分科会 イベントなどに「ワクチン・検査パッケージ」活用を 宣言解除後の見通し示す

9月3日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、緊急事態宣言解除後の見通しを示す提言を発表した。

分科会は、「今回示した考え方を基に海外の知見や最新の科学的知見も踏まえ、一般の人々や事業者などとの対話を通して、ワクチン接種が進む中でどのような日常生活を望むのか、例えば“ワクチン・検査パッケージ”をルールとするか否か、その適用範囲をどうするかなどの、国民的な議論を深めてほしい」と述べている。

 

提言ではまず「感染対策の重要な柱であるワクチンの接種率が向上しつつあり、必要な感染対策を講じながら可能な限り制約のない日常生活に徐々に戻していくためには、ワクチンと検査を組み合わせた“ワクチン・検査パッケージ”を活用することも重要である」と述べられている。

“ワクチン・検査パッケージ”は、ワクチン接種歴及びPCR等の検査結果を基に、個人が他者に二次感染させるリスクが低いことを示す仕組み。

(海外渡航に関しては“ワクチンパスポート”という言葉が使用されているが、国内でこの言葉を用いると、“パスポート”という言葉がそれを保持しない人が社会活動に参加できないことを想起させ、社会の分断に繋がる懸念があるとし、国内では“ワクチンパスポート”という言葉は使用すべきではないと、提言は述べている)

(なお、“ワクチン・検査パッケージ”は検査の陰性やワクチン接種歴は他者に二次感染をさせないことや自らが感染しないことの完全な保証にはならない)

 

また、2021年7月の首都圏1都3県(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県)の成人の20-69歳を対象にした調査データをもとに、想定されるワクチン接種率(60代以上85%、40-50代70%、20-30代60%)が示された。

そして、この接種率ではワクチン未接種者を中心に接触機会を50%程度低減(マスク着用等に加え、会食の人数制限やオンライン会議、テレワークなどで達成可能な水準)しなければ、感染を一定水準に抑制することが難しくなることから、緊急事態措置等の“強い対策”が必要になると述べられており、引き続き、マスクの着用や具合が悪い場合には外出を控えること、職場等で具合が悪くなった場合には検査を受けること、イベントでの密集回避、会食の人数制限、オンライン会議、テレワーク、積極的疫学調査等の基本的な感染対策など、人々の生活や社会経済活動の制限が、一定程度必要になると予測している。

(流行するウイルスの基本再生産数を5、ワクチンの感染予防効果を70%と仮定したシュミレーションによる予測。ただし、このシミュレーションでは、ブレークスルー感染が生じること等については考慮したが、新たな変異株の出現やワクチン効果の減弱、気温の低下等の要因は考慮していない)

 

次に提言では、日常生活を変えるための総合的な取り組みとして、飲食店での第三者認証の促進や積極的・戦略的検査など科学技術(健康観察アプリや検査キット、CO2モニター、QRコード、下水サーベイランス、新たな治療薬等)などを示し、また“ワクチン・検査パッケージ”を活用した総合的な取り組みを導入することも必要となり、その導入時期については、ほとんどの希望者にワクチンが行き渡る例えば11月頃が考えられると述べた。

“ワクチン・検査パッケージ”の適用について示された基本的な考え方は以下の通り。

・“ワクチン・検査パッケージ”を適用したとしても、マスク着用などの基本的な感染対策を当分継続しつつ、行動制限の緩和は段階的に状況に応じて進めること。

・感染リスクが高い場面・活動やクラスターが発生した際の重症者の発生や地理的なインパクトが大きい場面・活動に適用すべきこと。

・国や自治体が利用する場合には、事業者などの意見も聞いた上で適用すること。

・イベントなどでの適用にあたっては技術実証も活用すること。

そして、以下のような場面・活動で“ワクチン・検査パッケージ”の適用が考えられるとした。

【感染によるインパクトが大きい場面・活動の例】
・医療機関や高齢者施設、障害者施設への入院・入所及び入院患者・施設利用者との面会
・医療・介護・福祉関係等の職場への出勤
・県境を越える出張や旅行
・全国から人が集まるような大規模イベント
・感染拡大時に自粛してきた大学での対面授業
・部活動における感染リスクの高い活動

【その他の場面・活動の例】
・同窓会等の久しぶりの人々と接触するような大人数での会食・宴会
・冠婚葬祭や入学式、卒業式後の宴会

【適用すべきか否か検討すべき場面・活動の例】
・百貨店等の大規模商業施設やカラオケなど
基本的な感染対策を徹底することが重要である。なお、その従業員については適用するか否かについて検討する必要がある

・飲食店
“ワクチン・検査パッケージ”や第三者認証をどのように活用するのかについて検討する必要がある

【適用すべきではない場面・活動の例】
・参加機会を担保していく必要がある、修学旅行や入学試験、選挙・投票、小中学校の対面授業等については、基本的な感染防止策を講じることとして、適用すべきではない

 

ワクチン接種歴及び検査結果の、具体的な確認方法については以下のような可能性が示された。

〇ワクチン接種歴の確認については、接種済証や接種記録書を用いることが考えられる。なお、その利用にあたっては、ワクチンを2回接種後2週間経過している場合に有効とすることが考えられる。また、時間経過による感染予防効果の低減も考慮して、最後のワクチン接種後から一定期間のみ有効とすることも考えられる

〇検査結果の確認については、PCR検査や抗原定量検査等又は抗原定性検査を医療機関や精度管理を行っている民間検査機関で受け、検体採取日時等が記載された検査結果証明書を入手することが考えられる。なお、“ワクチン・検査パッケージ”活用する現場で検査を実施した場合には、検査結果証明書を発行せず、検査の結果を以って確認することも考えられる

〇また、検査として抗体検査を活用することが可能か否かについて検討することも考えられる

 

“ワクチン・検査パッケージ”が本格的に活用されるまでの期間については、「本考え方を示す時点では緊急事態宣言の期間中であり、いつ解除されるかは未定である。医療の逼迫が低減され緊急事態措置が解除された後には、“ワクチン・検査パッケージ”が本格的に活用されるまでの間であっても、具体的な扱いについては、感染状況等を踏まえて、例えば、飲食、イベント、移動、旅行等について段階的に進めていくことが考えられる」と述べられている。