポーツ競技で、子ども達のコミュニケーション能力やチームワークなどの育成を狙うユニークな事業。子供から大人までできるスポーツにルールなども工夫され、健康増進にも大いに資する。非常にうまく仕組みが考えられている。学校での取組から旅行商品開発まで広い層に広がっている。社員教育のコンテンツとしても可能性がある。多様な関係者の連携を生み出し、海外への訴求力もある。