東京ゲームショウ2017 2日目レポート~センス・オブ・ワンダー ナイト 2017(SOWN 2017)~【展示会レポート】

「センス・オブ・ワンダー ナイト 2017(SOWN 2017)」は、”見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚”=「センス・オブ・ワンダー」を引き起こすようなゲームのアイデアを発掘し、ゲーム開発者に東京ゲームショウ会場でプレゼンテーションと展示の機会を提供する、今年で10回目を迎える企画だ。

スペシャルスポンサーはプレイステーション。協賛は任天堂となっている。

今年は9月22日、ビジネスデイ2日目の夜に開催され、①ゲームで生み出される叙情、②どんなゲームか気になって仕方ない、③狂気を感じる創造性といった3つの観点から選出されたインディーズゲームのプレゼンテーションが行われた。以下に受賞作のプレゼンテーションの模様を紹介する。

AudienceAward/Best Technological Game Award 受賞作 「ACE OF SEAFOOD(エースオブシーフード)」

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魚になって自由に泳いでみたいと思ったことはありませんか?

海は広大で綺麗ですが、重力の影響が少なく体の大きさがものをいう厳しい世界でもあります。体の小さなイワシでは、マグロやサメに勝つことはできません。ですが、ゲームはエンターテインメントなので、小さいものが大きなものに勝てないと面白くないでしょう。

この作品は私が夕方に見ていたSFアニメをヒントにしました。その作品では、エースがビームを放ち巨大な敵を撃ち勝利していました。なぜそんなことができるかというと、強力な武器、ビームがあるからです。つまり、ビームが戦いを呼ぶ。小魚もビームがあれば食物連鎖に逆らいエースになれます。

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とはいえこのゲームは、元々の生き物に十分な敬意を払っています。たとえば希釈効果。群れの仲間が食われている間にビームを打てば捕食者を倒すことができるでしょう。また、自分の体の一部を分離し、それを捕食者が食ってる間に逆襲することも可能です。

捕食者側の魚も操作できます。鮭は強く、ビームを使う必要ないので撃たれる前にいかに食い殺すというアクション性の高い遊び方が可能。ホオジロザメはなぜか極太ビームを放てるので、これでもう浜辺に座礁して無様をさらすこともありません。

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現在Steamで発売中で、今後PS4とスイッチ版も予定しています。

Best Experimental Game Award 受賞作 「STRANGE TELEPHONE(ストレンジテレフォン)」

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小さい頃、友人との間で奇妙な電話番号が噂になっていました。電話をかけると、人のうめき声のようなものが聞こえたり、ピーっという電子音が鳴り続けたり、そこに何かいそうな物音だけが聞こえたり。そんな、身近に存在する奇妙な電話番号をヒントに今回製作しました。

このゲームは、暗い空間に閉じ込められてしまった主人公のジルが、電話の姿をしたグラハムと共にさまざまな世界を冒険して鍵を見つけ出し、その世界から脱出する物語です。グラハムを通じて6桁の電話番号にかけると、ワールドが自動生成されます。ワールドの中でアイテムを見つけ謎を解き、脱出に必要な鍵で扉から抜け出せばクリアとなります。

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電話をかけるとワールドが自動生成されるかという点は、奇妙な電話番号の都市伝説と関係しています。電話をしたときに不思議な音や声が聞こえると、何が起きているのか、向こう側の世界を想像する。ジルは想像するイメージの中を探索することができる能力を持っているのです。電話を切ると“不気味な空気が漂う大きな扉が浮かぶ世界”へ戻るのは、その世界が拠点だからです。

ワールドは「Nature」「Human」「Chaos」の3つが存在し、電話をかけるたびに増えていくGlitchという数字によって世界が崩壊していくようすを表現しています。Glitchは当初予期せぬ形のバグだったのですが、世界観とマッチしていたため採用しました。

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バージョン1.1はios、Androidの各種ストアで配信中で、バージョン2からはPC版としてSteam/Playismでも配信予定です。

