課題解決のためのヒントが盛りだくさん!昭栄美術ベイスタジオSHOEI START EXPO 2021-新たな可能性(つながり)へ挑む-

示会・イベント業界は人材不足や設営・撤去時間の短さといった従来から抱えている課題に加え、感染症対策やSDGsへの取り組みなど、新しい課題を突き付けられている。昭栄美術は、こうした課題に独自の戦略で立ち向かおうとしている。4月5日から16日まで千葉県・市川市のSHOEIベイスタジオで開催した内覧会「SHOEI START EXPO 2021」では業界内外から1,000人以上が来場するなど、同社の動向に注目が集まっている。内覧会当日の様子をレポートする。



◆ショールーム

・特大ファブリック壁面ブース内覧会では「①SDGs時代に向けたサステナブルパートナーとしての価値の提案」、「②オン・オフハイブリッドマーケティングソリューションの提案」、「③これからの空間活用に向けたディスプレイソリューションなど今後の企業に求められる社会的責任」といった3つのテーマを掲げ、事業の紹介とニューノーマル時代に向けた新たな取り組みを提案した。会場内ではまず、一枚布で出力したテンションファブリック(高さ5m、幅15m、内曲げ)を活用し“希望のくじら”と題した大型グラフィックブースが圧倒的なインパクトで来場者を出迎える。今回の内覧会のキービジュアルにもなっている。同社ではサイン、フレーム、照明、施工など技術ごとに部署が分かれているが、ベイスタジオ内にすべての技術者が集まっているため、一気通貫で大規模な開発が可能。正面の200インチの特大モニターでは、少人数かつすばやい施工で、ブースが作られていく様子を動画で披露した。

・木工のレンタルユニットシステム”ユニプラン“による特設ブース

昭栄美術は木工の工場で創業した当時から、捨てるのが当たり前だった制作時に出される端材や現場撤去時に廃棄されてしまう造作物に対し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を行ってきた。こうした環境への配慮が、今日のSDGsに対する積極的な活動へとつながっている。今回、木工ユニットパーツを組み合せて作ったブースを展示したが、ユニットはすべて別のイベントや展示会で利用したもの。撤去の際にすべて壊してしまう造作に対し、「もったいない」という気持ちから生まれた取り組みで、ベイスタジオの広い敷地を利用してストックとメンテナンスを行っている。
「以前は私たちから『再利用品なら安く提供できます』と提案していましたが、最近では企業がSDGsへ取り組んでいることが重視されるため、逆にクライアントから再利用品を活用したプランを求められるようになりました。自社の活動を顧客や、さらにその先の顧客へわかりやすく発信するため、ISO20121認証も取得しています」。(取締役 統括本部長・羽山寛幸氏)

昭栄美術ではSDGsのNo.7からNo.13に関する目標として、独自にES(イベントサステナビリティ)目標を定めている。部署ごとに数値目標を具体的に立て、改善を図っていくもので、台車の改善によるストレッチフィルムの廃止(プラスチック使用量削減)や、廃棄材の再利用化(木屑廃棄物の削減)、運行管理による運送トラックの台数削減などを実現してきた。「製販一体の企業として、イベントの企画段階からデザイン・設計・施工・運営・撤去まで、すべての工程でサステナビリティを意識した取り組みをできることが昭栄美術の強み。目標達成のため、常に全社員から新しいアイデアを受け付けています」(羽山氏)とのこと。

オブジェブース

・オブジェブース
社内のスペースデザイナーが “未来へのらせん”と題した空間を提案。オブジェは高難度の3D木工造作技術が必要で、ベテランと若手社員のコラボレーションで完成させた。イベント業界が抱える人材不足の課題に対する答えとして、熟練から若手への技術継承と次世代の職人育成の考え方を紹介。同社の高い技術力を堂々と示している。

