株式会社日立ハイテクノロジーズ(執行役社長:宮﨑 正啓/以下、日立ハイテク)は、歩行動作の分析から、筋肉・骨格に関する運動器*1の機能低下要因の推定および改善につながるトレーニングメニューの提案をAI(人工知能)によって自動で実施するシステムを開発しました(以下、本システム)。本システムにより、中高齢者の運動器機能の維持・改善を支援することで、健康社会の実現に貢献します。
近年、高齢化が進む中、「健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間(健康寿命)」が注目されています。健康寿命に影響を与える大きな要因の一つとして運動器の障害がありますが、運動器の機能低下は40 代から始まり、将来の要介護状態の原因になるとされています。こうした中、中高齢者を中心に健康増進や未病の改善、運動器疾患の予防の重要性が高まっています。
日立ハイテクグループでは、事業環境が目覚ましく変化する中、オープンイノベーションを通じて社外の技術やビジネスとの融合を活用し、新事業の創生を推進しています。その一つとして、2016年から、北海道大学大学院医学研究院整形外科教室と共同で医療現場における疾病による歩行異常の計測・解析技術に関する研究*2(以下、本研究)に取り組んできました。本研究の成果に加え、株式会社日立製作所研究開発グループ、社会医療法人松田整形外科記念病院および同病院が運営するメディカルフィットネスC—Link+(以下、C—Link+)の協力により、このたび本システムを開発しました。
本システムは、専用のカメラで撮影した個人の歩行動作をAIで分析し、運動器機能低下の要因・予兆となる歩行動作のパターンを特定します。さらに、個人の歩行パターンに合わせ、AIが運動器の機能低下予防および改善につながるトレーニングメニューを作成します。従来、歩行動作の分析によるトレーニングメニューの作成には医師・理学療法士・トレーナー等の専門的な知識や経験が必要とされていました。本システムは、C—Link+にて蓄積されたノウハウを学習したAIを活用することで、フィットネスクラブにおいてトレーナー・スタッフの知識や経験に関わらず、いつでも高品質な分析データおよびトレーニングメニューの提供が可能になります。また、介護リハビリ施設においては理学療法士の機能訓練プログラム*3の作成支援等に貢献します。本システムの活用により、中高齢者を中心に、運動器の機能低下予防や改善を目的としたトレーニングが簡単に受けられるようになり、さらなる健康寿命の延伸が期待されます。
なお、本システムは、2020年2月5日(水)から7日(金)まで幕張メッセ国際展示場(千葉県)にて開催されるスポーツビジネス産業展に出展します。
日立ハイテクは、本システムの提供により運動器機能の維持・改善をサポートし、個人の生活の質向上や社会的負担の軽減に貢献してまいります。また、今後も技術の先行的な探索・獲得を進めるとともに、さまざまな社外組織と広く連携し、新事業の創生を推進していきます。
【本システムの概要図】
*1 運動器:骨、関節、筋肉、靱帯、神経など人間のからだの動きに関わる組織の総称
*2 高齢者に向けた健康維持・向上や、アスリートなどスポーツ関係者の能力維持・向上など、運動器の障害の予防と早期検出を目的とした「健康状態の計測方法」に関する研究を行っています。
*3 機能訓練プログラム:病気や怪我、老化のために衰えた機能を回復するために行う運動療法などの訓練
◆フィットネスクラブにおける想定効果
1) 運動器の維持、改善を目的とした持続的に取り組めるパーソナルメニューの提供
2) トレーナー、スタッフによる分析のばらつきを抑制し均質かつ高品質なサービスの提供
3) 機能改善効果の定量化による会員のモチベーションの向上
4) 会員とのコミュニケーション増加
◆介護リハビリ施設における想定効果
1) 機能訓練のプログラム作成のサポート
2) 改善効果の定量的な把握
3) 自費リハビリ希望者を対象に新たな運動器リハビリテーションサービスの提供
4) 施設利用者とのコミュニケーション増加