利用シーン想定した展示シナリオで研究成果の見える化をサポート

利用シーン想定した展示シナリオで研究成果の見える化をサポート

(株)ビットマイスター 代表取締役 笠原 勉さん

――昨年8月に会社を設立されたそうですが、主な業務内容を教えてください

笠原 メーカーなどの企業研究所や大学研究室、政府系の研究組織など、主に情報技術の研究者を対象としたサービスを展開しています。
サービスメニューは、3種類で、「ソリューションサービス」「インプリメントサービス」「プロモーションサポート」です。簡単に説明すると、研究者が頭のなかで描いている構想を形にし、他者に伝えるまでの支援をトータルに行なっています。

――具体的にどのようなシーンでサービスを提供しているのですか

笠原 研究者が研究成果を発表する機会は、内々の発表会から学会、大規模な展示会まで数多くあります。各々の利害関係者に理解してもらえなければ、研究の価値は正当に評価されませんから、実際の利用シーンを想定して、それ通りに動かすなど、理解してもらうための展示シナリオをつくっています。
たとえば展示の仕方を工夫したり、デモビデオを作成するなどして、研究理論の見える化をサポートしています。

――研究段階の技術は最先端のものでしょうから、伝える技術というも相当難しそうですね

笠原 ある程度、技術の中身がわかっていないと、その技術の何がすごいのかを伝えることはできません。技術を理解するという点では、自分自身ソフトウェア開発者であったという前職を強みに、一歩踏み込んだ立場で関わっています。実際の例を挙げると、当社では研究理論を形にするための試作品開発や実証実験のアウトソースも行なっています。これも研究者の悩みのひとつなのですが、時間と予算の関係でやりたい研究が継続できないといった状況があります。その解決策として当社の高い技術力を駆使したインプリメントサービスを提供しており、実証のスピードアップを図っています。
また、私は国立科学博物館が認定しているサイエンスコミュニケーターの資格を持っていますので、そういった技術翻訳の手法も駆使しながら、研究者が発表する場での理解増進に努めています。

――起業しようと思ったきっかけは何ですか

笠原 以前、ソフトウェア開発者として通信系の情報技術に携わっていたとき、ある案件で、1年間、研究者とともに仕事をしました。研究者との共同開発は初めての経験でしたが、失敗を恐れず挑戦する研究者たちの姿勢に触れたことが自分にとっては大きな衝撃でした。
研究者と仕事をするまで、自分にとって技術開発というのは、高い品質レベルを求められ失敗は許されないという世界でしたから、いわゆる枯れた技術でどれだけきっちりやるかが鉄則でした。一方、研究者は、トライ&エラーを繰り返し、その過程自体も成果となる世界です。
先端技術を駆使して挑戦できるという環境で技術開発する姿は魅力的な世界でした。技術者としての本来の役割を実現できる場を大切にしたいとの思いが会社設立の動機でもあります。ビットマイスターという社名のマイスターには職人という意味がありますが、技術屋が職人としてお客様と接する様に…との思いを込めています。

――今後どのような展開を考えていますか

笠原 現在は通信分野の研究開発を中心にしていますが、今後は対象分野を広げていき、大学や中小企業などがもっている技術やモノをよりわかりやすく提供していきたいですね。

――これからのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました

「見本市展示会通信」2008年10月1日号掲載