NTTのXRプラットフォーム「DOOR」の先に見えるものは

日本電信電話 経営企画部門 広報室XR推進室
鈴木 涼真 氏

日本電信電話(NTT)は2020年11月17日、ウェブブラウザ上で運用可能なXRプラットフォーム「DOOR」をリリースした。NTTが取組むXR事例の第一弾となるDOORの開発や運用について、同社の鈴木さんに話を聞いた。

ブラウザベースでアプリのDLも不要
目指したのは誰もが手軽に使える設計


DOORの概要について教えてください

DOORはNTTが提供するXRプラットフォームで、一般企業やユーザーの皆様と連携のもとXR市場の活性化を目指すものです。

XRにはVRやAR等が含まれますが、これまでVRというとヘッドマウントディスプレイが必要だったり、プログラミングの知識が必要だったりと、敷居が高いものが大半でした。DOORはブラウザベースのプラットフォームであり、専門知識や技術のないユーザーでもURLを入力するだけでアクセス可能、PCやスマホにも対応しているなど誰でも使いやすい設計になっています。

―どのようなコンセプトで開発されたのでしょう

新型コロナウイルスの影響で人と人とのコミュニケーションが取りづらくなったことを受け、昨年6月頃から開発に着手し、11月にサービス開始致しました。目指したのはソーシャルディスタンスと経済活性化の両立です。

無料でエントリーが可能で、アプリのDLやインストールも不要なため、これまでたくさんの方にご利用いただいています。

DOORを開始してから約1年の間に
・技術に詳しくない方が簡単に部屋をつくれるため、2万件を超えるルームが新規作成されている。
・簡単に作れるので、有料/無料の企業の実施のイベント実績が60件を超えている。週1件以上のぺースで、企業イベントが行われ、その中には数十万人が集まるイベントの対応もしてきたいで、そのシステムおよび運用ノウハウが蓄積できている。

といった実績があがっています。

―どのようなコンテンツが展開されていますか

NTTグループの情報発信スペース「NTT TOWN」、コンテンツホルダーとの共創空間「CULTURE PARK」、誰でも自由に参加可能な「CRAFT ROOM」、リアル都市空間「PARALLEL CITY」の4ゾーンで構成されています。

これまで東京2020オリンピック・パラリンピックと連動した「バーチャル聖火リレー」や、ドワンゴ社主催の「ニコニコネット超会議2021」などのビッグイベントも、DOOR上で開催してきました。一般の方や著名YouTuberによるイベントも数多く実施されています。

テンプレートで簡単に部屋をデザイン
ボイチャで楽々コミュニケーション


DOORではどのようなことができますか

3D空間の利用でニーズがある様々な空間のテンプレートを用意しているので、簡単に自分好みの部屋を作ることができます。もちろんプログラミングの知識があれば、細部にまでこだわった設計にすることも可能です。作った部屋に動画や画像ファイルなどを貼り付ければ、あっという間にショールーム、バーチャルなお店、教室、映画館、コンサート会場、や、大規模イベント会場が完成します。

利用者はアバターとなって3D空間に入り、ボイスチャットなどでコミュニケーションを図ります。


―どのような利用シーンを想定していますか

3D空間上で画面共有が可能なのでセミナーや講演会、展示会など法人向けイベントにも向いています。NTTでは先日、2021年度第1四半期決算会見をDOOR内で実施しました。人気テレビアニメや映画祭とのコラボレーション実績もあります。

これまで企業が実施したイベントを支援したノウハウを、DOORのページに掲載しているので、今後バーチャルイベントを開催してみたい方には参考になると思います。

(※企業利用について https://door.ntt/web/corporate/index.html

作成した部屋の壁に商品画像を貼って、ボイスチャットでコミュニケーションを図りつつウェブ上の販売ページに誘導するといった使い方もできます。ほかにも観光地をバーチャル空間に再現した地域活性化支援やバーチャル学校でのオープンキャンパス、デジタルミュージアムといった実績を有しています。

 

―今後の注目イベントを教えてください

2021年9月30日から開催される「東京ゲームショウ」では、オフィシャルVRテクノロジーパートナーとして、DOORによるVR空間を提供しました。また、ファッションブランド「アンリアレイジ」と、映画「竜とそばかすの姫」に関するコラボ企画も決定しているので、楽しみにしていただければと思います。

次世代XRプラットフォームを見据え
リアルに負けない体験価値を追求


―今後の展望を聞かせてください

DOORはNTTが提供するVR空間プラットフォームの第一歩とも言えるものです。3Dデータの作成などカスタマイズが不要であれば基本無料で使えるため多くの方に利用していただきながら知見を蓄積し、企業とは新ビジネスの共創を図っていきたいと思います。

―オンラインイベントの持つ可能性について、どのように考えますか

リアルが持つ体験価値に、どれほど近づけるかが重要です。例えば、バーチャル空間上で絵を描いたときにその感覚が手に伝わるような技術はすでに開発されています。NTTとしてもいかに感動を生む体験設計をして、ユーザーの皆様に価値を提供できるかを追求していきます。

NTTグループは、限界を打破する革新的技術によってスマート世界を実現するIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)構想を提唱しています。そう遠くない将来、DOORをさらに発展させた、XRプラットフォームをお見せできるのではないでしょうか。