きくばりと自前の工夫で
リピーターをふやす
日豊機工(株)代表取締役社長 板倉 勲さん
――異業種から転職し、異例の早さで社長に就任されましたね
板倉 当社は冷蔵・冷凍ショーケースや展示会備品の総合レンタル会社です。前職はOA機器メーカーで事業部の事業戦略に携わっていましたので、業界すら知らない状態で、異業種から転職してきました。
――社長就任の経緯を教えてください
板倉 私は2005年に結婚したのですが、妻の父が日豊機工会長(前社長)の湯田勝雄氏でした。あるとき湯田会長に声をかけられ、2008年の4月に専務として入社し、今年の8月に社長に就任しました。
――大手企業の社員から中小企業の経営者になることに、迷いはなかったのですか
板倉 たしかに迷いはありましたが、前職でもちょうど、自分が将来どのようなポジションに進んでいくかを考えていた時期でもあり、新たな選択肢として前向きに受けとめました。経営者になるわけですから相当な覚悟が必要ですが、大企業では味わえないような達成感ややりがいを得られると思い、自分の力を試す最初で最後の良いチャンスであると思い、転職を決意しました。
――前職の経験は生きていますか
板倉 前職の仕事は会社経営に通じるものがあり、さほど違和感なく仕事に入っていくことができました。ただ、前職では何百億、何十億という大きな金額を管理しており、自分が動かしているという実感がありませんでした。 一方、いまの仕事では、日々お客様と向き合って短いサイクルでさまざまなイベント業務に携わらせていただき、前職では味わえなかったリアルな感覚と達成感があります。
――専務としての入社は相当なプレッシャーがあったと思います
板倉 「専務」と呼ばれることに、はじめはこそばゆさを感じましたが、不思議とだんだん慣れてきました。 会長が事前に周知してくれていたおかげで、周囲との軋轢もなく、スムーズにいきました。「役職が人をつくる」ではないですが、形から入ることも、一つの方法だと思います。プレッシャーはありますが。
――いろいろなプレッシャーがありそうですね
板倉 そうですね。湯田会長は創業してからこれまでの28年間、一度も赤字を出さず、体も壊さずに会社を経営してきた偉大な方です。その偉大な社長の後を引き継ぐというのが、もっとも大きなプレッシャーです。
――仕事での印象的なエピソードなどはありますか
板倉 初めて当社の現場を見たとき、率直に「すごいな」と思いました。当日までに手配する機器を整備し、何車ものトラックに効率よくパズルのようにきっちりと積み込む。現場では図面を見て手慣れたようすで要領よく設置。2時間程度で問題なく作業を終える。会期中は点検管理を行ない、最終日には夜遅くに現場に行って撤去。タフな社員に、ただただ感心してしまいました。 入社する前、なぜ大企業がこの業界に参入しないのか?という疑問がありましたが、現場を見てわかりました。蓄積されたノウハウをもち、小回りがきく中小企業しかできない仕事だなと思いました。 このときに「すごい」と感じた気持ちが、私の原点となっています。
――社長交代によって、会社も変わるのでしょうか
板倉 基本的に会長の理念は変えず、自分なりの工夫をして、変えるところは変えていきたい。お客さまを大事にすることは当たり前。やはり会社は社員あっての会社です。大事なのは「社員を幸せにする会社」であることです。 また、会長はある意味スーパーマン的な存在で、なんでも完璧にできました。自分にはそこまでの力量はなく、会長が社長だった時代より、もっと社員の力を借りなければなりません。社員一人ひとりに、より能力を発揮してもらいながら”総力戦”で臨みたいと思っています。
――どういう会社にしていきたいですか
板倉 前述しましたが、まずは会長の路線を継承すること。中小企業は小回りがきくから成り立っています。日豊機工の強みである「現場でのきくばり」「自前の工夫」などを存分に発揮し、お客様に「日豊さんに頼んでよかった」「日豊さんでないと」と言われるように、リピーターをふやしていきたいです。
――本日はどうもありがとうございました
「見本市展示会通信」2009年10月1日号掲載