東北大学 寺田 賢二郎教授に世界計算力学会議の誘致成功を聞く

■新分野や手法を取り込み無限の可能性生み出す
―今回、誘致が成功したポイントについてお聞かせください
先にお話した小中学生・高校生向けプログラムのほか、会議ビジョンとして掲げた〝計算力学の無限の可能性を追求〞も高く評価されました。計算力学はこれまでもさまざまな分野を取り込んで発展してきましたが、今後はこれまで取り込んでこなかった分野や手法も視野に入れることで、無限の可能性を生み出します。

―具体的にはどういった分野や手法が挙げられますか
今、人工知能(AI)やそれに伴う機械学習・深層学習は、世界的にも今後ますます注目されていく分野です。そういったソフトコンピューティングの分野は計算力学分野ではまだ十分に展開されていないので、積極的に狙っていきたいです。

また、医療や創薬の分野も重要視しています。計算物理や計算化学といった分野も交えつつ会議を大きくして、従来とは異なる層への来場促進も図れればと思います。さらに、我が国は災害大国ですから、防災・減災のためのシミュレーション技術の発展にも寄与でいる会議にできたらと考えています。

―開催地としての横浜の評価はいかがでしょうか
計算力学は細分化されている分野なので、WCCMにおいては数十人規模のセッションを同時に50以上行う必要があり、パシフィコ横浜であればその要件を満たすことが可能です。主幹団体の一つである日本計算工学会では2015年にパシフィコ横浜で国際会議を開いた実績もあり、立地やアクセス性、スタッフの質に問題がないことは把握していました。

―競合都市であった上海に対するアドバンテージはどこにありましたか
われわれには日本計算工学会や日本計算力学連合といった組織の協力なサポートがあり、金銭面を含めさまざまなサポートを受けられるのが強みでした。特に日本計算工学会には約900人、日本計算力学連合には約200人、合計1100人以上の会員がいますが、これが同時にIACMのメンバーになります。これは世界最大の数であり、組織としての強みがIACMに伝わったのが誘致に結び付いたと言えます。

■MICEアンバサダーとして橋渡しの役割
―WCCM開催までの間、どのような活動をしますか
広報活動に注力したいと思います。2年後にパリで開催されるWCCM 2020では開閉会式やバンケットの場で日本開催のPVを流す予定です。もちろんWCCM以外の計算力学関連会議の場でも映像は活用して、2022年に日本に来たくなるような空気を醸成していきます。

―JNTOのMICEアンバサダーとして、今後の日本におけるMICE開催への思いをお聞かせください
学術的な日本のプレゼンス向上というのは、分野を問わず望んでいることだと思います。WCCM誘致にあたってはJNTOからは手厚いサポートをいただきましたので、今後日本にMICEを誘致しようと尽力している方が同じようなサポートを受けられるように、橋渡しを行える存在になれれば幸いです。学術に携わるものとして、日本を良くするための活動には協力を厭わないつもりです。