スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019がさいたまスーパーアリーナで開幕

さいたまスーパーアリーナで「スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019」が幕を開けた。本イベントはスポーツビジネスに関わる専門見本市とコンファレンスで構成されたビジネスイベントで11月19・20日の2日間で開催する。主催はスポーツ産業学会、コングレ、スペースメディアジャパン。

 ウェルカムスピーチ 

19日のオープニングではウェルカムスピーチが実施され、日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長やスポーツ庁の鈴木大地長官、埼玉県の大野元裕知事、日本スポーツ産業学会の尾山基会長(アシックス会長)が登壇した。

尾山基会長

はじめに主催を代表し尾山会長が挨拶し、先日終了したラグビーW杯について触れ、「座席数の99.3%にあたる170万人のチケットが売れ、そのうち40万人が海外からの観戦者だった。次の東京2020オリパラは1000万人が来場することを想定していて、ラグビーの比率で考えると海外からは240万人以上が日本へ来ることになる」とコメント。ラグビーの決勝戦が行われた横浜市内は決勝戦の時期、宿泊費が高騰していたことから「来年はよりホテル事情がタイトになるのかと想像している」と話し、さらに2021年のワールドマスターズについても関西広域圏の移動手段について懸念する姿勢を見せた。

また2025年の関西万博については、食生活と運動、健康需要を伸ばすといったものがキーワードになっていること、さらに世界の潮流として“ゼロエミッション”“SDGs”といった環境への配慮、地球の健康への注目が高まっていることを受け「健康をどのように広めていくかが今後全世界の基準になる。そしてヘルシープラネットつまり健全な地球とともにスポーツにどのように取り組んでいくのか、本イベントでは考え方も提案していく場にしていきたい」と述べ、さらに学会として「今後は研究論文出すだけでなく、出したうえで提案・マーケティングを進める」と語った。

鈴木大地長官

鈴木大地長官はスポーツ庁が取り組みとして掲げる3つの柱①スタジアム・アリーナ改革②スポーツ団体の経営力強化③スポーツと他産業との融合について話し、“スタジアム・アリーナ改革”では「熊本での震災ではプール施設が配送センターになり、スポーツ施設が避難所となったと聞いた。スポーツ施設は作ったら終わりということではなく、街・人・仕事の創生総合戦略の一つとしての役割がある」と発言。“スポーツ団体の経営力強化”については、チームの経営について選手やスポーツ出身が多くなっているなかで、経営・マーケティング能力といったビジネスの専門性ある人を採用していかなければ今後の競技団体の収益化は難しいものになるとの考えを示し「今後もスポーツ界とビジネス界の交流深めていきたい」とコメントした。“スポーツと他産業の融合”については経済界や学術界の持っている力が重要とし、「最新のテクノロジーや健康食など連携することががスポーツの魅力をさらに高めていくのではないか」と話し、スポーツオープンイノベーションの事例としてハンドボール協会と共同して新事業を創出するアクセラレーションプログラムで、スタートアップ企業から50を超える提案があったことを報告した。そのほかスポーツツーリズムの拡大についても注力していく姿勢を見せ「インバウンドに人気の武道ツーリズムなどを活用して地方に色んな客層をまねいていかなければいけない」と続けた。

スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019では入場やコンファレンス聴講受付に初の試みとしてパナソニックの顔認証システムを導入した
大野元裕埼玉県知事

埼玉県の大野知事は日本のスポーツ産業の市場規模は5.5兆円でアメリカの10分の1であること、また国が2020年を契機としてAIなどあらたな手法を盛込みながら2025年までに市場規模を3倍にする目標を立てていることから、埼玉県としての姿勢について言及。「スポーツが作る活力ある埼玉をつくるように多くの計画を立てている。スポーツ分野のスタートアップ企業を支援するためのイノベーションリーダーズ育成プログラムを進めるべく、地元スポーツ企業との連携を進めている」と述べ、スポーツ分野におけるオープンイノベーションを全国に先駆けてやっていることをアピールした。

 

川淵三郎会長

川淵会長はかつてのスタジアムやアリーナについて「赤字の垂れ流しの箱モノをつくったと言われていた」と振り返りながら、現在について「日本でこのようなイベントが出来るということは本当にうれしいこと」と発言。「昔は施設であるハードを作ったらそのまま、という考えだったが現在はハードを作ったら次にソフトを考え、ランニングコストを加味しても収益を上げるような施設を作るべきという考えになっている」と、新施設だけでなく既存の施設でも運営への意識が変わってきていることを評価した。さらに来場者についても「人をスタジアムに集めることについて、若者を呼ぶべきという話が出るが、お金をもっているシニア層が来れば、孫も来る。シニア層を呼び込むソフトを考えるべきだ」と持論を展開した。

 出展者の声 

競技用ボールメーカーで国内トップクラスのシェアを誇るモルテンは、同社が得意とするボールに加え、バスケットゴールとコート、ボールラックやタイマーなどがセットになった「移動式バスケットボールコート3×3用『Game Unit3』」のはじめ、イベント会場などでバスケットボール体験が可能になる設備をブースに展開してアピールした。

担当者は「バスケットコートとしての利用はもちろんだが、例えばイベントでコートを設置すればハーフタイム中にはチアダンススペースとして展開できる」と話す。販売開始から1年ほどだが、地域イベントなどさまざまな場所で利用実績があるそうで「イベントで子どもたちが体験することで、バスケットの魅力を知る第一歩となればいい」と述べた。ほかにもバスケットコートに設置した障害物をよけながらシュートタイムを競うツールなどもブース内のプレイで訴求しており、イベントだけでなく部活や体育といった教育の現場でも活用を狙う。商品は販売だけでなくレンタルにも対応している。

slido

NECネッツエスアイは5G実現後、スタジアムでの利用促進をが期待される映像サービスを中心にアピール。通常ファンは見ることができないロッカールームやフィールドまでの通路など、選手の視点を疑似体験的に楽しむことができる撮影・配信サービス「SmoothCapture」や大型サイズのディスプレイ・スクリーンで中継を可能にして離れたファンゾーンとの交流などをスムーズにするコミュニケーションツール「SmoothSpace2」、スタジアムに設置された大型ディスプレイと観客の持つスマートフォンと連動させたにリアルタイムでアンケートシステム「slido」を展示した。

slidoの担当者は「アンケートでスポーツでは今日のMVPをその場で決めたり、コンサートではアンコールの曲などを決めることが可能になる。来場者のコメントなどもリアルタイムにスマートフォンなどに流すこともでき、不特定多数の意見が集まる場でも安心なフィルタ機能が備わっている点が他社のアンケートシステムとの大きな違い」と述べた。

 今回のスポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019は展示会自体もSDGsに取り組むきっかけを提供する場となるよう主催側も持続可能な運営を目指すことを明らかにしている。出展者ブースでは持続可能な開発目標の17のゴールに向けた出展者の取り組みをアイコンで提示していたほか、会場内にはマイボトルの持参を推奨する無料給水スポットを設置していた。