寄稿 新型コロナウイルス禍終息後、オリンピック終了後の展示会産業を考える 桜井 悌司 氏

▼5.日本展示会協会(日展協)等展示会関連団体が考えるべきこと

① 組織と事務局機能を強化すること
展示会業界の代表的組織である日展協は、3月末現在、会員数331社・団体、その内訳は、主催者54社、会場運営者24社、支援企業252社、他外国1団体となっている。一般社団法人としては、それなりの規模の団体であるが、いくつかの問題を抱えている。元々、日展協は、1967年、「晴海協議会」という名称で発足した。展示会主催者が会場の持ち主である東京国際見本市協会(東京ビッグサイトの前身)と交渉することを目的としていた。その後、展示会会場保有者や装飾業等支援企業も会員として入会し、会員数が増加したものである。主催者が最も重要な役割を果たしているが、必ずしもすべての有力主催者をカバーしているわけではない。主要な主催者で会員でない企業もある。また有力な会場所有者の中には、会員ではない企業も存在する。支援企業は大多数を占めるが、彼らを対象とするプログラムも十分ではなく、十分な役割を果たしていない。したがって、一度原点に戻り、どうすれば展示会産業が発展するのか、展示会産業に従事する企業すべてが潤うようなウインウインの関係にするにはどうすればいいか、日展協の組織を強化するにはどうすればいいのかを考えることが必要である。

日展協の問題の1つは、事務局機能が十分でないことである。一般社団法人にふさわしい権限が事務局に与えられていない。例えば、事務局長は、専務理事でも理事でもない。会長や理事会に命じられたことだけをやっていれば良いといった感じである。事務局機能を強くするには、お金もかかるし人手もいる。それらの問題をいかに解決するかという問題が発生するが、ここでは触れない。しかし、方法はいくらでも考えられる。

② 情報発信力を強化すること
一般社団法人で常に話題となるのは、会員のメリットは何かということである。与えられた予算とマンパワーでは、きめ細かいことをすべて実行するのは無理であるが、常にお役に立つ機関であることを示すことが重要である。そのためには、常に、会員企業に対し、彼らが必要とする情報の提供が必要となってくる。
また国内広報委員会を通じて、国内のマスコミ関係者に対し、展示会産業が日本経済に与える重要性につき、不断に訴えなければならない。日展協の情報発信力を強めるには、会員の協力に加え、外部の有識者、専門家にボランテイアとして、アドバイザーの委嘱を依頼するという方法も考えられる。

③ 人材育成プログラムを充実させること
展示会関係の人材育成の重要性は、昔から叫ばれているが、あまり進捗が見られない。観光、MIC業界を見ると、大学教育や人材育成のための研修やコースが比較的充実しているが、展示会業界では、大学教育にせよ各種研修コースにせよ、ほとんど存在しないと言える。その昔、日本展示会協会やジェトロで人材育成プログラムを実施したこともあったが、今ではほとんど存在しない。最近では、昨年、日本イベント協会の貴重なイニシアテイブにより「展示会イベントビジネスマネージメントコース」が開催された。展示会ビジネス関係者コースとして10講座、地方向けのコースに4講座があった。オンライン・セミナー・講座、リアルセミナー・講座も含め人材育成講座を充実させたいものである。日展協は、展示会産業のチャンピオンとして、人材育成に、リーダーシップを発揮してもらいたい。

④ 欧米・アジアの展示会団体との関係を強化すること
世界には数多くの展示会関連団体がある。日展協は、2016年に、UFI(国際見本市連盟)の会員になった。2015年12月に日展協が主催したJEF(ジャパン・エグジビション・フォーラム)の際には、米国のIAEE(国際展示会・イベント協会)やAFECA(アジア展示会・コンベンション団体連盟)の会長を招待し、セミナーを行ったが、日本は、従来より海外の団体との交流にそれほど熱心ではない。日本の展示会産業の規模や重要性を鑑みると、もっと国際交流に力を入れるべきである。

⑤ 委員会活動の活性化を図ること
現在、日展協の委員会は、総務、事業推進、展示会場、人材育成、国内広報、国際化推進、入会促進、会員交流促進、統計・標準化の合計9つある。現下のコロナ禍情勢で十分な活動が出来ないことは十分に理解できるが、近い将来下記のような委員会も設置すべきであろう。また委員会の委員には広く会員企業、外部人材に呼びかけるという発想も持つべきであろう。

*展示会産業の将来を考えるビジョン委員会
展示会産業は、未曽有の危機にあるという危機意識の元に、どうすれば展示会産業が持続的発展を遂げることができるのかといった問題を議論する。
*危機管理委員会
コロナウイルスの第二波、第三波や今後発生する可能性のあるパンデミック、大地震等災害に備えて、意見交換する場で、ここでは、会場予約、出展予約のキャンセル等に伴う保険、出張キャンセルに伴う保険等についても議論する。また、6月10日に、日展協により発表された「展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン」の順守状況についてもフォローする役割もある。
*情報発信委員会
国内広報委員会では、国内のマスコミに対し、広報活動を行うのに対し、情報発信委員会では、会員企業に役立つ調査・情報の発信を行うためのものである。前述のように会員企業や外部のボランテイアの協力を仰ぐようにする。
*支援企業委員会
装飾・警備・清掃・人材派遣等支援企業は、252社で全体の76%を占めているにも拘らず、存在感がうすい。そこで支援企業委員会を設置することによって、主催者や会場管理者に対し、意見の具申・交換を行う機会をつくる。
*女性の活躍推進委員会
少し前まで存在したが、いつの間にか無くなってしまったのは残念である。今現在、日本の社会を動かしているのは、女性であり、展示会業界でも同様である。再度立ち上げ、活発に活動してもらいたい。
*表彰制度の復活
日展協アワードは、2002年に開始されたが、これもいつの間にか消滅した。表彰対象企業のマンネリ化がその原因だと言われるが、表彰対象については、必ずしも企業にするわけではなく、頑張った若手社員等人を対象とすることも考えられよう。