海外MICE研修の成果を報告(3/8)

3月8日、観光庁国際会議室で「平成23年度観光庁MICE人材育成事業海外研修参加者、CMP受験者報告会が開催された。

同事業は国内MICE人材の裾野を拡大することと将来の日本のMICE界をリードする人材を育成することを目的に、MICE関連団体・企業などの職員を対象に国内外での人材育成を行なうもの。報告会では海外研修に参加した6人の成果報告と、国際認証Certified Meeting Professional (CMP) 受験者による試験制度の説明や今後の対策についての提言が行なわれた。

開会に先立ち観光庁MICE担当の高見牧人参事官が「アジア諸国がMICE誘致の国際間競争を繰り広げるなか、日本も観光立国推進プランの4本柱の1つとしてMICE推進を掲げていく方針です。その施策の中心となるのが人材育成と考えており、当事業を中心にMICE業界発展のサポートをしていきたい」と挨拶した。

 

 

 

 

●報告の概要
== 海外研修(研修実施担当会社企画コース)==

1. MPI World Education Congress (WEC) – (株)JTB法人東京 金井大三氏

昨年7月23日から26日、米国・フロリダ州のオーランド・オレンジカウンティ・コンベンションセンターで開催され、およそ3,000人が参加した。参加者の7割以上が女性と、欧米のミーティングプランナーに女性が多いことを実証するような会場風景だった。 参加者は欧米が8割を占めていたが、アジアの中で韓国人の参加者数が突出していた。行政や企業の研修ツアーが組まれていたようだ。

印象的なセッションはリーダーリップ論などを多数執筆しているサイモン・シネック氏によるもの。成功の鍵はWhy型思考として、課題を突き詰めることで、ビジネスの精度を向上する方法を紹介。また、2000年の情報量を1とすれば2011年の情報量は625にもなると言われるほどの高度情報化時代を迎え、本来の目的に沿った情報の選択と必要な形へ加工することが求められるとした。

そのほかのセッションではROIを極限まで引き上げるStrategic Meeting Management (SMM)のスキルや効果測定方法について解説。米国ではセッションのアンケート結果次第で講演者のギャラが決定するケースも出てきているという。(金井氏のミーティングROI測定については弊社刊行の展示会とMICE第3号に掲載)。また環境やITに関するチャプターも多くの聴講者を集めていた。

MICE業界の今後を占うキーワードは4つのS。つまりSmall(小規模)、Smart(効率的)、SMM(戦略的な)な取組みがSustainable(持続可能性が高い)なミーティングを実現すると金井氏はWECで語られたミーティング・ビジネスのトレンドをまとめた。

2. IAPCOセミナー on PCO – (公財)東京観光財団 山本幸二郎氏
今年1月22日から26日、スイスのエルマツィンゲンのUBS銀行のセミナーハウスThe Platform for Executive and Business Developmentで開催された。同セミナーは1975年に開始され、35年の歴史をもつ。6日間で30セッションに加えて、毎晩グループワークを行なった。参加者の平均年齢が約32歳、社歴5年ほどの実務者が中心で、PCOのほか、ビューローやコンベンションセンターからも参加していた。

マーケティング・ブランディング能力、顧客のベネフィットやROIへの理解、スピーディな変化とグローバル化への適応、コミュニケーションの力・交渉力、創造力・想像力、自分のディスティネーションの理解、ネットワーキングなどを学ぶ。

ミーティングを医療系の学協会会議、医療系以外の学協会会議、企業系会議、政府系会議の4つの区分にわけて分析。医療系の会議は件数で18~25%程度だが大規模なものが多く予算も大きいこともあり、参加者の7割が医療系会議に携わっていた。

会議ビジネス全体の傾向としてガラ・ディナーなどの予算が減る一方で、事前情報提供の充実やGPS機能搭載の独自アプリ開発などの参加者サービスへの注力する主催者がふえている。

参加者の関心を集めたのが入札やロビーイングなど誘致のスキルについて。ビッドペーパー作成方法やSWOT分析など実践的なノウハウが習得できるコースとなっていた。グループワークはセッションの復習となるように課題が与えられ、5グループに分かれた参加者が提案書を作成しプレゼンテーションを行なった。

山本氏はセミナーやTCVBでの業務を通じて、パートナーからサプライヤーへ、セクレタリーからコンサルタントへ、受注者からイノベーターへ、サービスプロバイダーからソリューションプロバイダーへと変革することの必要性を感じたという。

3. 第50回ICCAコングレス – (公財)横浜観光コンベンションビューロー 加納 弘子氏

昨年10月22日から26日、ドイツのライプチヒ・コングレスセンターで開催。68か国から1,041人が参加した。
ベストマーケティング賞にはポーランド・コンベンション・センター、中国のDMC企業チャイナスターリミテッド、グラスゴー市マーケティング・ビューロー&スコットランド会議展示場がノミネートされ、グラスゴーが優勝したが、中国MICE産業の発展ぶりは出席者の注目を集めた。

ソーシャルメディアを活用した新しい形の会議運営について活発に議論された。あるセッションでは質問をツイッターのみで受付け、講師が質問に答える形で講義を展開するものもあった。SNSによる双方向性の情報発信で会議が盛り上がるようすを実証した。技術の進化のほかにオープン、ランダム、サポーティブな会議がトレンドになると予測される。

会期中にトラムの臨時専用停留所を設置、停留所のスクリーンに前日のようすを放映する、ホテルから停留所へ足跡のペイントで道案内をするなど、ライプチヒの街全体で参加者への歓迎ムードを演出。日本のMICEでも応用できるのではと加納氏は提言。また、製薬会議関連の規定であるファーマルールの重要性を示唆した。

