軽井沢リゾート会議都市推進に向けた各氏の提言(4/4)

軽井沢リゾート会議都市推進協議会(軽井沢RCC)は、3月29日、軽井沢プリンスホテル(国際会議場・浅間)で“ダボス&アスペンに学ぶ軽井沢「文化・芸術・スポーツ」リゾート戦略”をテーマに「軽井沢リゾート会議都市推進協議会 一周年記念リゾートコンファレンスセミナー」を開催した。

開催に先立ち、RCC会長の松葉榮三は「軽井沢での平日の賑わい創出においては、会議の招致が相乗効果を生むとの考えのもと軽井沢RCCは創立しました。今回の設立1周年を記念したセミナーが皆さま方にとって有意義なものとなることを期待しています」と挨拶。

続いて、軽井沢町 町長の藤巻進氏が「約20年前の青年会長時代から軽井沢をリゾート会議都市にという構想をもっていましたが、そのころにも本日講演いただく磯村先生のリゾート地のお話を聞き、たいへん感銘を受けました。約2時間の講演内容はテキストにしていた思い出があります。きょうはその続きを聴くような心持ちで楽しみにしています」と講演への期待を語った。

講演では、尚美学園大学理事長・学長の松田義幸氏と実践女子大学教授の犬塚潤一郎氏が登壇し、「通年型リゾート、コロラド・アスペンに学ぶ、軽井沢リゾート戦略の理念と方法」と題し、スイスのダボス、米・コロラド州アスペンに並び軽井沢を世界3大リゾート会議都市とするべく立ち上がった関係者に向けて、2都市がなぜリゾート会議都市として現在の地位を築いてきたのか、ソフト開発の歴史や、事業構造を社会的構造に転換し価値を追求し続けてきたそのスタイルから明らかにした。

そのなかで、ダボス会議は既存社会の政治・経済とは違う、新たな調整機能として必要とされたというコンセプトから成立したものであり、一方で、アスペンのエグゼクティブセミナーは、ひとにとって大切なことが社会の核心にあるという考えのもと、文化・教養・音楽/芸術の追求を目指し構成された会議群であることを解説。

こうした講演内容をふまえ、軽井沢をリゾート会議都市として推進するための心構えとして、犬塚教授は「軽井沢の哲学を基本に据えることが重要であること」と提言した。またこの発言を受け、松田学長は「3.11に関連し、世界は『人間には限界があること』を気づいた。学問の世界では、自然、社会、人文のどの領域でもポストモダンという考えが大問題となっている。たとえば、こうしたタイムリーな話題について問題提起すること、それを軽井沢の哲学の中心に据えることが世界からの注目を得る。たとえ少人数からはじめたとしても、小さく生んで大きく育てることを考えてみてはどうだろうか」と問いかけ、講演を結んだ。

 

 

 

 

 

続いて、“ミスターNHK”の名前で親しまれた元キャスターの磯村尚徳氏が登壇。磯村氏は、ヨーロッパのリゾート事情について、経験に基づいた具体的特徴を、ダボスや山岳リゾート地で有名なヴィラール、フランスの海のリゾート地コートダジュールを引き合いに紹介。

リゾート開発の成功を果たすために必要な要件について、3つの提言をした。まず第一には、町、行政、企業、そして住民がここで何をしたいのか、マスタープランをはっきりさせること、そして第二には、哲学を実現するには、広告のない景観や車の立ち入り禁止など、私見の制限が必要であること、第三には、欧州の100の美しい村でみるような建物の色や高さに統一のある、全体に均整のとれた美を追求する姿勢があること、とした。

 

 

 

セミナーの終わりには、さきに講演をした3氏に小石川ロータリークラブ幹事の武田康弘氏が加わり、日本コンファレンスセンター協会専務理事の田中慎吾氏を進行役に迎えたパネルディスカッションが行なわれた。

パネルディスカッションでは、1.軽井沢リゾートコンファレンス地域特性へのブランド化、2.企業の会議文化成熟度(費用対効果)に関して、3.リゾート会議都市先進地域への課題、などをテーマに4名の講師とセミナー参加者が一体となって、今後の軽井沢のあるべきリゾート会議都市推進への取組みを話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

軽井沢RCCは、2011年2月に町をあげてリゾート会議都市を目指すと宣言したもの。皇室をはじめ、文化人、政財界人からも愛されるこの土地に別荘をもつ著名人も多く、避暑地としても有名な軽井沢であるが、滞在型リゾート推進の観光戦略のひとつとして平日の利用を見込める会議需要の掘り起こしを目指し、軽井沢町商工会、軽井沢観光協会など軽井沢町の団体や会議関連団体やホテル・ペンションから構成されたメンバーで、国際会議などの積極的な誘致を図っている。(4/4)