日本展示会協会(日展協)、東京ディスプレイ協同組合、電設協議会の展示会関連3団体は1月26日、サンケイホールで2020年展示会場問題についての記者会見を開いた。2020年オリンピック展示会場問題は、19年・20年の約20カ月間にわたり、東京ビッグサイトが東京五輪のメディアセンターとして使われるため、多くの展示会が縮小や中止になる恐れが出ているというもの。会見では、展示会関連3団体が19・20の両年も例年通り同じ規模で展示会の開催ができるように訴求したほか、展示会を利活用している出展企業として中野科学の中野信男社長と名古屋眼鏡の小林成年社長が、この問題の不安感を直実に語り、早期解決の実現を切実に訴えた。
日展協は以前からこの問題を解決するために活動をしてきたが、1月20日に小池百合子・東京都知事に対し、出展社や来場者、支援企業から募った8万1143通の請願署名を提出している。石積忠夫・日展協会長は展示会の縮小や中止に対し「特に中小企業にとっては死活問題であり、最悪倒産の可能性もある。経済効果のマイナスは東京都民、国民にも被害を与える」と語り、事態の深刻さを訴え、解決に向けて本腰を入れていく構えだ。
会見では、都が東京ビッグサイトを東京五輪のメディアセンターとして使用する問題について、展示会が例年通り開催されることを要望。各団体の代表がそれぞれの立場で訴求し、展示会を支えるサポート企業の代表、自民党展示会産業議員連盟の秋元司氏も出席した。日展協は、1月20日に小池百合子東京都知事に対し8万1143通の請願署名を提出したことも報告。今後、阿倍晋三・内閣総理大臣など関係者に適宜、陳情を行う予定だという。展示会関連3団体の主張は次の通り。
1.都は対応するものの、問題解決には至らずビッグサイトのメディアセンターとしての使用に対し、日展協は公式声明文を発表。従来通り展示会を開催できるよう要望を出すとともに署名活動を開始し、現在までに8万1000通が寄せられた。都は2016年2月に仮設展示場の設置などの対応策を発表。同年11月に設置期間の延長を決定した。だが2020年4月から10月までの7カ月間、展示面積が現在の4分の1になってしまうのは避けられず、いまだに問題が解決したとは言い難い状況だ。
2.展示面積の縮小が企業の倒産・経営難を招く日展協の石積忠夫会長は「展示面積が4分の1になれば展示会の魅力が薄れてしまう。3万8000社の出展企業が約1兆2000億円の売上を、装飾や電気などの支援企業が仕事を失う。大きな経済効果をもたらす日本の展示会が縮小、中止するということは都民や国民に不利益をもたらしかねない」と訴えた。さらに8000社の海外企業が出展できないため、7万人のバイヤーが来日不可能になるほか、支援企業1000社が約1337億円の売上を失う。東デ協の吉田守克理事長は緊急アンケートの結果を紹介するとともに、リーマンショックと東日本大震災が同時にやってきたほどのインパクトだという声も寄せられたことを明かし、今回の会場問題は「深刻かつ回避できる問題だ」という認識を示した。秋元議員は「ビッグサイトの代替案を唱えてきたが、不満解消にいたらなかった。仮設施設でも良いので、ビジネスチャンスを損なうことがないようにしたい」と話す。
3.全面解決に向け本腰展示会の縮小や中止は日本を支える中小企業にとっては死活問題である。日展協では全面解決に向け本腰を入れていく方針で、東京ビッグサイト以外でのメディア施設の新設を訴え続ける構えだ。候補地には築地市場跡地や羽田空港近辺などを挙げている。メディア施設を展示会場以外の場所に建設した過去3回の五輪も見習うべきであり、メディア施設の新設が難しいのであれば同規模の仮設展示場を都内、あるいは首都圏内に求めていくという。
<出展者の主張>
中野 信男 氏(中野科学社長)
中小企業は大手と比べると営業力で劣る。そのため展示会は新製品や技術発表の場として非常に重要なものだ。展示会での来場者の評価がその後につながっていくのだ。情報収集の場としても機能しており、競合他社の新製品や技術の情報を得られるのはもちろん、世の中の動きを知るための一助ともなる。展示会の縮小はそのまま営業の縮小につながり、経営判断を困難なものにするだろう。そうなった場合、倒産の可能性すらある。これはどの中小企業も同様だと考えている。
小林 成年 氏(名古屋眼鏡社長/日本眼鏡関連団体協議会副会長)
30年以上「国際メガネ展」とともに成長してきた。展示会は実際に製品を見て、付けてもらう稀な機会であり、年に1度のビッグチャンスだ。日本の眼鏡の90%は地場産業である福井県で作られている。展示会で受注・生産をすると4〜6カ月ほどかかるが、この売上は数十%にもおよぶため、展示会が縮小・中止となれば倒産の危機を迎える。既に年間スケジュールに組まれているルーチンワークであり、なくてはならないものだ。