 

 

4. セントラルフロリダ大学ローゼンカレッジ校 – 元近畿日本ツーリスト(株) 陳金歓氏

ローゼンカレッジ校は1983年に創設しセントラルフロリダ大でもっとも発展を遂げた学部。ホスピタリティ学部の全米ランキング5位、全米で唯一イベント・マネジメントの学位を習得でき、世界15か国から3000人以上が学ぶ。米国ではマネジメント系の学部を卒業し就職と同時に管理職につくことも珍しくなく、学生に人気の高い分野となっている。

学士課程、修士・博士課程と資格課程の3つのコースがあり、陳氏はイベント・マネジメント資格を習得できる資格課程を受講。イベントプランナーとしての企画や見積作成、交渉、セールス戦略などの実践的セールスプロセスを学ぶ「イベント・セールス」、料飲・音響・映像・施工などのイベント。サプライヤーのマネジメント学ぶ「イベント・サービス」、国際MICEに必要不可欠な情報収集、海外情報、コンベンション都市の研究など海外MICE事情を学ぶ「International Events」、バイヤー・セラー双方の角度でディスティネーションマーケティングを学ぶ「Convention Sale & Service」を履修している。

日米のMICEプランナ育成システムについて陳氏は、米国では教育機関と関連協会、政府機関が連携し、イベントプランナーの育成・サポートを行なうこと、資格制度が充実していることから、個人のイベントプランナーが多く、日本は関連協会とサプライヤーがPCO企業をサポートするため、企業に属するプランナーが多いのではと分析した。

またプランニングスタイルと人材育成については、米国は“思い出をデザインする”クリエイティブ提案型としたほか、業界ルールが統一されていることや実績を統計資料として活用するなどノウハウ蓄積がシステマイズされている点を指摘。日本は的確な運営が評価されるオーダーメイド型、職人型が多く人材は実務上の経験を重ねて成長すると、日米の違いについて語った。

== 海外研修(派遣元調整コース)==
5.AIPCアカデミー (公財)国立京都国際会館 - 山サキ(山偏に立に可)和也氏
AIPCは53か国・地域の170を超える会議施設が加盟する団体。同セミナーは2007年に初開催され、今回で6回目。2012年2月4日から10日、ベルギー・ブリュッセルのThe Square Brussels Meeting Centreで開催された。中堅対象のプロフェッショナル デベロップメントに加えて、新たに経営者層をターゲットにしたマネジメント・シンポジウムが併催となった。
会議施設の運営に関する講義だけでなく、PCOとの協力体制や主催事業に関するものも多数組み込まれる。今回注目を集めたトピックは3点。ソーシャルネットーワークやバーチャルミーティング、緊急時の対応、CSRおよび環境問題だった。
また、山さき氏は注目の会場施設として、会場の屋根を全面緑地化したバンクーバーや、テロや施設故障時の案内など航空会社と同等のマニュアルを用意している香港の会場、GPS機能を活用したアプリやイベント・アプリと会場情報を連動させている韓国の会場などの取組みを紹介した。

 

 

 

 

6. EXPO! EXPO! IAEE Annual Meeting & Exhibition  - (株)アコースト・コーポレーション 栗原 絵美氏
昨年12月6日から8日、ラスベガスで開催されたIAEEの年次総会と展示会「EXPO! EXPO!」のもようを報告。

同イベントや展示会主催者や施工会社が集まり革新的な機器や演出手法を紹介する場。今回は2,208人の業界関係者が参加、そのうち協会・財団系イベント主催者が27%、一般対象イベントおよび単発イベント主催者20%、企業イベント主催者13%、施行会社24%、その他メディア・施設・学生などが13%という内訳。経営者・役員など上級管理職も多く、実務レベルの技術情報交換のほか、ブランディングやリーダー論などマネジメント向けのセッションが多かった。またIT技術などを駆使したイベントの未来像も提示された。

 

 

 

 

 

 

== 国際認証CMP受験報告 ==
7. CMP受験 -日本コンベンションサービス(株) 西本 恵子氏
1月7日、新高輪プリンスホテルで開催されたCertified Meeting Planner(CMP)の受験準備、テスト内容について報告。CMPは北米を中心に世界36か国で1万4000人が資格を有するミーティングプランナーの認証制度。実施団体はConvention Industry Council(CIC)。試験は4択問題165問、制限時間3時間30分(非英語圏は4時間)

会議実務を体系的かつ学術的に英語で学べることに加え、欧米の主催者からの信頼度向上が期待でき、ミーティング・ビジネス就業者にとって大きな取得メリットがある。
アジアでは韓国25人、シンガポール18人、中国12人の有資格者がいるが日本は2人のみ。(今回の受験結果を除く)今回は12人が受験することもあり、日本国内での受験可能となった。

米国の商習慣を基礎としていること、英語表現が迂遠であることなどの点が指摘されており、国際化にむけて改善案を検討している。

受験した西本氏は、オンラインマニュアルや9cm厚におよぶ教本を紹介し、勉強時間150時間から200時間が合否のラインと分析。多忙な日本のPCOやミーティングプランナーから多くのCMPを輩出するための方策として、隙間時間で学習できるツールの作成、勉強会などで習得知識を共有すること、受験コースの開催などを提言した。

CMPテストは今年下半期からオンライン試験を開始する。日本では東京2か所、神奈川、大阪の計4か所のプロメトリック社の試験センターで受験できる。(3/8)