Report:日本映像機材レンタル協会(JVRA)海外視察ツアー報告会 パネルディスカッション

国内のAV機器レンタル会社と主要メーカーで構成される日本映像機材レンタル協会(JVRA)は7月19日、ホテルイースト21で「業務担当責任者会議」を開催し、JVRA視察ツアー2019の報告をパネルディスカッション形式で行った。
ツアーでは、オランダ・アムステルダムのRAIコンベンションセンターで開催の、AVや電子システムの総合展示会「ISE(正式名称:Integrated Systems Europe)」と、アメリカ・フロリダ州オーランドのオレンジカウンティコンベンションセンターで開催の「InfoComm(インフォコム)」を視察。ISEを前半、InfoCommを後半に分け、セッションの一部を紹介する。


パネルディスカッション① ISE 2019

・〈ファシリテーター〉石丸 隆さん/シーマ
・〈アシスタント〉菊地 利之さん/ヒビノ
・〈パネラー〉鈴木 彩芽さん/タケナカ
・〈パネラー〉新井 正紀さん/シネ・フォーカス
・〈パネラー〉鶴川 和也さん/映像センター

■注目のLEDディスプレイ

新井 LEDは日本ではなかなか大規模な製品を見られませんが、この展示会では多くの会社が大規模なLEDディスプレイを出展していて、比較しやすかったです。
1月に光和の内覧会でAbsenの1.5mmピッチのものを見かけて、評判も良かったので、ずっと気になっていました。ISEで同製品の幅10mのディスプレイを展示するという情報を掴み、早速ブースを見に行きました。
「Absen Aries AX1.5」に使われているIMD素子は、通常の1.5mmピッチのLEDよりも、丈夫で壊れにくいと聞いていました。実際に製品を見てみると丈夫さよりも、すぐに修理ができる点に魅力を感じました。
壊れた部分が分かりやすいため、その部分を取り替えることで、1日程で修理が完了するとのこと。イベントにも向いている機材だと思います。

石丸 ただ、まだ導入するにはコストが高めのアイテムですよね。

新井 そうですね。だから、色んなブースで同じような製品を見られる機会があればできるだけ見比べて、慎重に購入しました。

石丸 なるほど。自社でLEDの球の修理はできるんですか?ピッチが1.5mmにもなると難しそう。

新井 技術的にはできなくはないんですよ。でも、カーボンが貼ってある製品の場合、カーボンをはがして付ける作業が必要になるんですが、その作業は中国に持って行かないとできないんです。カーボンを貼っていないタイプは温度の管理調節ができるハンダゴテがあれば作業できるので、いずれは自社で修理できる技術を持ちたいですね。

菊地 ほかのお二人は、LEDディスプレイで気になった商材はありましたか?

鈴木 Samsungの「The Wall」、0.84mmピッチのLEDディスプレイを初めて見ました。映像で映っている車が、そこに存在しているように見えるくらい鮮明で、初めて映像に感動しました。
またピッチの細かさではなく、空間表現のためのツールとしてLEDを提案しているブースもあって面白かったです。 “映像を見せる”だけでなく、“空間を映像で変える”使い方というんでしょうか。階段型のものや、システムパネル状になっていて造作の壁とLEDパネルを合せて組めるものが出ていました。LEDディスプレイは、四角い画面で映像を見るためのものから、映像を空間に溶け込ませるためのものとしても進化していると感じます。(写真1)

写真1

石丸 このLEDを組み込んだシステムパネルは、ほかの参加者の皆さんからも注目度が高かったですよ。

菊地 ここ最近で、まだ日本で導入事例を見たことがないという点では、展示会などで使われるシステムパネル自体がLEDになっていて、50cm四方のLEDを組み合わせることで壁面自体がLED表示できるシステムの展示が数社ありました。
裏側にもフラットなパネルを貼っているため、ケーブルがむき出しになりません。パネルの横に穴が空いていて、そこから結線していくので、乱雑な印象も与えません。フレームには強度があり、寿命も長くて軽量。メーカーの担当者は「使い回しができるから、タイルだけ入れ替えていけばフレームは何年でも使える」と言っていました。(写真2)

石丸 確かに何にでも使えるかもしれないけど……これを貸し出すとしたら、ただ貸し出すだけじゃなくて“このパネルで何ができるか”“どんな演出ができるか”という具体的なイメージを持って、空間演出の視点から提案できるようにしないといけないハードかも。レンタル商材と運用していくのは、きっと一筋縄じゃいかないね。

鈴木 実際にどう使えるか、こっちが選択肢を出していく形になりそうですね。それに加えて、このパネルの特徴を生かす映像コンテンツも必要になってくると思うので、同じような演出ができる従来の方法と、コストも比べる必要がありそうです。

写真2

鶴川 僕はSONYの「Crystal LEDディスプレイ」に衝撃を受けました。性能の評判を聞いていましたが実際に見たことがなかったので、その鮮明さに驚きました。これをぜひ自分
のクライアントに提案して、イベントを実施してみたいです。自分が担当しているセミナーの案件は、細かい文字を表示させるときもありますし、アクセサリーブランド系の仕事では、モデルさんの肌とアクセサリーの両方をきれいに映す必要があることも多いです。特に高い解像度は、多々クライアントから求められる要素でもあるので、これを提案できたら確実に強みになると思います。

菊地 ディスプレイに映像が映っているというより、空間があって人がいるように見えるくらいきれいでしたよね。遠くから見るともうひとつブースがあるみたいに見えました。

鶴川 ただ、かなりしっかりとした設営時間が取れないと実際にイベントで使うのは厳しそうだなと。

石丸 確かにスペシャルな状況じゃないと、イベントで使うのは難しいと思います。クリスタルディスプレイは設営に時間が掛かるものだし、日常から汎用的に使うのはハードルが少し高いかも。でも、映像はとにかく群を抜いてきれいだから、使うことができれば素晴らしいものができあがると思います。