ピーオーピー発行の季刊誌「EventBiz(イベントビズ)」は、イベントビジネスに関する情報を発信している。5月31日発行ではサブタイトル“食イベントのレシピ”と称し、食にまつわるイベントを支える人たちに焦点を当てた。その1つのテーマを、ここでは全編公開する。
不特定多数の人々が集まるイベントで出る大量のごみ。特に食のイベントでは
トレーや割りばし、ペットボトルなど、より多くのごみが排出される。
「肉フェス」など大型イベントで活動するNPO iPledge(アイプレッジ)のプロジェクト「ごみゼロナビゲーション」から、環境対策へのアプローチやごみ対策の可能性を探る。
◆ピースフルなイベントでみたものとは
プロジェクト「ごみゼロナビゲーション」を行なうNPO iPledge は、設立が2014年と新しい団体だ。だが、このプロジェクト自体の歴史は長く、およそ20年にわたる。1994年、まだ〝フェス″という呼称になじみのない頃、羽仁カンタ現代表やメンバーはいち来場者としてレゲエ音楽イベントに参加していた。平和・平等を謳うレゲエだが、会場ではごみの散乱など、来場者のマナーのなさが目立ち、実情はそのイメージとはかけ離れたものだった。その後、この状況に疑問を抱き、イベントの運営事務局に問い合わせたことがきっかけとなり、国際青年環境NGO A SEED JAPAN のもとプロジェクト「ごみゼロナビゲーション」が始動することとなった。
◆環境への取組みを意識すること、させることの重要性
<“ナビゲーション”のこだわりから見えるプロジェクトへの思い>
ごみゼロナビゲーションは、「来場者参加型」のしくみをつくる〝イベント環境対策プロジェクト″と謳っており、プロジェクトそのものが生活の中における分別の啓発活動としての一面を持っている。自発性がなければ人は動かないのである。
事務局長の濱中聡史氏は過去に苦い体験をした。
とある会場でごみ拾い活動をしたことで、来場者に「誰かが拾ってくれる」という考えが出てきてしまい、ごみの散乱を抑えきれなかったのだ。
スタッフがごみを受け取って分別を行ない、来場者が分別してもらう側(=受け身)となってしまうことはごみの散乱の延長線上にあるのではと考え、最後まで自分の手でごみを分別することの大切さに気付いたという。
「普段ごみ箱の前に人が立って分別を指示されることはないでしょう。でもイベントの時にナビゲーションされ自分で分別すると、日常でも意識するようになる。私たちの活動はイベントが終わっても環境に対する意識を持ってもらうということを目的としています」(濱中氏)。
環境対策への近道は、ごみを拾うのではなく、拾う必要のない状態にする仕組みづくりであり、それはイベント以外の場所でも同様に必要と言える。
<ボランティアが機能するために>
通常イベントスタッフを募集するときの雇用形態は、派遣スタッフやアルバイト、無償のボランティアなどさまざま。コスト面を考えるならばボランティアだが、スタッフの質を考えるならば対価を払って、と悩む主催者も少なくないだろう。ではなぜ、ボランティアスタッフをメインに活動しているNPO iPledge に声がかかるのか。
何となく〝ボランティア″という言葉に魅かれただけで参加をすると、そのモチベーションを維持することは難しい。イベントでのボランティアということで華やかな仕事を想像して応募したものの、与えられた仕事がごみの担当だった、ということでモチベーションが下がる場合も多々あるだろう。無償だからこそ、モチベーションが仕事のクオリティに直接影響する。そしてスタッフの仕事ぶりは来場者にとっても、直接イベントのイメージに関わることもあるため軽視できない。
そういった理由から主催側がボランティアをスタッフとして活用することを不安と考えるのは無理もないことだ。
しかし、募集しているのが環境問題対策として活動や思いを訴えている団体であれば話は変わるのではないか。環境問題に意識が高く、このプロジェクトに賛同する人を最初からごみの担当として募集すれば最適なスタッフをコーディネートできる。NPO iPledge はボランティアの課題として挙げられるスタッフのモチベーションの問題を、応募の前の段階である動機づけが重要と考え、〝イベント環境対策プロジェクト″という活動に対する思いや熱意を掲げることで解決した。
→この企画は季刊誌「EventBiz(イベントビズ) Vol.3」より抜粋
そのほか、イベント現場におけるトイレ事情や、ユニットハウスやキッチンカーを使った出店状況の変化などにフォーカスしてます。