【寄稿】国際博覧会を語る MICE・展示会業界にとってのビジネス・チャンスとは 桜井 悌司 氏_後編

▽4.万国博覧会のパビリオンの種類

万国博覧会・国際博覧会には、多数のパビリオンが建設される。MICE・展示会関係者はビジネス・チャンスを探す上で、どのようなプレーヤーがパビリオン等を建設・運営するのかを知っておかなければならない。2005年の愛・地球博、2010年の上海万博、2015年のミラノ万博、2020年ドバイ万博の4つの万国博覧会から、パビリオンの分類を行ってみよう。

1) 公式参加国・国際機関のパビリオン
最初のプレーヤーは、公式参加国・地域・国際機関である。公式参加国と言った場合、国・地域・国際機関を含める。今、下記の4つの博覧会でその内容をみてみよう。

公式参加国は容易に判断できるが、地域というのは、香港、マカオ、台湾、プエルトリコ等、特定国に属しているが、独立的な存在を言う。国際機関は、国際連合や国際赤十字のような存在である。92年セビリャ万博の際は、国連、国際赤十字・赤新月館、国際オリンピック委員会(IOC)、EUが参加し、その後、2000年ハノーバー万博を経て、愛・地球博では、国連、国際赤十字・赤新月館、経済協力開発機構館(OECD)、国際熱帯木材機関館の4つの国際機関が参加した。

2010年の上海万博から、多数の国際機関が参加するようになった。主として国連傘下の機関や赤十字関連からの出展が多いが、その他の小さな国際機関も多数出展する。単独のパビリオンを持つケースもあるが、大多数は、国際機関等の合同館に入るケースが多い。公式参加国が少ない場合、国際機関に参加を呼びかけることが多い。

登録博の場合、前述のように、主催国が参加国にスペースを無償で提供し、参加国が独自にパビリオンを建設することになる。例えば、ミラノ万博の場合、独自に単独パビリオンを建設した国は、52カ国であった。その他の貧しい発展途上国は、主催国が建設する合同館(例:アフリカパビリオン、南太平洋パビリオン、カリブパビリオン等、ミラノ万博の場合、米、穀類、野菜類、コーヒー、ココア等に商品分類した合同館を設置した)等に入居する。
主催国によってルールは異なるが、多くの発展途上国は、主催国からの支援を受ける。
主催国による発展途上国への支援額は、正確な数字はないが、セビリャ万博の時は、100億円、上海万博は、1億ドル、ミラノ万博の時は8600万ユーロであった。2025年大阪・関西万博では、約240億円となっている。

項目 愛・地球博 上海万博 ミラノ万博 ドバイ万博
開催年
種類
2005年
認定
2010年
登録
2015年
登録
2020年
登録
公式参加国 125カ国・
国際機関
(国数121)
246カ国・
国際機関
(国190)
140カ国・
国際機関
(国数115)
247カ国・
国際機関
(国182)
入場者数 2,205万人 7,308万人 2,150万人 2,500万人?
テーマ 自然の叡智 より良い都市、
より良い生活
地球に食料を、
生命にエネルギーを
心をつなぎ、
未来をつくる


2) 主催国のテーマ・パビリオン

通常、主催国は、自国のパビリオンに加え、博覧会のメイン・テーマやサブ・テーマに沿った形で、テーマ館を複数建設する。博覧会において、テーマやサブ・テーマは極めて大切で
あることが理解できよう。

3) 主催国の州・省・県・市のパビリオン
開催都市もパビリオンを建設することがある。
* 例えば、愛・地球博の場合、長久手愛知県館、瀬戸愛知県館、中部千年共生村、名古屋市パビリオン・大地の塔がつくられた。
* 国際博覧会ではないが、1990年に大阪で開催された「花と緑の博覧会」でも大阪府出展の「いちょう館」や大阪市出展の「咲くやこの花館」を思い出してもらえば理解できよう。
*92年セビリャ万博の時は、コロンブスアメリカ大陸到達500周年記念もあり、スペインの17の州がパビリオン参加した。

4) 企業・NGOパビリオン
国際博覧会では、主催国の企業や多国籍企業やNGOも参加する。
* 例えば、愛・地球博の場合、左記の企業が参加した。
ワンダーサーカス電力館、JR東海超電導リニア館、ワンダーホイール展・覧・車、三菱未来館、トヨタグループ館、Nature Contact日立グループ館、三井東芝館、夢見る山、ガスパビリオン、わんパク宝島、ロボットステーション、モリゾー・キッコロ館、ロータリー館、NEDOパビリオン
* 上海万博の場合、25企業によって18のパビリオンが建設されたほとんどが中国の国営企業であったが、Coca Cola Pavilion、Cisco Pavilion、Japanese Industry Pavilion(日本産業館)、Republic of Korea Businessの外国企業も出展した。
* ミラノ万博の場合、左記の企業が出展した。
ALESSANDROROSSO-JOOMOO、CHINA CORPORATE UNITED PAVILION、COCA COLA、FEDERALIMENTARE、NEW HOLLAND AGRICULTURE、VANKE
* 通常、企業パビリオン出展の場合、博覧会の公式スポンサーになり、その後出展することになる。公式スポンサーは、様々なカテゴリーがあるが、パビリオン参加が最も重要なスポンサーである。

5) 営業施設ないしは非公式参加者―コンセッション
博覧会会場内には、かなりの数のレストランやお土産グッズや飲料の販売スポット等が出店することになる。
* レストラン、売店等商業施設。通常、売り上げ額に応じて、博覧会公社にロイヤリティを支払うのが一般的ルールである。
* レストラン、売店は、公式参加国のパビリオン内にも設置されるが、ここでも通常、売上げ高に応じてロイヤリティを博覧会公社に支払うことになっている。
* レストランや売店等の面積は、総面積の20%以下と決められているが、発展途上国などは、必ずしも守っていない。

6) その他
万国博覧会では、主催国は、公式スポンサーを募る。
* 例えば、ドバイ万博の場合のPremier Partnersは左記の企業である。
Accenture、Cisco、DP World、Emirates NBD、Etisalat、Emirates、Nissan、Pepsico、SAP、Siemens 他1社
* ミラノ万博の場合のパートナーズの分類は左記の通りである。
① Official Global Partners7企業 2000万ユーロ以上の寄付
INTESA SANPAULO(銀行)、SAMSUNG(電子)、TIM(電話・通信)、ENEL(電力)、LEONARDOFINMECCANICA(機械)、ACCENTURE(システム)、
FCA/CNH(自動車)
② Official Premium Partners 2企業 1000万~2000万ユーロの寄付
③ Official Partners 16企業 Official Global Carriers3企業 300万~1000万ユーロの寄付
*大阪・関西万博の場合
① オフィシャル・パートナー 200万円以上か現物で400万円以上。現在までに196組織が登録されている。
② オフィシャル・サポーター 50万円から100万円。現在までに91社が登録されている。
③ 上記以外に、スペシャル・パートナーとして、日本万国博覧会記念基金がある。