寄稿 新型コロナによる展示会延期・中止の影響について 世界の動きは 寺澤 義親 氏_後編

■9.支援決定の動向
UFIが各国の展示会イベント支援策の状況については経済全般の支援を含め一部紹介しているが(参照:www.ufi.org/coronavirus)ここでは中国の広東省、北京市等に続き世界で
も早く展示会イベント業界への支援を決めた香港、シンガポール、デンマーク、タイを紹介する。

・香港
展示会コンベンション産業のコロナ禍からの再建支援に10億2000万香港ドル(1億3000万米ドル)投入を決定。
香港政府は2月24日「アジアのイベント都市としての香港の評価」を維持するために展示会とコンベンション主催者と参加者を助成する支援を決めた。これについて香港コンベンション展示会センター(HKCEC)のManaging DirectorのMs.Monica Lee-Mullerは「2019年後半のデモ騒動とコロナ禍の影響を受けていた業界にとってタイミングの良い支援だ。これは展示会コンベンション産業の貢献を評価し海外参加者の香港への復帰を歓迎する強いメッセージとなり新たな主催者を含めすべての国際イベント主催者を勇気づける支援になる」と高く評価している。

このスキームでは
▼香港のHKCECとAsia World Expoで開催されるすべての展示会と国際コンベンション(400人以上の参加者と少なくとも海外参加者比率が50%)の主催者に対して、スペース料100%を助成する。この措置は出展者を維持するために主催者がマーケティングやロジスティックス、さらにイベント運営をスムーズにするために要する追加経費等の財政負担を緩和する。

▼香港貿易発展局(HKTDC)が2月から7月までに主催する展示会に出展する地元中小企業に対して1万HK$を上限に、出展料の50%補助を行う。さらにHKTDCが延期された展示会と会議(400人以上の参加者)を含めイベントを開催する時にはすべての出展者と会議参加者は1万11HK$(1282米$)を上限に出展料(参加料)の50%補助を受けることができる。適用期間は2020年7月から1年間となる。これに要する予算は4億HK$。

▼その他、民間の主催者がHKCECとAsia WorldExpoで展示会や国際コンベンション(400人以上の参加者と海外参加者の比率が50%)を開催する場合は、出展者と会議参加者を補助するのではなく主催者に対してスペース料の100%を補助する。
適用期間は2020年7月から1年間。この措置の予算は6億2000万HK$。この場合、2施設はスペース料補助金をすべての主催者に引き渡し、主催者は補助金のメリットを出展
者、参加者に反映させるように政府は指導する。この支援についてInforma Market AsiaのMr.Michael Duck , Executive Vice Presidentは「香港政府の支援は香港で事業を継続していくうえで心強い」と高く評価。

※ ※ ※
なお商業経済開発長官は同時にコロナ禍の終息後に世界各地で香港をアピールするキャンペーンを強化するために香港観光局(HKTB)に7億HK$。香港貿易発展局(HKTDC)に1億5000万HK$の予算を別途計上している。

・シンガポール
今回のコロナ禍への対策として政府は3月26日に影響を受けたセクター支援としてResilience Budget(480億S$)を発表。このうち4億4000万S$を観光分野支援に充当するがうち3億5000万S$は航空産業支援に(シンガポール航空へは別途直接支援)残りの9000万S$が観光リバウンド支援向けとなっている。

MICE関係者は特別予算のうち雇用維持スキーム(Jobs Support Scheme=JSS)とProperty Tax Rebate(固定資産税の払い戻し)の適用を受けることができる。しかしJSSではMICE施設、航空会社、空港関係、ホテル、旅行代理店、クルーズ船関係だけが現地スタッフ1か月当たり給料4600S$を上限に、75%補償(9か月間)するとなっているが主催者その他のMICE関係企業は25%補償となっている。
固定資産税の払い戻しでもSingapore Expo, Suntec,Changi Exhibition Centerは100%、Marina Bay Sands, Resort World Sentosaは60%、その他多くは30%となっている。有力なMICE企業関係者の多くは「政府の支援は前向きな1歩ではあるが、今回の措置ではMICEエコシステムを支える主催者、PCO、DMC、サービスサプライヤー等はカバーされていない。観光、航空産業、飲食業と同様にMICE業界も深刻な影響を受けており今後の生き残りも厳しい状況に直面している。このままではMICEエコシステムの維持が影響を受けてしまう」と懸念し更なる支援を求める声が多い。

・デンマーク
EUで最初の国別支援予算(1200万ユーロ)を決定
デンマーク政府は3月11日に欧州委員会に1000人以上の参加者のイベント主催者またはシニアや脆弱な人々等を補償するための支援スキーム(1200万ユーロ)を通告し、欧州員会は13日に欧州支援規則に適合していることを確認、この支援スキームを承認した。これはEU加盟国では最初の国別支援策となった。これで新コロナ感染防止でイベントをキャンセルまたは延期した主催者の損失が補償されることになる。

・タイ
タイ政府は事業停止で深刻な状況に直面する中小企業を主に対象とする30億3000万米ドル以上の支援パッケージを決定
この政府支援を受けてTCEBは4月20日に展示会産業への特別支援を発表した。緊急支援第1弾は100万米ドルの予算でコロナ禍が終息してからの復興段階では1400万米ドルの予算を計画している。第1弾の支援では展示会主催者と関連企業を支援する既存のパッケージ「Thailand Extra Exhibition」を強化する「Thailand Extra Exhibition Plus」を打ち出している。
さらにリアルイベントの代替手段になっているオンラインイベント開催の支援事業としてVirtual Meeting Space(VMS)と施設の安全対策の強化支援事業としてのCOVID-19 Free Meetingsの2つの新たなプログラムも発表している。VMSは5月から開始でCOVID-19 Free Meetingsは1施設ごとに3万バーツが助成され4月〜6月に実施される。この他TCEBではCOVID-19に関する政府関係当局の情報や支援に関する問い合わせを受けるためにInformation Centerも設置している。