新型コロナウイルスが既存事業へ大きな打撃を与えたことで、その危機感から新規事業に踏み出す企業が増えている。貸イベントホール・カンファレンススペースの運営を行うEBiS303(スバル興産)は、下がった施設稼働率を補うため、自主企画イベント「EBiS YOGA(ゑびすよが)」を2020年11月に初開催し、2021年6月には第2回目を成功裏に終えた。EBiS303運営部・営業課の片野絵梨さんに話を聞いた。
自己所有施設の有効活用
コロナ禍で全国的なイベント減に見舞われた。EBiS303(東京・渋谷区)も例にもれず、2020年度の稼働日数はコロナ前である2019年度と比較して約30%まで落ち込んだ。
そのような中、運営を手掛けるスバル興産は6月19日、自主企画イベント「EBiS YOGA(ゑびすよが)」をヨガイベント制作会社と協力して開催。大規模なヨガイベントは、公園やビーチなど屋外で開催されることが多いが、EBiS YOGAは「天気や天候を気にせず、恵比寿駅チカで人気講師のレッスンが受けられる」という独自色を打ち出した。ヨガイベントを採択した決め手は、費用面の負担が抑えられること。ヨガイベントはヨガマットやタオルを持参した参加者と会場があれば、大がかりな設備や投資を必要としない。会場運営者である強みを生かし、会期の3ヶ月前から準備をはじめ、これまでに2回開催した。参加チケットの販売数も伸ばしており、今後は安定的な収益化を目指す。
感染症対策へのこだわり
一方、主催かつ会場という立場は、万が一の際の責任も大きい。安心・安全な開催のため、徹底した感染症対策を実施した。参加者と関わるスタッフはゴム手袋やフェイスシールドを着用し、レッスン会場ではプログラム毎に専門業者が入り清掃した。「会場が主催するのだから、お手本になるような対策・対応に強くこだわりました。また、窓を開けなくても約15分で館内すべての空気が入れ替わる換気システムをもともと採用していたことも、開催の後押しになりました」(片野さん)。運営面では、レッスン会場で参加者の位置を指定することで後日、感染者やクラスターが発生した場合でも迅速に対応できるよう備えた。
大局的な視点で施設運営を
片野さんは「実際に主催を経験することで、イベント主催者は集客面や感染発生への不安、採算が取れないリスクを抱えながら当日を迎えているのだということを身に染みて感じました。会場を貸す側として、そんな気持ちに寄り添いたいという思いがいっそう強まりました」と振り返る。今後は、安全な開催に向けた具体的な提案や設備面の拡充に努める。
現時点で会場の稼働日数はコロナ前の50~60%程度と、徐々にイベント回復の兆しを見せる中、第3回目となるEBiS YOGAは来年1月頃の開催を予定している。「自主企画は業務工数のわりに利益が少なく、事業としては成立していないのが現状ですが、スタッフの学びの場という側面もあることから会社の理解を得ており、今後も継続して開催していく方針です」(片野さん)と意気込みを語った。