▼3.今後の展示会業界はどうなるのか
では、上記のような予測不能の環境にあって、展示会業界がどうなるのかにつき、筆者の個人的見解を以下に述べたい。コロナの終息時期は不明であるが、オリンピックが予定通り行われるという前提で考えるとざっと2年先までは、厳しい状況が続き、リアル展示会産業の規模も縮小することになるものと思われる。
外出自粛によるテレワークの普及、オンライン、VRの普及、移動の制限、サプライチェインの分断、需要の急激な減少等により、多くの企業の業績が悪化するものと見られる。また当面、展示会産業の開催規模が縮小するものと考えられるので、競争が激化し、強い展示会主催者のみが生き残る状況になるものと思われる。
その背景としては、下記のような点が考えられる。常に最悪の事態を予測しておくべきであろう。
① 米中の経済・貿易関係の悪化による世界経済の停滞
② 石油価格の過剰な下落によるオイル産出国の経済・需要の低迷
③ 英国のEU離脱等による欧州経済・需要の不振・停滞
④ コロナウイルスの影響による新興国からの資本流失、経済状況低迷
⑤ コロナウイルスの影響による海外渡航、外国人ビジネスマンの訪日者数の減少
⑥ 日本経済の低迷、少子高齢化、過剰委縮、生活様式のニューノーマルへの劇的な変化
⑦ 日本企業のコロナウイルス蔓延による業績低迷
⑧ リアル展示会に変わる新しいビジネス様式の出現 等々。
では、今後の展示会業界で、勝ち抜くにはどうすればいいのであろうか? 主催者、団体、政府は何をなすべきかを考えてみたい。
▼4.主催者が考えるべきこと
第1は、展示会のコンセプトを明確にすること
目的、目指すべきゴール、業種の明確化、出展・来場することによるメリット、コストパフォーマンスの面から、他の展示会とどう違うのか等を十分にアピールすることが必要となってくる。
第2は、マッチング機能を最大限強化し、効率化を図ること
展示会に出展することによって、特にB to Bの場合、具体的成果が出る方法を主催者はより真剣に考えることが重要である。前述のように、会場による最大収容者数が設定されると、出展者にとって、来場者減少によって、コストパフォーマンスが悪くなり、成果が出にくくなることが考えられる。そこで、主催者は、出展者と来場者間のビジネスマッチング機能を最大限に強化することが必須であろう。日本の展示会は、商談型というよりPR型と言われるが、商談型に移行すればするほど勝者になれる。そのためには、内外の良質の出展者と良質の来場者の両方を多数誘致することが必要である。そのためには、バイヤーのデータベースを日常的に充実させることが必要である。加えて、マッチングの技術・手法も考える必要がある。マッチングの成功の秘訣は、双方があらかじめ詳細な情報を交換し、面談の時には有意義な会話・商談ができるように準備することである。それができない主催者は、負け組になる。一般的には、展示会を専業とする民間の主催者は、来場者の誘致に力を入れる傾向にあるので、有利になってこよう。
第3は、コロナ終息後のニューノーマルな事態に対応するビジネス形態を考えること
コロナ問題終息後でも、ソーシャル・デイスタンシングを取るという問題は残るものと考えられる。面談しなくてもできる営業・商談の方法はないか? オンラインでできる報告・セミナー・展示会は? リアルとオンライン・ヴァーチャルとの協働による仕事の進め方は、等につき不断の創意・工夫が必要である。
第4は、海外の展示会動向にもっと目を向けること
今回のコロナウイルスの影響はほぼ全世界に及んでいる。世界の展示会業界、イベント業界、観光業界も同様の被害を被っている。今後、欧米やアジアの展示会業界がどのように立ち直っていくのか、SNS,ウエブサイト、オンライン、VRなどをどのように駆使していくのかに注目していきたい。海外の優れたアイデアやヒントがあれば、貪欲に吸収することが必要である。
第5は、展示会やMIC人材の育成と若返りを図ること
コロナウイルス禍によって多くのことが大きく変わった。MIC産業も展示会産業も体質が脆弱であることがわかったし、産業自体の重要性が予想外に理解されていないことも判明した。これを機会に、展示会業界もより真剣に業界の人材育成について考える必要がある。可能な限り、トップも交代し、より若い人材に任せるようにすべきである。残念ながら、昔の経験もあまり役に立たなくなった。むしろ、AI、IoT、ヴァーチャルの時代に対応するには、若くて柔軟な発想で立ち向かうようにした方が良い。
そして、あらゆる事態に対応できる適応力・柔軟性、デジタルの動向に対応できる能力、耐久力・忍耐力、国際力4つの要素を持つ人材を育てていくことが望まれる。