Best Game Design Award 受賞作 「CONGA MASTER(コンガマスター)」

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このゲームのためにコンガラインの研究をはじめ、たくさんのパーティに参加してコンガラインを試しました。研究の結果、良いコンガラインを作るために必要なものは次の6点だと分かりました。
1.みんな、一人ひとり自分のダンススタイルがある。マイケルジャクソンのダンスはかっこいいですが、私たちが踊るといけない。そこで、ゲーム内にはユニークな33のダンサーを作りました。
2.バランスは必要です。環境によって良いコンガラインは変わります。私たちがコンガラインを作ったら、TGSや秋葉原では人気が出るかもしれませんが、銀座ではどうかな。ゲームには4種類のタイプがあるので、バランスよく列に入れてコンガラインを作る必要があります。
3.コンガラインは早く長くなるほど、周りに影響を与えます。たくさんの女性が参加するのと一匹の豚が参加するのでは、どっちが嬉しいか想像してみてください。そういった状況を表すためのコンボを実装してあります。

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4.最高のコンガラインを作れた人だけが次のクラブに挑戦することができます!高級クラブや大学のパーティなど、さまざまな場所が用意してあります。
5.豚をはじめ、いろんなものがコンガラインを壊す可能性があります。コンガラインを崩す原因はたとえば濡れてる床だったり、踊りたくない人、もしかしたら宇宙人にさらわれるなんてこともあるかもしれません。

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6.友人と一緒に踊ればめちゃめちゃ最高です。4人まで一緒に遊ぶことができます。

Best Arts Award 受賞作 「Old man’s Jurney(オールドマンズジャーニー)」

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Old man’s Jurneyはパズルをもとにしたストーリーゲームです。

主人公の老人は一人暮らしで、崖の上の家に住んでいます。ある日、老人に手紙が届きます。それを受け取ると老人はすぐに荷造りをして、歩き出します。

ゲーム内では、歳を取っているため頻繁に休まなくてはならず、各ステージの最後では座って休んでいる間に自身の転換期を思い出します。それは、若い頃に出会った愛する人のことなどです。

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物語が進展するにつれ、ストーリーが明らかになっていきます。ストーリーはイメージを通じて語られ、作中に言葉は一切出てきません。各要素は叙情的なストーリーの進展をサポートし、環境や音楽、プレイに反映されます。

私たちのスタジオであるBroken Ruleというスタジオは、5人の共同設立者によって2009年に作られました。以来4本のゲームを完成させてきましたが、その間に5人には8人の子供が生まれました。そして家族やキャリア、夢の追求というバランスが私たちの共通のテーマになりました。このテーマは、世界各地で共感を得られるものだと思います。

Old man’s Jurneyではこのような問題に苦労する男を描き、結果として彼は失敗します。けれど、愛する者から許しを求めるのに遅するということはありません。愛は永遠のものだからです。

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ゲームは5月にリリースを開始して、現在iosとAndroidで展開中です。

Best Presentation Award 受賞作 「EARTH DEFENCE SATELLITE(アースディフェンスサテライト)」

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このゲームは私が一人で製作し、製作期間3カ月で、構想期間は0.1秒です。

プレイヤーは地球で、自由自在に動けます。地球なのに動けるのはおかしいと思いますか?そんなことはありません。NASAの研究者によると地球は巨大な生命体であり、生き物ということです。つまり、その気になれば地球は動けるのです。

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月は現実とは異なり、地球と離れれば離れるほど強い引力で引っ張られます。地球をうまく動かすことで、月を思い通りに動かせます。敵はエイリアンの宇宙戦艦で、地球を攻撃しようとビームを打ってきます。地球防衛軍がこの世界にはいないので、月をぶつけて撃破する。つまり、EARTHをDEFENCEするSATELLITE

敵は地球の移動範囲を狭めるバリアや、ビームなどを使ってきます。なかには動く敵や、同時に破壊しなければ再生してしまう敵もいます。なお、地球を守る月ですが、ぶつかると粉砕されます。

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現在itch.ioで販売中です。

 

このほかにもさまざまなユニークな作品が登場し、個性豊かなプレゼンテーションで観客を楽しませた。SOWNは来年以降も継続して開催していくとのことだ。

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