あたりまえのことをしっかり実行することの大切さ
(株)協栄 代表取締役社長 山田 賢治さん
東京モーターショーなどの展示会の会場運営を手がけている(株)協栄。同社は東京オリンピックが開催された昭和39年(1964年)にビルの総合管理を目的として創業、今年で46年目を迎える。
それまでの協栄ビルメンテナンス(株)から(株)協栄へと社名を変更したのは一昨年の6月。現在の同社の事業分野は(1)清掃業務(2)設備管理業務(3)警備業務のほか、スポーツ・文化施設の管理やイベントなど多彩。総売上は約80億円である。
「当社の東京モーターショーの駐車場運営の仕事の歴史は、晴海の国際展示場で開催されていたころにまで遡ります。その後、幕張メッセにモーターショーは移りましたが、幕張で第1回目に開催されたモーターショーの運営は非常に思い出深いですね」と語るのは社長の山田賢治さん、同社を牽引する。
思い出深いエピソードとは、そもそも交通渋滞を起こさない駐車場運営計画を提案してくれと主催者から依頼があったことだそうだ。 「いまでこそ幕張メッセの臨時駐車場は数か所に分散していますが、当時はA駐車場・B駐車場の2か所だけでした。ご存知のように当時のモーターショーの来場者は200万人にも達する勢いでしたので、”来場者のクルマの渋滞は協栄がつくっている”と言われないように社員を総動員しまして業務にあたりました。もちろん事前の運営計画は主催者さんとの合意のもと綿密につくって実行したわけです。ただ、なにしろ幕張メッセのこけら落としの展示会ですから、計画通りに実行してもうまくいかないケースがでてくる。ですから会期中の夜は毎日、その日の反省点を洗い出して次の日の運営計画をつくるといったようなことを繰り返しまして…、そうですね、担当者の会期中の睡眠時間は毎日3時間くらいだった(笑)」と山田さんは、自社の業務のありかたを遠慮がちに、しかしながら確かな自信を滲ませながら話す。
また、展示会だけなく同社ではスポーツ・文化施設の管理運営やホールやスタジアムなどで開催されるイベントの運営業務も行なっている。 「当社は東京・代々木の国立競技場の管理業務を30年以上にわたり行なっています。フィギュアスケート世界選手権大会というスポーツイベントが1977年に国立代々木競技場で行なわれましたが、そのイベントを手伝ってくれないかと言われたのが、イベント運営業務を行なうようになったきっかけです」
具体的には、場内外警備、受付・案内、事前事後清掃といったように同社の他の事業分野も活かした、キメ細かい”お手伝い”が好評だった。これを皮切りに、野球場などで行なう各種のスポーツイベント運営業務などにも進出。こうした経緯をたどり現在では同社の立派な事業の柱に成長した。 「そのほかにも美術館など文化施設の管理運営も行なっていますし、東京国際フォーラムの施設運営スタッフとして当社の社員が常駐しています」
実際に同社には「スポーツ・文化部」というセクションがあり、以上のような業務は現在ではこのセクションが専属で担当している。 「イベント会場では予想を超えた事態が発生します。ですから、社員の教育を徹底しています。また、アルバイトなどの人材を確保する力も必要で、その人たちにもしっかりと教育した上で、会場に勤務しています。こうした教育を行なうことは、すべての事業者にとってあたりまえ、普通の努力でしょう。われわれに限らず、すべての事業者が大切にしていることでしょうね」と謙遜するが”言うは易し・行なうは難し”だ。
同社の姿勢についてもう一つ。 「景気が悪化していますが、計画を大幅に削減した人員計画を求められるケースがでてきました。たとえば、展示会やイベントの現場では必ず必要なポストまた人員数というものがあるのです。予算縮小ということはわかるのですが、必要不可欠なものを無理に削減して事故を起こしてしまったらそれこそ主催者が社会的指弾を受けます。だから、われわれは”なぜここにこれだけの人員が必要なのか”と何回でも説明し理解を求めます。クライアント(主催者)のためを思って説明し、クライアントが得ている信頼を守ることもわれわれの業務範囲なのです。同時に、こうした理解を求めていく努力はわが社の信頼にも跳ね返ります。協栄に頼んだら事故が起きたでは、当社の信頼も失墜しますから、会社を守る努力でもあるのです。これを”協栄なりのコンプライアンス”と呼んでいます」と語る山田さん。 “あたりまえのことをしっかり実行していく”、その大切さを改めて感じさせてくれた
「見本市展示会通信」2010年2月1日号掲載