・内装施工事例紹介
文化施設やショップなど、4つのシーンに分けて内装の事例と商材を紹介した。テンションファブリックの様々な活用事例をみて、その汎用性の高さを実感することができ、テンションファブリックは多くの可能性を秘めていると感じた。

 

◆1号棟
・レンタル製品、電気照明機器、映像音響機器
1階から3階までを使い、レンタル製品や電気照明、映像音響機材の保管と品質管理を行う。オンラインイベント向けの機材や屋外イベント用のテントやベンチ、和傘や屏風など特殊な備品も含め、1,500種類15万点を所有している。ベイスタジオのショールーム内を活用した、オンライン配信型イベントの実施件数も増加している。


◆2号棟

・木工制作・表具仕上げ部署作業効率を上げるため、区画で設備や資材の整理整頓を徹底し、作業エリアは外の光をより多く取り込む設計で社員が働きやすい環境を整えている。おがくずはエアーで飛ばさずに専用の掃除機で吸い込んで清掃し、工場内の清潔感を保っている。
展示会業界の表具に関連する職人不足の問題は依然として深刻だが、同社では数年前から自社内で表具の専門部署を立ち上げ、人材の育成をスタートした。新入社員やパートタイムのスタッフでも専門的な仕事を効率よく覚えられるよう、作業をすべてマニュアル化しており、工具も最新のものをそろえている。なお、作業のマニュアル化は木工や表具の部署だけではなく、すべての部署・課で行っており、内覧会ではすべてのマニュアルを公開した。

◆3号棟
主にシステムユニット部材を保管している。収納棚は電動で左右に移動するものを導入し、通路を一本にすることで倉庫面積を有効に利用している。物が高く積みあがっているが、フォークリフトには上部が見えるカメラが付いており、安全にピッキング作業ができるように工夫されている。現在、資材の取り間違い防止の新しい対策として、カラーコードとウェアラブルカメラを使ったシステムをパートナー企業・大学と連携し開発を行っている。

3号棟

◆トラックの改良
独自で改良したトラックを展示。展示会やイベントの限られた設営時間の中で施工を終えるため、あらかじめ造作物を完成させてから会場に搬入する形をとっているが、従来は一般的なブースの高さである約2.7mの造作物を運べるトラックがなかった。そこで同社はトラックを改良し、コンテナごと高さを調節できる機構をトラックに搭載した。完成品をそのまま現場まで運送することが可能となり、品質を保ちながら、施工時間の短縮と人手不足問題の解消につながっている。

◆サインセンター
展示ディスプレイ業界としてはNo.1の設備と生産量、管理体制を自負するサインセンターでは充実の生産体制を紹介。大型出力機やカッティングマシン、アクリル加工設備など、サインに関わる設備が揃う。厚みのある素材に直接印刷が可能な最新の機器も導入しており、新たな取組みとして環境配慮・高施工性の紙製素材ボードに印刷して組み立てたインテリアや陳列棚を併せて展示した。

◆ハイブリッドマーケティング紹介ブース
Withコロナ、DX時代に向けたソリューションとして、昭栄美術の技術と、パートナーやクライアントとの価値の融合による本質的価値創造を提案。“Seed Exhibition”と題して、オフラインとオンラインの融合によるハイブリッドマーケティングのプレゼンテーションを実施した。


ベイスタジオは5つの棟で構成されていたが、すべてのエリアにおいて5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が行き届いていた。一般的な工場や倉庫をイメージしていた参加者の多くは、ベイスタジオの規模感ときれいさ、SDGs目標達成に向けた具体的なアクション、品質管理や人材育成を含めた業務マネジメントシステムに驚いている様子であった。コロナ禍にもかかわらず社員は生き生きとしており、新しいチャレンジにも積極的だ。今は業務を見直す良い機会、「ピンチはチャンス!」と捉え前向きに進む雰囲気が伝わってきた内覧会であった。今後の昭栄美術の飛躍に期待したい。