感染症流行の初期では「リアルイベントの代替」としての期待が大きかった「オンライン」だが、その求められる役割は徐々に変化してきている。
リアルでのイベント開催が戻りつつあるなか、「オンライン」や「ハイブリッド」は今後どのような役割を果たしていくのか、関連企業にインタビューし話を聞いた。
【連載】オンライン&ハイブリッドイベントのこれから
第1回 DMM.com オンラインイベント事業部 事業部長 古波鮫大己 氏(本ページ)
第2回 EventHub 代表取締役 山本理恵 氏
(不定期連載)
(記事作成日8月1日)
【第1回インタビュー】
合同会社DMM.com
オンラインイベント事業部 事業部長 古波鮫大己 氏
―これまで様々なジャンルのオンライン展示会を主催されていますが、業種による違いなどありましたか
ジャンルによるオンライン開催への向き不向き、意外と相性がよいなどの発見はありました。たとえば「IT」「マーケティング」「バックオフィス」などは、オンラインでも価値は劣化しない、十分価値が伝わるジャンルだと感じています。
ものづくり系など、リアルでないと伝わりにくいものに関しては課題もあると感じますが、「容器包装」へのニーズの高さや、「農業」なども来場者が多く、想定以上の結果が出たりもしています。
―直近で特に好評だったオンライン展示会を挙げるとすれば
6月に開催した「NEXT地方創生.オンライン展示会」でしょうか。プレイベントを1週間前に開催したのですが、自治体が地域の課題や協働テーマをプレゼンして出展社からソリューションを募集する「逆オファー」や、官民連携や地域活性化などの取り組み・最新事例を紹介する「ケーススタディー」など、〝出展社以外からの発信〞という点にも力を入れました。
コンテンツとしては、基調講演:3本/出展社セミナー:11本/出展社ショートプレゼン:24社/ケーススタディ:33本/逆オファー:12本といった構成でした。
―展示会あたりの出展社数は平均どれくらいになるのでしょうか
平均値をだしているわけではありませんが、約200社といったところでしょうか。出展社数の多い展示会ですと400社を超えることもあります。
―展示会あたりの来場者数は平均どれくらいになるのでしょうか。また、参加者の所在地などに傾向などは見られますか
だいたいの展示会で約1000名程度の来場登録があり、来場者が多い展示会では、2000名を超えることもあります。所在地などは特にこれといった傾向は掴めていませんが、関東からの参加は多くみられるように思います。
―出展社募集や、来場者の集客はどのように行われていますか
専門のチームがあり、リスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告・メールマーケティングなどのほか、駅やタクシーの広告でも反響をいただいております。
―オンライン展示会に出展する企業が求める成果、目標は何なのでしょうか
一番濃いコミュニケーションの手段がリアルの商談で、コミュニケーションとしての機能が薄い手段を広告だとすれば、オンライン展示会はその中間にあたる存在だと思います。
コロナ禍では、「リアルの展示会の中止でできなくなったことを補填する」という目的がありました。感染症流行の収束とともに、リアルとオンラインを両方うまく使い分けていくような活用の仕方が求められるようになっていると考えているので、今後はDMMオンライン展示会もリアルの展示会の代替ではなく、オンラインならではの強みを活かしたコミュニケーションプラットフォームとしてリニューアルしていきます。
―求められていた目標は達成できたと思われますか
リードの獲得数やアンケートの結果などを見ると、リアルの展示会の代替という点では、営業の場を提供することができたと考えています。しかし、オフラインの展示会とは違った難しさもあり、商談の起きやすさという点などでの課題も残りました。
今後、オンライン展示会では、よりカジュアルにビジネスマッチングをして、マッチした相手とコミュニケーションをスタートさせることを達成していきます。
展示会のメイン画面(クリックで拡大)
―DMMオンライン展示会の強みはどこにあるとお考えですか
距離・時間の制約がないことはもちろん、移動や準備などの負担をリアルの展示会に比べて圧倒的に小さく済ますことができるのも、大きな強みだと思います。
感染症流行の収束にあわせて、改まったビジネスの商談というよりは、コミュニケーションプラットフォームとしてカジュアルにマッチングしてコミュニケーションのきっかけを創出する方向にシフトしていければと考えています。
―今後の展開について
これまで出展社側は「待ち」の姿勢であることが多かったと思うのですが、積極的に自ら動けるような仕組みを実装するなど、よりインタラクティブ(双方向)にコミュニケーションがとれるような機能を強化していきます。
様々な業界で開催してきたこともあり、弊社がオンライン展示会をやっているという認知度の向上は、認知度調査においても高い結果を得られ手応えがありました。引き続き、さらに多くの企業様に体験して頂きたいです。
また、集客という点においても力を入れて取り組んでいきます。ベーシックな方法以外ですと、カンファレンス形式の大規模なイベント開催を予定しています。
―現在は一部を除き出展料、来場料ともに無料で開催されていますが、有料化のタイミングは
これまでも一部有料プランのご用意はありましたが、2022年9月から出展に関しては基本有料となります。ただし展示会によって無料のものもございます。料金をいただいても満足いただけるものをご提供してまいります。
―今後、ハイブリッドのイベントを開催する可能性はあるでしょうか
ニーズがあればやりたいとは思いますが、特にオフラインのノウハウがあるわけではないので、積極的に開催する予定はありません。とはいえ、すでに、共催などの形で、リアルのイベントとのコラボレーションの実績はございます。今後も、適宜、テーマや業界に寄り添った形で、判断していく予定です。
2020年10月より新規事業として立ち上がった、IT企業ならではのノウハウを活かしたオンラインイベント事業。
2022年7月まで一部を除き出展料、来場料ともに無料で主催しており、直近1年間の展示開催数は約70展、出展企業数はのべ12,000社を超える。
「価格」「出展企業・来場者の多さ」「手軽さ・簡単さ」「気軽さ」を重視した展示会で、ビデオ通話やチャット、セミナー、名刺交換、アンケート収集、資料ダウンロードなどの機能がある。50事業以上の事業を展開するDMMが持つシステム開発、配信などの知見やインフラを活用し、企画から運営まで内製、ワンストップで実施していることも強み。
【連載】オンライン / ハイブリッドイベントのこれから
第1回 DMM.com オンラインイベント事業部 事業部長 古波鮫大己 氏
第2回 EventHub 代表取締役 山本理恵 氏
(不定期連載)