ヒビノブランドを融合して、さらなる飛躍を目指す

ヒビノブランドを融合して、さらなる飛躍を目指す

ヒビノメディアテクニカル(株) 代表取締役社長 中島 義人さん

映像機器レンタルのメディア・テクニカルはこの7月、親会社の業界最大手・ヒビノとの融合を促進するため、ヒビノメディアテクニカル(株)と社名を変更、ヒビノから事業の一部も受け継いだ。これに先立つ5月にはヒビノ出身の中島義人氏が新社長に就任。業務拡大にともない、8月には社屋も移転する大改造を果たし、新体制をスタートした。新生・ヒビノメディアテクニカルの目指すところは──。中島新社長に聞いた。

 

業務拡大で大改造


――今回の一連の動きは、メディア・テクニカル創業以来の大改造と言えます

中島 メディア・テクニカルは1965年に前身の(有)アート写真として創業し、2006年にヒビノの完全子会社となりました。ヒビノグループとなってからも、独立性を維持し、あまりヒビノ色を出さずに業務を進めてきました。グループ企業のあり方としては、たいへん珍しいケースだったと思います。このたび、グループの相乗効果をさらに向上させるため、大幅な改造を行なうことになりました。名刺や社用車などに、ヒビノのロゴが入り、ヒビノから一部の事業を受け継いだことにより、スタッフも機材も大幅にふえました。まさに新会社の誕生と言えると思います。

――中島社長ご自身も、大手映像機器メーカーから転身されたそうで、イベント、コンベンションビジネスの世界には”新しい”かたですね

中島 業務用映像機器の販売を長年仕事にしてきましたが、縁あってヒビノに入社し、こちらでも販売部門を任されていました。ですから、レンタルビジネスもイベント・コンベンションの世界も未経験です。ただ、メーカー時代、ヒビノはお客さんでしたし(笑)、JVR協会(日本映像機材レンタル協会)の懇親会などにも参加していましたので、ヒビノの事業も知っていましたし、この業界に知り合いもたくさんいますので、まったく未知の世界という思いはありません。

――社長就任の打診に驚きはなかったですか

中島 もちろん、まさかのことで不安がないといったら嘘になりますが、人生にそうそうあることではないのですから、前向きに捉えました。せっかくチャンスをいただいたのですから、良い成績を上げたいですし、コンペティターにも負けたくないという気持ちです。

収益基盤の強化と拡大を

――改めてヒビノメディアテクニカルの概要を

中島 ヒビノ本体からプロデュース部とAVCソリューション部の一部の譲渡を受け、スタッフも異動してきました。社員数は一気に約20名ふえ、95名となりました。
プロデュース部の業務は、AVのノウハウを生かしたイベント制作で、企業イベントなどの企画から運営までを請け負っています。ハードがメインのレンタル事業に比して、ソフトを提供する事業であり、取引き構造でも川上に位置しています。また、ここ数年で医療関連の顧客がふえてきており、学会に強いメディア・テクニカルと高い相乗効果が見込まれると判断しました。
AVCソリューション部は、業務用映像機器を販売していますが、こちらも近年、医療系映像機器の取り扱いがふえていました。プロデュース事業と合わせ、医療系分野の販売やサービスを当社に集約させることで、事業効率が向上し、収益基盤の強化、拡大を実現することがねらいです。
当社にはまた、映像・音響や放送、広告、WEB、デザインといったクリエイティブ専門の人材紹介・派遣事業として、ジョブマーケット事業部があります。これを合わせてAV機器のレンタル、販売、人材ビジネスという3本柱が、当社のメイン事業となります。

――具体的には、どんな業界が活躍の場となるのでしょうか

中島 これまで得意としてきた医療分野の学会や、見本市展示会におけるレンタルに加え、プロデュース部が手がけてきたインセンティブや、各種セミナーなどのミーティングビジネスを伸ばしたいと思っています。MICEのすべての分野が主戦場となりますので、ハード、ソフトどこからでも入っていける当社の強みを発揮してたいですね。
また、フィールドが拡がることで販売部門でも、市場に密着した提案ができると考えています。販売は私の得意分野でもありますから、積極的に取り組んでいきたいと思います。

――ヒビノ本体と重なる仕事もあるのでは

中島 展示会の分野では、かぶる案件もでてくるかもしれませんが、ヒビノの得意分野はライブやスポーツなどのエンターテインメント系なので、棲み分けはできています。むしろ、これまで以上に現場レベルのコミュニケーションが密になるでしょうから、情報交換や機材の貸し借りがスムーズになり、サービス向上につながると思います。

――新体制への変化に、社員にとまどいもあるのでは

中島 私の社長就任、事務所移転、事業の移管、ヒビノからの合流と、新体制への移行が短期間で実施されましたからね。ヒビノとメディア・テクニカル、同じグループとはいえ、企業文化の違いはあるはずですから、スタッフには多少のとまどいもあると思います。でもそれは、私自身も経験してきたことですから心配していません。いいことに今回の移転で、お互いにとって新しい事務所となったわけですし、同じフロアで仕事をしていくなかで、すぐにひとつになれますよ。
まずはお互いを知ることです。これまでメディア・テクニカル単体で考えてきたことを、ヒビノのノウハウと結びつけることで、何か生まれるのではないかと。お互いに知恵を出し合っていけば、すごいアイデアが出てくると思います。また、外部の協力会社も多数あるのですから、こうした資源を有効活用することで、伸びていけると確信しています。

スタッフのスキルを平均化し売上げ倍増へ

――経営者としての当面の取組みと今後の目標を

中島 社内外でヒビノブランドを浸透させることと、会社を大きくすることが、私に与えられたミッションだと思っています。
私のなかでは、現在の売上を倍増することを目標に、できるだけ早期にこれを実現したいと考えています。こんな時代ですが、この世界を知らなかった私から見れば、展示会産業のキャパシティは、思っていた以上に大きいです。大型施設での展示会などの催事はもちろん、ホテルなどで開催されるセミナーも本当に多いなと。だから、やり方しだいではチャンスはあると思えるんです。
そして、まず取り組みたいことですが、営業部隊の強化です。これは、ビジネスの最前線に出て、お客さまから直接教えてもらうことが、いちばん勉強になると考えています。スキルアップのための研修セミナーに出すことも有効かとは思いますが、われわれのような仕事は、実践で感じ得ることが一人ひとりを強くすると。基本は現場です。
また、旧体制を見ていて感じたことは、個人のカラーが強いこと。悪い意味ではなく、スキルの高い特定のスタッフが、何でもやってしまう状況が多いと感じました。会社経営の面からは、受けた仕事は誰でも同じレベルでこなせることが理想です。だからここについては、システマチックに態勢を整え、必要ならマニュアルも導入し、スタッフのスキルを平均化できればと考えています。もちろん高いレベルで。

「見本市展示会通信」2010年10月15日号掲載